文字サイズ
標準
色の変更

研究開発された技術紹介

  1. トップ
  2. 研究開発技術検索
  3. TiAl合金およびニッケル基超合金を用いた3Dプリンタによる造形法確立と後加工技術の向上

精密加工

TiAl合金およびニッケル基超合金を用いた3Dプリンタによる造形法確立と後加工技術の向上

栃木県

AeroEdge株式会社

2022年1月25日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 TIAL合金を主とする次世代素材を使用した部品(ジェットエンジン部品など)の加工技術向上に関する研究開発
基盤技術分野 精密加工
対象となる産業分野 航空・宇宙、自動車
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高性能化(精度向上)
キーワード Additive Manufacturing (AM)、Electron Beam Melting (EBM)、チタンアルミ合金 (γ-TiAl)、機械加工
事業化状況 実用化間近
事業実施年度 平成30年度~令和2年度

プロジェクトの詳細

事業概要

TiAlは活性であり、るつぼ材と容易に反応し溶湯を汚染するため従来の製造が難しい。また、TiAlは室温で脆く機械加工が難しいため、新技術の開発が求められている。本研究では、新たな加工法としてTiAlを使用した金属積層技術(AM)による製造工程を確立し、加工技術を向上させることを目的とする。TiAlを使用した積層において金属組織の観察、条件の最適化、積層品としての機械特性を同時並行で互いに確認しながら、国内初のAMを活用したTiAlブレードまたは類似するジェットエンジン部品の製品化を目指す。

新技術を活用した製造手法
開発した技術のポイント

・造形パラメータが積層品の組織等に及ぼす影響を解明し、パラメータ最適化のプロセスを確立。
・パラメータを最適化し、潜在的な製品ターゲットであるタービンブレードの積層を実現。
・積層造形後、切削加工による仕上げにてタービンブレードを作製する技術を確立。

具体的な成果

・造形パラメータが積層品の組織等に及ぼす影響を解明し、パラメータ最適化のプロセスを確立。
-パラメータをさまざまな値に変更して積層品を作製し、機械的特性および組織観察することでパラメータが組織に及ぼす影響を解明した。
・パラメータを最適化し、潜在的な製品ターゲットであるタービンブレードの積層を実現。
-タービンブレードの積層においてパラメータの最適化を実施し、内部欠陥の低減と積層時間の大幅な短縮を同時に実現した。
・積層造形後、切削加工による仕上げにてタービンブレードを作製する技術を確立。
-AM積層したタービンブレードの切削性を確認し、従来工法と同等以上であることを確認した。
-AM積層したタービンブレードを切削加工し、作製する技術を確立した。

パラメータ最適化の効果
知財出願や広報活動等の状況

論文
1. 水田 和裕,井上 佳奈,後閑 一洋,筧 幸次,電子ビーム積層造形で作製したTiAl4822 合金の機械的特性へ及ぼすHIP 処理の影響
2. Kazuhiro Mizuta, Yuta Hijikata, Tatsuya Fujii, Kazuhiro Gokan, Koji Kakehi, Characterization of Ti-48Al-2Cr-2Nb built by selective laser melting
3. 後閑一洋,山岸優大,水田和裕,筧幸次,尾ノ井正裕,電子ビーム積層造形で作製したチタンアルミ合金の力学特性における寸法効果

学会発表
1. 日本機械学会2020 年度年次大会 水田 和裕, 筧幸次, 後閑 一洋, 井上 佳奈, 電子ビーム積層造形で作製したチタンアルミ合金の力学特性へ及ぼすHIP処理の影響
2. 日本機械学会2020 年度年次大会 後閑 一洋, 筧 幸次, 水田 和裕, 井上 佳奈, 電子ビーム積層造形で作製したチタンアルミ合金の力学特性へ及ぼす試験片作製法の影響
3. 粉体粉末冶金協会2021年度秋季⼤会 水田 和裕, 土方 優太, 後閑 一洋, 筧 幸次, 選択的レーザー溶融法で作製した TiAl合金の組織と機械的特性

研究開発成果の利用シーン

AM積層したタービンブレードを切削加工により仕上げ、完成させることができるようになった。
完成したタービンブレードにはAM特有の欠陥はなく、ジェットエンジン部品として製品化できると見込んでいる。
また、AM積層の最適化のノウハウを蓄積したことにより、タービンブレードのみならず航空部品・自動車部品をAM試作することができるようになった。
AM積層した製品の加工に関しても知見を深め、仕上げ加工を実施可能となった。実現に向け、さらなる造形時間の短縮や後加工を含めた全てのコスト・品質面の検討を進める。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

主要エンジンメーカーとの会話において、従来に比べ部品点数の大幅削減、サプライチェーンの圧縮、プロジェクト期間の短縮、軽量化、低コスト化といったニーズが多い。こうしたニーズは特に海外エンジンメーカーから積極的に発信されており、大手によるベンチャーの買収を含むAMへの積極投資が続いている。国内エンジンメーカーからはAM開発品の切削仕上げ加工性能を評価したい、など具体的な相談もあり実験は既に開始している。自動車産業ではTiAl部品の試作依頼を受けており、既にAMや仕上加工検討に着手している。

提携可能な製品・サービス内容

設計・製作、加工・組立・処理、製品製造、共同研究・共同開発

製品・サービスのPRポイント

・タービンブレードのみならず、航空部品・自動車部品をはじめとした様々な部品に対して、AM積層の適用が可能となる。
・製品をAM積層するための造形パラメータ最適化が可能となり、製品の品質向上、コスト削減、納期短縮が期待できる。
・AM積層した製品の機械加工も実施可能であり、AM積層から機械加工、仕上げまで一貫した受注が可能である。

今後の実用化・事業化の見通し

航空機エンジンメーカーや自動車関連メーカーへの適用について、市場ニーズは存在する。よって、本事業により、いちはやく技術の妥当性(機械的特性、コスト、サプライチェーンなど)が証明され、さらに顧客サイドで行われる、コンポーネント試験で合格と判断されれば採用の可能性は大いにある。対抗技術としては、さらなる軽量素材の開発、また、設計の抜本的な変更・改善が挙げられるが、それらの開発に要する時間軸を上回るスピードで本事業を通じて開発を完了し、顧客への上記価値の訴求を行うことが不可欠となる。川下企業の技術戦略としてTiAlのような先端素材、AMのような先端技術を採用すること自体に意義を見出すケースもあることから、事業化可能性は大いにある。さらに、日本国内顧客のみならず、興味関心は海外エンジンメーカーも示しており、営業活動および共同技術開発のもと事業化を出口の大前提とした活動としていくことを計画しており、またそれが可能な関係性であると現状分析している。

実用化・事業化にあたっての課題

・AMブレードの強度試験を実施し、設計基準を満たすこと。
・切削仕上げにおいて、取り代と切り込み量を調整し、最適な取り代を検討する。
・AMブレードの製造にあたり、従来の加工とのコスト、リードタイムの比較検討が必要である。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 AeroEdge株式会社
事業管理機関 公益財団法人栃木県産業振興センター 産業振興部ものづくり産業振興グループ
研究等実施機関 東京都公立大学法人東京都立大学 筧 教授
アドバイザー 栃木県技術センター

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 AeroEdge株式会社(法人番号:4060001027529)
事業内容 製造業
社員数 80 名
生産拠点 本社工場(栃木県足利市)
本社所在地 〒329-4213 栃木県足利市寺岡町482-6
ホームページ www.aeroedge.co.jp
連絡先窓口 水田 和裕
メールアドレス kazuhiro.mizuta@aeroedge.co.jp
電話番号 0284-22-3125