研究開発された技術紹介

情報家電分野や太陽電池分野の基盤を担う中小製造業の基盤技術の高度化を目的として、薄型ディスプレイ用途に応用可能な薄膜白色光源用の高分子電界発光素子に使用される耐久性に優れた青色発光材料や、次世代太陽電池として期待されている色素増感太陽電池の紫外光領域の光を高効率に可視光に変換できる耐久性に優れた波長変換材料を、本研究では紫外線吸収剤の機能を有し、高耐久性のある蛍光色素骨格を用いて開発を行う

従来から紫外線吸収剤としてさまざまな分野で使用されているベンゾトリアゾール誘導体を改良し、高発光効率かつ高耐久性の色素増感太陽電池用波長変換材料を開発する
(新技術)
・紫外光を可視光に変換できる波長変換機能を既存の系に付与することで、紫外光を活用する
・波長変換材料の構造に、溶解性を向上させる置換基を導入し、溶解性を向上させた
・波長変換材料の単量体を光重合することで、簡便にフィルムを作製した
(新技術の特徴)
・より多くの光を太陽電池に取り入れることができ、光電変換効率が向上
・紫外光を太陽電池に取り入れないため、材料の紫外光による劣化がない

・ベンゾトリアゾール誘導体を基本構造とした波長変換材料の開発
・高光電変換効率かつ高耐久性である色素増感太陽電池の開発
・紫外光で劣化しない波長変換フィルムを作製し、波長変換効率は最大で68%を達成した
・波長変換フィルムを用いることで、色素増感太陽電池の光電変換効率が向上することを確認した

開発した青色発光材料により、色素増感太陽電池をはじめとした太陽電池の高効率化および耐久性の向上を図ることができる。

・研究開発の目標は概ね達成した
・実用化に向けて、ベンゾトリアゾール誘導体のさらなる発光効率及び耐久性の向上、フィルム作製条件の最適化、色素増感太陽電池への取り付け条件の最適化等の課題を克服する必要がある
・派生技術として、本研究で開発した青色発光材料を用いた農業用波長変換フィルムの事業化を進めている

・色素増感太陽電池の性能向上に貢献
-ベンゾトリアゾール誘導体を基本構造とした高発光効率かつ高耐久性である波長変換材料を、色素増感太陽電池に用いることで、色素増感太陽電池の光電変換効率及び耐久性の向上が可能となる
・ニーズに対応した製品の設計が可能
-開発中の波長変換材料は、使用される色素増感太陽電池に合わせて、吸収波長域及び発光波長域の調整ができる
-また、低分子体、高分子体、単量体の波長変換材料が提供可能であり、波長変換フィルムとしての提供も可能であることから、さまざまなタイプのフィルム作製が実現する
・安定した製品の供給が可能
-シプロ化成株式会社及び新中村化学工業株式会社は、長年紫外線吸収剤であるベンゾトリアゾール誘導体及びそのポリマーを製造しており、ベンゾトリアゾール誘導体の製造ノウハウを保有していることから、安定した製品の供給が可能である

・補完研究を通じて波長変換材料の発光効率及び耐久性のさらなる向上を検討し、色素増感太陽電池やフィルムを製造している各社に紹介・提供する
・今後、少量生産規模を決定して、波長変換材料を用いた高光電変換効率かつ高耐久性の色素増感太陽電池の実用化を目指す