表面処理
局部腐食に対応し、応力腐食割れを防止するステンレス鋼の不動態皮膜改質
広島県
株式会社ケミカル山本
2020年4月21日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 電解式不動態皮膜改質技術によるステンレス鋼の耐塩素孔食・対応力腐食割れ性の飛躍的向上技術 |
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基盤技術分野 | 表面処理 |
対象となる産業分野 | 環境・エネルギー、産業機械、食品、建築物・構造物、化学品製造 |
産業分野でのニーズ対応 | 高性能化(耐久性向上)、高性能化(信頼性・安全性向上) |
キーワード | ステンレス、電解処理、不動態皮膜改質、応力腐食割れ防止、耐候性向上 |
事業化状況 | 事業化に成功し継続的な取引が続いている |
事業実施年度 | 平成26年度~平成27年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
ステンレス鋼の表面には、酸化クロムを主体とした不動態皮膜が形成され、高耐食性に寄与している。しかし、孔食や応力腐食割れなどの局部腐食には効果が弱い。本研究開発では、ステンレス鋼の不動態化処理の際に、ある種の添加元素があると、孔食や応力腐食割れが飛躍的に抑制されることに着目、これを技術として確立させるとともに、事業化し、材料品質の安定性・安全性向上、長寿命化に応えるとともに、国の成長戦略にも資する
開発した技術のポイント
(新技術)
電解処理によるステンレス鋼の不動態皮膜改質技術を開発する
(新技術の特徴)
従来の酸化物系不動態皮膜にフッ素やホウ素を複合させることで、耐食性が飛躍的に向上し、孔食や応力腐食割れが防止され、長寿命化を図ることができる
具体的な成果
・電解処理でSUS3042B材の孔食電位を283mvから362mvへ約28%も向上させ、応力腐食割れが発生するまでの時間もSUS3042B材(母材)におい て、28時間から170時間へ約6倍まで延ばし(図1)、ほぼ目標を達成した。耐応力腐食割れ性能及び耐候性能でSUS316を上回ることが出来た
・フッ素とホウ素を配合した新電解液は2016年に商品化完了(商品名:ピカ素#SUS S・C・C )
・孔食電位の測定、電子顕微鏡観察及び状態分析結果等から、耐腐食性評価試験結果と整合のとれるメカニズムを導出出来た
・不動態皮膜中のF、Bの分布、結合状態が解明できた。更にFの存在で、酸化クロムが不動態皮膜内で濃化していることも判明(図2)
・電解処理条件の電源器別最適化を完了した
・不動態化度簡易判別装置は2016年に商品化完了(図3)(商品名:NEWステンチェッカー プロ)
知財出願や広報活動等の状況
・日刊工業新聞 2017.6.1 「電解式不動態皮膜改質技術」-産学官の連携で実用化を達成ー
・国立研究開発法人 産業技術総合研究所 「産総研の中小企業・中堅企業への技術支援成果事例集(第3集)」 2018.3
・日本金属学会会報「まてりあ」第58巻第1号(2019.1)「フッ素添加中性塩水溶液を用いたステンレス鋼の電解式表面改質法
株式会社ケミカル山本 山本 正登、同 中井 誠、広島工業大学 王 栄光、同 土取 功、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 佐藤 直子 (本技術は、2018年度「まてりあ」に掲載された新技術・新製品の中から「新技術開発賞」に選ばれ、2019年9月の秋季講演大会にて表彰された)
・国土交通省 「新技術情報提供システム(NETIS)」への登録完了
新技術名称:ステンレスの電解研磨工法(副題:電解研磨法を使用したステンレスの溶接焼け取り及び不動態化同時処理工法)
登録番号:CG-190004-A
研究開発成果の利用シーン
・ステンレス製品の製造現場において
ー電解処理技術を溶接焼け取りに使用頂くことで、溶接部周辺の仕上がりと耐食性が向上した高品質仕上げを提供できる
ー電解処理技術をステンレス鋼表面の不動態皮膜の改質に使用頂くことで、ワンランク上の素材並みの耐食性を付与できるので、コストダウンに寄与
・ステンレス製品を使用されている現場において
ー電解処理技術を錆などの腐食発生時や定期検査時に使用頂くことで、”錆を取って錆にくくする” など、設備の延命化によるメンテナンスコスト低減に貢献
・ステンレス鋼の製造ラインにおいて
ー電解処理技術をラインの最終段に採用することで、例えばSUS304の合金組成でありながらSUS316並みの耐食性を持つステンレス鋼の製造が可能に!
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
・2018年度の売り上げ
ー電解液 “ピカ素SUS S・C・C” は、年間約600万円の売上
ー上記電解液を使用した受託工事は、年間約100万円の売上
-不動態化度簡易判別器 ”NEWステンチェッカー プロ” は、年間15台、約300万円の売上
提携可能な製品・サービス内容
加工・組立・処理、製品製造、技術ライセンス
製品・サービスのPRポイント
不動態皮膜の改質効果で耐孔食、耐応力腐食割れ、および耐候性が飛躍的に向上し、ステンレス製品の品質安定性・安全性向上、長寿命化
今後の実用化・事業化の見通し
・ステンレス溶接関連業界(既存ルート)への販売:(1)「ステンレス溶接焼け取り及び不動態皮膜改質用電源器・電解液」(2)ステンレス鋼表面の不動態皮膜の 改質技術(表面改質技術)は実用化済みで、順調に販売量を伸ばしている
・メンテナンス事業:プラントや機器類の維持・更新案件で、電解式不動態皮膜改質処理が普及しつつあり、受託案件も増加している
・ライセンス供与:ステンレス鋼メーカーへの特許ライセンス供与は、メーカー側からのコンタクト、問い合わせが無く、見通しが立っていない
実用化・事業化にあたっての課題
・合金成分を変えずに不動態皮膜のみを改質して、1ランク上の耐食性を持つステンレスを製造する方法は、差別化技術にならないか、業界の評価を頂きたい
事業化に向けた提携や連携の希望
・ステンレス鋼を製造されている企業とのライセンス供与を前提としたプロセス研究(ベンチスケールテスト、パイロットプラントテスト)を製鉄プラントメーカーにも 参画頂き、国の助成を受けて実施したい。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社ケミカル山本 本社・代表取締役社長 |
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事業管理機関 | 公益財団法人ひろしま産業振興機構 |
研究等実施機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 先進製造プロセス研究部門難加工材成形研究グループ 松崎 邦男、佐藤 直子 学校法人鶴学園広島工業大学 工学部機械システム工学科 教授 土取 功、准教授 王 栄光 |
アドバイザー | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 鈴木 孝和(現在は退職) 三菱重工業株式会社 村上 盛紀(現在は退職) 鹿島石油株式会社 大山 正広(現在はJXTGエネルギー株式会社) 有限会社MCK 川端 武夫 ヤスダファインテ株式会社 高梨 昭男 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社ケミカル山本(法人番号:2400ー01ー003148) |
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事業内容 | ステンレスの溶接焼け取り、さび・汚れ取り、表面改質用電解処理器材並びにさび、汚れ取り洗浄剤の製造、販売 |
社員数 | 59 名 |
生産拠点 | 宮内工場(広島県廿日市市宮内工業団地) |
本社所在地 | 〒731-5121 広島県広島市佐伯区五日市町美鈴園17-5 |
ホームページ | http://www.chemical-y.co.jp |
連絡先窓口 | 企画室 常吉紀久士 |
メールアドレス | tsuneyoshi@chemical-y.co.jp |
電話番号 | 0829-30-0820 |
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