複合・新機能材料
新規発光材料と塗布プロセスの開発により白色光源の生産コストを削減
京都府
山田化学工業株式会社
2020年3月23日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 薄膜白色光源用電界発光型インクの開発 |
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基盤技術分野 | 複合・新機能材料 |
対象となる産業分野 | スマート家電、エレクトロニクス、光学機器 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、低コスト化 |
キーワード | 発光材料、溶解性、量子収率、インク、OLED |
事業化状況 | 研究中止または停滞中 |
事業実施年度 | 平成21年度~平成23年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
情報家電分野の基盤技術の高度化を目的として、冷陰極蛍光ランプに代わる薄膜発光素子が求められている。薄膜発光素子は面発光の特徴を活用した表示・照明応用が可能であり、有機電界発光(EL)型薄膜白色光源のコスト削減を達成するために発光効率かつ選択的発光性に優れた機能性色素を迅速に開発し、これら機能性色素からなるシンプルな膜構成で大面積塗布を可能にする環境低負荷型の白色光源用インクを調製する
開発した技術のポイント
薄膜白色光源用蛍光・りん光材料分散高分子電界発光型インクとデバイス作製技術の開発
・染料系蛍光材料→毛細管塗布サイズ、発光輝度15,000cd/m2、平均演色性評価数90、等
・有機金属錯体系りん光材料→発光輝度15,000cd/m2、電流効率10cd/A、等
・高分子半導体材料→バンドギャップ3.0eV以上、均質な薄膜形成(膜厚100nm以下)
・塗布膜厚均一化技術→170mm角の基板上に膜厚100nm以下の発光層を均質に形成
(新技術)
<メリット>
・同時に多数の合成が可能
・合成プロセスの大部分が自動化
・迅速な評価が可能
・大面積に対応した塗布が容易など
具体的な成果
・染料系蛍光材料の開発で成果
-ケトン系溶媒をインク溶媒とした結果、溶媒への溶解度は実用可能レベルに達し、高分子薄膜中での発光量子収率も70%を超えるものを数多く開発
-平均演色性評価数は目標値90以上を達成し、発光輝度では目標値15,000cd/m2超の素子を得ることに成功
・有機金属錯体系りん光材料の開発で成果
-PLEDのホスト高分子として用いるPVczが可溶な溶媒系として、ケトン系インク溶剤を開発
-ケトン系インク溶剤を用いて、青色りん光材料と赤色りん光材料を発光材料とする二色発光型白色PLED用電界発光型インクの調製に成功
・白色有機EL用高分子半導体材料の作製が進展
-PVczより性能面で優れた高分子半導体の開発を目的に、ビナフタレンビスカルバゾール(BNpcz)を付与した新規高分子半導体を開発
-開発した高分子半導体の基礎物性を評価したところ、いずれの高分子半導体もpVczに近いHOMO・LUMO値と三重項準位を有することを確認
・薄膜白色光源用電界発光型インクの物性値の最適化と塗布膜厚均一化技術の開発で成果
-有機層の大面積塗布が可能な毛細管塗布方式による塗布を開発し、170mm角基板上に膜厚100nmでσ5%以下の均一で均質な薄膜発光層を形成することに成功
-170mm角基板で均一な発光を得るには補助電極の使用が有効であることを確認の上、全面発光させることに成功
知財出願や広報活動等の状況
出展:国際二次電池展(H24.2)
研究開発成果の利用シーン
本事業で開発した発光材料は高い量子収率を有しており、また高い溶解性を有していいることから、コーティング液やインクなどで使用される溶媒への適用が可能である。今日の流れから環境に負荷のかからない材料を使用することは企業としても取り組まなければならない課題であり、溶解性を付与したことでこの課題を解決できる。また、塗布できることで大掛かりな装置を必要とせず、コスト削減にも寄与できる。コーティング方式を最適化することにより、大面積への塗布が可能となる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
・実用化に時間がかかる(補完研究中)
・サンプルあり(キャピラリー塗布装置単品としては、試作テストと装置販売が可能な状況。本事業で開発した発光材料の提供が可能)
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、素材・部品製造、製品製造
製品・サービスのPRポイント
・歩留まり向上→従来の湿式塗布方法式として多用されていたスピンコート法に比べ、キャピラリー塗布方式では高価な塗布液の有効使用効率が5~7倍に向上
・大型化→開発した電界発光型インクをキャピラリー塗布プロセスにより大型基板(170mm角)に40nm~100nmの任意の厚さにσ5%以下の精度で塗布した有機EL素子を作製することが可能に
・環境負荷軽減→環境負荷の低いケトン系溶媒に対しても高い溶解度を有する開発品は、従来開発品と比較し高い溶解性を有する
今後の実用化・事業化の見通し
発光材料・装置・プロセスをセットで拡販することを具体化していく
・発光輝度向上、発光斑低減に影響を及ぼす塗工プロセスの見直しと各プロセスの最適条件を見出すための補完研究を継続実施中。材料については川下企業へサンプルを提供し、性能評価及び最適化をしてもらっている。新規川下企業の探索活動を実施中
・試作デバイスの性能評価・分析、プロセスの最適化に関する補完研究を今後も継続。材料については川下企業への販売活動に使用するサンプルの作成と評価を進める
・キャピラリー塗布装置単品としては、国内外のユーザーより引合いがあり販売実績も計上している。今後、材料面と塗工プロセスが実用化レベルになれば発光材料と装置とプロセスをセットで拡販することを具体化していく予定。材料については用途を広げ、事業化可能な川下企業の探索に注力
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 山田化学工業株式会社 |
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事業管理機関 | 公立大学法人大阪(大阪府立大学) |
研究等実施機関 | 株式会社ヒラノテクシード 公立大学法人大阪(大阪府立大学) 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 山田化学工業株式会社(法人番号:9130001011925) |
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事業内容 | 染料、機能性色素、有機中間体、機能性樹脂中間体、受託製造など |
社員数 | 98 名 |
本社所在地 | 〒601-8105 京都府京都市南区上鳥羽上調子町1-1 |
ホームページ | http://www.ymdchem.co.jp |
連絡先窓口 | 開発部開発課グループリーダー 長谷知行 |
メールアドレス | hasetomo@ymdchem.co.jp |
電話番号 | 075-691-4111 |
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