研究開発された技術紹介

医薬品・診断薬産業においては、多くの難治性疾患において未だに治療法が存在せず、再生医療など新たな医療の開発が求められている。間葉系幹細胞は、体内に存在する多能性幹細胞であり、再生医療に利用され有効性が確認されている。本研究開発ではオミックス情報を利用して、骨髄間葉系幹細胞の活性化の新規評価系を開発するとともに、新規細胞治療、損傷組織の機能的再生を促進する再生誘導医薬の候補品を開発する。

・次世代シークエンサーを利用した再生誘導医療評価系の構築
-生体内間葉系幹細胞に対し、RNA調製から次世代シークエンサー用のライブラリ作成までの工程を最適化することで、シングルセルレベルの網羅的遺伝子発現解析法を確立した。
-細胞回収デバイス内の集積細胞に向けて、遺伝子発現解析法を最適化した。
-バイオインフォマティクス技術を駆使し、得られた遺伝子発現情報を基に、クラスタリング解析などのデータを可視化指標化することが可能となった。
・新規再生誘導医薬候補品、細胞回収デバイス挿入用物質の選定
-再生誘導医薬候補物質のラボスケールでの製造法を確立した。
-複数の再生誘導医薬候補物質に対して細胞回収デバイス内への生体内間葉系幹細胞集積試験を実施し、生体内において細胞活性物質を同定した。
-細胞回収デバイス内に集積した細胞に対してシングルセルレベルで遺伝子発現解析を行ったところ、これらの細胞集団が骨や軟骨に分化する細胞とは異なる特異な細胞集団であることが判明した。これらの細胞集団は胎生期に存在する多能性細胞の遺伝子発現パターンに類似しているため、細胞治療などへの応用が期待できる。

・次世代シークエンサーを利用した再生誘導医療評価系の構築
-生体内間葉系幹細胞に対し、シングルセルレベルにおいて、網羅的かつ定量的な遺伝子発現解析系を確立した。
・新規再生誘導医薬候補品、細胞回収デバイス挿入用物質の選定
-複数の再生誘導医薬候補物質に対し、細胞回収デバイス内への生体内間葉系幹細胞集積試験を実施し、生体内において細胞活性物質を同定するとともに、集積細胞に対する次世代シークエンサーを利用したシングルセル網羅的遺伝子解析法を確立した。

本事業で得られた成果は、デバイス内に集積した細胞を利用した新規細胞治療や、生体内間葉系幹細胞のシングルセル解析を利用した新規再生誘導医薬の開発などへの利用が期待される。

実用化段階（間葉系幹細胞シングルセルトランスクリプトーム解析について、国内企業からの問い合わせが来るようになった。）

今回開発した生体内間葉系幹細胞のシングルセル網羅的トランスクリプトーム解析法は、再生誘導医薬の新規医薬や細胞治療の開発のための基盤技術となる。また、デバイス内に集積した細胞集団を細胞治療などへ応用することも期待できる。

・医薬品開発に係る専門家や細胞治療に係る専門家と密に情報を交換し、臨床への応用を加速する。
・再生誘導医薬やデバイスに集積した細胞を利用した治療とともに、複数の疾患に対しての治療効果が期待できるため、早急に各疾患領域の専門家との研究・開発の協業を目指す。
・2020年4月に大阪大学内に設置した再生誘導医学協働研究所をプラットフォームとして、大学の部局（医学研究科、歯学研究科、生命機能研究科等）を超えた専門家チームとステムリムとの協働による再生誘導医薬や細胞治療の研究開発を行い、早期の臨床応用を目指す。