情報処理
顕微鏡やWSIを使用して撮影したガラススライド画像をAIが分析、癌細胞の判定にあたり、判定理由を示すことが可能な支援システムを構築
兵庫県
株式会社ブレイン
2023年2月13日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | AIを用いた診断根拠提示型細胞診断高度支援システムの研究開発 |
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基盤技術分野 | 情報処理 |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(精度向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(生産性増加) |
キーワード | 細胞診断、癌、WSI、LBC、画像認識 |
事業化状況 | 実用化間近 |
事業実施年度 | 令和1年度~令和3年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
細胞診は検体を採取するときに患者の負担が少なく、比較的容易に検査ができることから、がんの早期発見のために集団検診に活用され、近年検体数が増加している。細胞診は、スライドの隅々まで目視で行われており、多数の細胞から異常な細胞を見落とすことなく発見するには高い集中力と多くの労力を要する。細胞診業務を改善するために、診断根拠を提示する細胞診断高度支援技術を開発する
開発した技術のポイント
・画像の補正技術として色の基準となるマーカーを定義し、正規化して色の補正を行い複数のLBCメーカーで領域が抽出できるように対応
・WSIの各レイヤーのタイル画像の輝度値の分散を用いたピントの評価手法の確立
・核の所見に対応する特徴量や細胞質の特徴量を画像から数値として取得
・機械学習によるがん・非がんの分類手法の精度向上
・回帰分析を用いた診断根拠となる特徴量の推定手法
・パパニコロウ分類の対応手法
・がん細胞、正常細胞、識別対象外を表示する色を、赤、緑、黄として違いを明示し、特徴グループごとの寄与率の推定値を水平方向にグラフで表示する手法
・学習に必要なデータ量を自動的に決定する手法
・容易なアノテーション手法
・GBDT法を用いた子宮頸がんのベセスダ分類への適用
具体的な成果
・領域抽出精度の向上と特徴量の定義
‐細胞の核の色と背景の色を用いた画像の色補正を開発。
‐輝度値の分散を用いてピントの評価手法を検討、ピントずれ検出を実現。
‐アノテーションデータを用いて細胞、赤血球、白血球の判別を実現。
‐がん細胞の細胞核、細胞質の特徴量を評価し、判定精度を向上。
・診断根拠を提示する診断手法の開発
‐GBDT法により決定木分析の特長である「使用された特徴量の寄与率」を用いて診断根拠を示す手法の研究を実施。
‐感度98%、特異度98%を達成。
・病理医による確認・訂正手法、循環型学習フローの構築
‐病理医による容易な確認・訂正のユーザインターフェイスを開発。
‐核領域と細胞質の輪郭を明確に描画するアノテーション支援機能を開発。
知財出願や広報活動等の状況
特許出願:特願2020-52424(診断支援方法及びそのシステム)
オンラインセミナー発表:兵庫県立大学 知の交流シンポジウム2020連携セミナー (2020年10月8日)
オンライン発表:第19回日本デジタルパソロジー・AI研究会総会(2021年8月20日~22日)
・メディア掲載
2021年3月18日:The New Yorker(The Pastry A.I. That Learned to Fight Cancer)パンのAIが癌に挑戦
2021年4月10日:神戸新聞社 医療福祉に画像認識技術
2021年12月14日:NexTalk 「人間が AIを助ける!逆転の発想から生まれたパンの画像識別レジ」(癌診断にも応用)
2022年12月12日:CNN(Market Place Asia)「This AI was built to tell pastries apart. Now it's helping fight cancer」
研究開発成果の利用シーン
病理診断の根拠を可視的に提供することで、病理専門医の不足を補い臨床検査技師の負担を軽減し、見逃しを防ぐ効果にも結びつく。本報告書でいう「膀胱がんAIスキャン細胞画像診断」は、その一例であり、今後子宮頸がん等の分野に発展できるものである。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
細胞診断支援システムの上市に向けて、令和6年度に第二種製造販売業許可を取得し、令和7年度の細胞診断支援システムとしての管理医療機器(クラス2)の承認を目指す。また同年に上市を行い、令和8年度の保険収載を目指す。
提携可能な製品・サービス内容
試験・分析・評価、共同研究・共同開発
製品・サービスのPRポイント
本研究により泌尿器細胞診において複数のLBCメーカーの検体を対象とした診断根拠を提示する診断支援システムを構築した。さらにWSIにおけるタイル画像のピントずれの検出が可能となり、泌尿器細胞診のパパニコロウ分類における診断を高速に行うことが可能となった。また、泌尿器細胞診の診断手法の子宮頸部細胞診の診断手法に対する応用の可能性が示唆された。
今後の実用化・事業化の見通し
今後は引き続きWSIの収集、アノテーション情報の収集及び学習を行い、システムが出力した診断結果の根拠と病理医や細胞検査士の診断根拠との一致率の検証を行う。また、早期にサンプル出荷を行い現場での検証を行い、その検証結果をフィードバックすることで診断精度の向上を図る。
実用化・事業化にあたっての課題
事業化については、健康保険制度や医療のDX化の進捗とのマッチングを考慮しなければならないと考える。
今後は泌尿器だけでなく他の臓器(肺、体腔液、口腔領域)の細胞診への展開を検討する。また最終的には、X線やCT、MRIなどの医用画像を用いた診断と病理診断を合わせた総合診断支援システムの開発を行うことを目標とする。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社ブレイン |
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事業管理機関 | 株式会社ブレイン |
研究等実施機関 | 兵庫県公立大学法人兵庫県立大学 姫路工学キャンパス 大学院工学研究科 森本研究室 |
アドバイザー | 公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター 臨床病理研究部 部長 土橋 康成 株式会社 MEDICAL GALLERY ブレイン アンリミテッド アソシエイト 川上 淳 株式会社協同病理 株式会社兵庫県臨床検査研究所 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社ブレイン(法人番号:6140001075856) |
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事業内容 | ソフトウエア業 |
社員数 | 31 名 |
本社所在地 | 〒677-0033 兵庫県西脇市鹿野町1352 |
ホームページ | http://www.bb-brain.co.jp |
連絡先窓口 | 株式会社ブレイン 事業推進部 部長 多鹿一良 |
メールアドレス | info@bb-brain.co.jp |
電話番号 | 0795-23-5510 |
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