サービス
たった一杯の水から生物多様性DX
福井県
株式会社フィッシュパス
2026年2月4日更新
プロジェクトの基本情報
| プロジェクト名 | 水産業の振興と生態系保全を目的とした、環境DNA調査の社会実装を実現するプラットフォームの開発 |
|---|---|
| 基盤技術分野 | サービス |
| 対象となる産業分野 | 環境・エネルギー、情報通信 |
| 産業分野でのニーズ対応 | 高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、高効率化(人件費削減)、環境配慮 |
| キーワード | 環境DNA、ネイチャーポジティブ、生物多様性、TNFD |
| 事業化状況 | 実用化に成功し事業化間近 |
| 事業実施年度 | 令和5年度~令和6年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
水産業の振興と生態系保全を目的として、環境DNA調査の社会実装を実現するプラットフォームの開発を目指した。主要な研究テーマは3つに分けられ、第1テーマでは環境DNAサービス依頼から分析データ提示までを管理するプロセス管理システムの開発、第2テーマではユーザーに分かりやすい分析データを提示するアプリケーションの開発、第3テーマでは環境DNA採取時の汚染防止する採水キットの開発を行った。研究は株式会社フィッシュパス、龍谷大学などの複数機関が連携して実施した。
開発した技術のポイント
・環境DNA調査プロセスを一元管理するシステム
-契約締結後にシステム上で採水計画を立て、採水後はデータを一元管理できる仕組みを整備
-シーケンシング後の解析機能を強化し、より正確な種同定を実現
・分析オペレーション自動化システム
-分析装置と連動した分析時の計算等の自動化を実施
-分析結果を自動でアップロードし、ワークフローと分析設備が連動するシステムを構築
・直感的操作性を実現するアプリケーション
-検出の有無を地図上で表現する方式を導入
-調査結果の可視化手法を複数の選択肢から選べる設計を採用
・改良された採水キット
-採水パックに1,000mLの目安線設置やキャップ緩み防止目印の追加など複数の改良を実施
具体的な成果
・プロセス管理システム: 調査依頼から結果提示までのリードタイムを平均28日、最短8日に短縮し、目標の2か月から1か月への短縮を達成
・分析効率化システム: 処理数を80〜100サンプル/月から126サンプル/月に向上し、目標の120サンプル/月を達成
・ユーザー向けアプリ: 満足度4.0点(5段階評価)、NPS評価9-10が88%を達成し、それぞれ目標の3.8点以上、80%以上を上回った
・採水キット: コンタミネーション率を改良前の2.4%から0.9%まで低下させ、目標の1.0%以下を達成
・市場調査: 説明訪問数139件を実施し、目標の40件を大幅に超過達成
知財出願や広報活動等の状況
株式会社フィッシュパスと龍谷大学の共同出願として、「プログラム及び情報処理装置」について早期出願制度を活用して特許出願を行った。早期審査の過程で拒絶理由通知を受けたが、意見書と手続補正書を提出した結果、特許として登録された。これにより、環境DNA調査システムに関する知的財産権の確立を実現した。
特願2024-039572, 特許 第7679017号,システム及び情報処理装置,株式会社フィッシュパス,龍谷大学 Apr. 2025.
広報活動については、全国の漁協や環境アセスメント企業を対象とした説明訪問を139件実施し、技術の認知度向上と市場適用性の評価を行った。また、仁淀川漁協において環境DNA調査の報告会を実施し、龍谷大学と協力して調査結果を共有した。
研究開発成果の利用シーン
・水産業における資源管理: 漁協での魚類相の把握やアユの孵化仔魚の生活史把握、外来種モニタリング
・生物多様性保全事業: 行政機関や民間企業が実施する生態系調査での活用
・環境アセスメント業務: 環境調査企業による生物調査の効率化と精度向上
・河川管理: モクズガニ・オオサンショウウオの分布調査や産卵環境改善のための基礎データ収集
・研究機関での活用: 大学等の研究機関における生態系研究や環境変動の長期モニタリング
・定量PCRやメタバーコーディング技術と組み合わせた高精度な生物相調査
誰もが安価かつ動作に調査に参画でき、分析結果の共有も可能なスマート環境DNA調査システムとして幅広い利用が期待される。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
当初は水産業を主要ターゲットとして市場展開を進めていたが、事業の進行に伴い、環境DNA技術が生物多様性保全やESG・ネイチャーポジティブに関連する評価指標として活用可能であることが明確になり、行政・企業領域への応用が急速に広がっている。特に、「環境DNAを用いた生物多様性の数値化」を求める企業が増加し、これが市場戦略の見直しや事業化の加速に寄与している。
実績としては、水産分野において3漁協から継続的な調査依頼を受け、行政では2団体、企業では2社から導入・試験利用の引き合いを得て契約・調査を実施した。また、テレマーケティングによる年間2,400件の新規アプローチ体制を整備し、展示会・マッチングイベントを通じた販路開拓も進展している。令和7年度11月末時点で累計1,414件のサンプル処理実績を達成しており、月間126サンプルの処理能力を安定して運用できる体制が整った。
これらの成果により、水産業を中心とする既存市場にとどまらず、行政・企業・金融機関による生物多様性評価や環境政策立案に向けた新たな需要が顕在化しており、事業化に向けた具体的な取引・引き合いが着実に増加している。
提携可能な製品・サービス内容
試験・分析・評価
製品・サービスのPRポイント
本事業により、環境DNA分析に必要な一連の工程を統合した「スマート環境DNA調査システム」を開発し、誰もが安価かつ高精度に生態調査へ参画できるプラットフォームを実現した。従来は調査依頼から結果提供まで約2か月を要していたが、システム化と分析プロセス最適化によりリードタイムを最短8日まで大幅に短縮し、業務効率化と意思決定の迅速化に貢献する。
新開発の採水キットはコンタミネーション率0.9%という極めて低い汚染率を達成し、誰が採水しても高い再現性でデータを取得できる点が強みである。さらに、地図上での存在有無表示や複数の可視化手法を用いた結果提示により、専門知識のないユーザーでも直感的に調査成果を理解できる。
また、契約・採水計画・分析・データ提供までを一元管理するシステムを構築し、月間126サンプルの処理能力を確保することで、従来の80〜100サンプル規模を大きく上回る運用を可能とした。ユーザー評価では満足度4.0点、NPS88%と高い評価を得ており、行政・企業・漁協など川下産業全体に対して、生態調査の標準化と生物多様性データ活用の新しい価値を提供できるサービスとして成長を見込んでいる。
今後の実用化・事業化の見通し
福井大学との共同開発により、無線通信技術を活用したリモートセンシングと環境DNA分析データの相関解析を進めており、河川環境の基盤情報取得と生態系モニタリングを一体化した高度化モデルの実用化検証を行っている。今後は、本研究で得られる知見をもとに、河川整備・漁場管理への導入プロセスを整備し、行政・漁協への実装モデル確立を目指す。
また海外展開として、東南アジア(タイ・ベトナム)における環境DNA分析の市場調査と関係機関との協議を実施し、現地での実証ニーズが確認できた。次年度以降は、現地大学・研究機関との共同研究体制を構築し、魚類調査に加えて微生物・耐性遺伝子等のモニタリングを組み合わせた総合的な環境評価サービスの事業化を進める。
販路拡大については、テレマーケティングによる年間2,400件の新規アプローチを継続しつつ、展示会・マッチングイベント等を通じて行政・企業への認知度向上を図る。研究成果を基盤とした「生物多様性の見える化SaaS」開発も並行して推進し、国内外での事業化を段階的に展開する計画である。
実用化・事業化にあたっての課題
・大量サンプル処理と分析に向けたコスト削減と品質安定性の確保
・ターゲットユーザーへの実用化試験のさらなる実施とデータ収集
・法規制対応(ABS法等)および業界標準との整合性の確認
・ターゲットへの販売・採水キットとサンプル輸送と受入体制の確立
・パートナー企業との連携強化による早期市場投入の実現
・SDGsやESG投資に取り組む業界の大手企業との協業や共同研究の枠組み構築
・量産化に向けた検討: コスト面の課題や大量生産時の品質維持
・試薬の取り扱いや梱包方法のさらなる改善によるより実用性の高いキット開発
これらの課題を克服し、環境DNA調査の社会実装を推進するための研究開発継続が必要である。
事業化に向けた提携や連携の希望
当社では、環境DNA技術を活用した魚類・水生生物の生態把握に加え、河川水中の菌・細菌・耐性遺伝子の検出技術を組み合わせた事業展開を計画しています。特に、東南アジア地域における環境DNA調査の実証を視野に入れており、現地大学・国内大学・研究機関との共同研究によるデータ取得や手法の標準化を進めたいと考えています。
また、海外展開に向けた協力企業、研究パートナー、行政機関のネットワーク形成を希望しており、実証研究を実施するための補助金、国際共同研究枠、研究資金等の情報提供も求めています。さらに、水生生物調査と微生物・耐性遺伝子検出を一体化した新しい環境評価モデルの開発に向け、医療・環境・下水分野の研究機関との補完研究も検討しています。これらを通じ、国内外での事業化・社会実装を加速させるための連携機会を広く模索しております。
プロジェクトの実施体制
| 主たる研究等実施機関 | 株式会社フィッシュパス |
|---|---|
| 事業管理機関 | 公益財団法人ふくい産業支援センター |
| 研究等実施機関 | 株式会社フィッシュパス 学校法人龍谷大学 |
| アドバイザー | 福井県立大学 大沼漁業組合 役内・雄物川漁業協同組合 日野川漁業協同組合 仁淀川漁業協同組合 日田漁業協同組合 庄川沿岸漁業協同組合連合会 株式会社北陸電力 株式会社キミコン 福井銀行 |
参考情報
- FISHPASS環境DNAラボ
- https://fishpass-edna.jp/
主たる研究等実施機関 企業情報
| 企業名 | 株式会社フィッシュパス(法人番号:3210001016517) |
|---|---|
| 事業内容 | オンライン遊漁券アプリ開発と環境DNAを使った生物多様性DXの企画運営 |
| 社員数 | 17 名 |
| 生産拠点 | 環境DNA分析センター(福井県立大学内バイオインキュベーションセンター) |
| 本社所在地 | 〒910-0347 福井県坂井市丸岡町熊堂3-7-1-16 福井県産業情報センター6F |
| ホームページ | https://fishpass.jp/ |
| 連絡先窓口 | 株式会社フィッシュパス 社長室室長 中谷優基 |
| メールアドレス | yuki_nakatani@fishpass.co.jp |
| 電話番号 | 0776-67-7335 |
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