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複合・新機能材料

ゼロエミッションを可能にする高品質銀めっき導電糸の開発

石川県

浅野繊維工業株式会社

2025年1月27日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 デジタル制御撚糸加工技術とエレクトロスプレーメッキ加工技術による導電糸特性の高度化に関する研究開発
基盤技術分野 複合・新機能材料
対象となる産業分野 医療・健康・介護、航空・宇宙、自動車、ロボット、産業機械、情報通信、工作機械、エレクトロニクス
産業分野でのニーズ対応 高性能化(小型化・軽量化)、環境配慮
キーワード 導電性繊維,軽量化,高屈曲性,脱メタル,低環境負荷
事業化状況 研究実施中
事業実施年度 令和3年度~令和5年度

プロジェクトの詳細

事業概要

 本研究は、次の2点を目指した研究開発を実施した。
・エレクトロスプレー法によりめっき薬剤をナイロン糸に塗布することにより、めっき廃液を発生させずにめっき膜厚を均一に加工する低環境負荷量産加工技術を開発する。
・めっき膜厚を均一化した銀めっきナイロン糸を使用し、テンションをデジタル制御する撚糸加工技術を開発し、世界最高品質の導電糸撚糸加工技術を確立する。

 研究開発により、上記研究目標を達成する試験結果が得られ、今後の事業化促進のため、研究開発を継続している。
・ループ状の糸道にエレクトロスプレーノズルを配置し、めっき加工用薬剤を糸に塗布することにより、電気抵抗値 0.5Ω/cmの世界最高の導電性を示す銀めっきナイロン糸を加工速度 5m/分、めっき廃液フリーで連続加工する技術を開発した。
・エレクトロスプレー法で加工した銀めっきナイロン糸を使用し、テンションをデジタル制御する技術を適用したカバーリング加工によって、高伸縮性導電糸の試作に成功。

エレクトロスプレーによる薬剤塗布の様子
開発した技術のポイント

 産業技術総合研究所と浅野繊維工業株式会社らが開発したエレクトロスプレーめっき加工法を基盤技術とした銀めっきナイロン糸の製造加工事業を浅野繊維工業株式会社において実現するため、次の4点に関する研究開発を行った。
・エレクトロスプレーめっき加工高速化技術開発
・銀めっきナイロン糸の量産化実証試験
・高伸縮性導電糸加工による用途開拓
・ナイロン糸以外の素材へのめっき加工

導電糸の巻取りの様子
具体的な成果

・エレクトロスプレーめっき加工高速化技術開発
 5m/分の加工速度で、0.5Ω/cm以下の電気抵抗値を示す銀めっきナイロン糸を4時間連続で加工することに成功した。
・銀めっきナイロン糸の量産化実証試験
 複数本ノズルのユニット化やループ状糸道準備装置、そして洗浄水循環システムの装置開発を行い、浅野繊維工業株式会社で銀めっきナイロン糸の量産化実証試験を実施した。そして、産総研と同等のめっき加工が可能なことを確認した。しかしながら、長時間連続運転時の品質安定性には課題が残った。
・高伸縮性導電糸加工による用途開拓
 銀めっきナイロン糸をカバーリング加工によって伸縮性を付与した高伸縮性導電糸に加工し、ニット加工に使用して伸縮性ニット生地を試作した。これら試作品は柔軟性の高い導電糸を用いることで可能となったものであり、圧倒的な競争力が期待できる。
・ナイロン糸以外の素材へのめっき加工
 ナイロン糸以外の素材へのめっき加工技術開発を進め、ポリエステル糸について、ナイロン糸と同等のめっき加工を可能にした。

試作したナイロンおよびポリエステル導電糸
知財出願や広報活動等の状況

知財①「無電解メッキ繊維材料、無電解メッキ繊維材料の製造方法および製造システム」(出願番号2024-004594)
広報活動①「フェムトリアクターによる化学反応制御技術(ナノ粒子合成、高分子合成、めっき加工への応用)」(化学工業、8月号)
広報活動②「エレクトロスプレーめっき法で加工した導電性繊維」(第36回スマートテキスタイル研究会、2024/5/17)
広報活動③「エレクトロスプレー法によるナイロン糸への銀めっき加工および耐久性評価」(2024年繊維学会年次大会、2024/6/14)
広報活動④「環境に配慮した導電糸開発への取組み」(令和6年度イノベーション促進セミナー、2024/7/25)
広報活動⑤「エレクトロスプレーめっき加工技術」(TCI-VENTURE AWARD 2024 ファイナル シーズ部門、2024/12/5)

研究開発成果の利用シーン

 銀メッキナイロン糸の導電性は世界最高レベルにあり、これを合撚・カバーリング加工した高伸縮導電糸はウェアラブル、産業用途分野で圧倒的な競争力を有している。ニット加工が可能なことから、繊維加工法との組み合わせによる製品開発も大いに期待できる。これらのサンプル提供と展示会出展を進め、用途・販路開拓を一層加速する計画である。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

 事業終了後の2024年度からサンプルの出荷・評価、追加研究を実施し、2025年度から製品の生産、販売を予定している。売上高の見込みは、2024年度120万円、2025年度600万円、2026年度1,800万円、2027年度3,000万円、2028年度9,600万円を予定している。また、12万円/kgの売価を想定し、半年に1か月の保守期間を設け、1生産ラインあたり月産10kg、年間100kgを生産する計画である。生産規模の拡大に合わせて人材、設備の補強を計画的に進める。
 エレクトロスプレーメッキ加工装置の事業計画については、2024年度からサンプルの出荷・評価、追加研究、設備投資を実施し、2028年度から製品の生産、販売を予定している。売上高の見込みは、2028年度1億円、販売数量5台を予定している。2,000万円/台の売価を想定し、2028年度からライセンス生産を計画している。

提携可能な製品・サービス内容

素材・部品製造、共同研究・共同開発、技術ライセンス、技術コンサルティング

製品・サービスのPRポイント

 エレクトロスプレーめっき法は必要最小限の試薬をスプレーし、しかもスプレーされた液滴は電荷を帯びており、ノズルと糸の間で形成する電場の中にすべて閉じ込められて最終的に糸に塗布されるため、一切廃液が発生しない。この画期的手法で加工された導電糸は世界最高レベルの導電性を有している。この圧倒的に優れた導電特性は、カバーリング加工を施した高伸縮性導電糸においても保たれており、伸縮性と柔軟性を併せ持つ競争力の高い導電加工技術を確立したと言える。また、エレクトロスプレーの送液量を制御することで容易に導電性を制御できることも大きな特徴である。

今後の実用化・事業化の見通し

 事業終了後5年間で売上高9,600万円、生産数量800kg/年を目指す。また、エレクトロスプレー法の環境負荷の小ささと製品の競争力の高さを訴求することで、2028年から5台/年のエレクトロスプレーめっき装置のライセンス生産による売上1億円を目指す。

実用化・事業化にあたっての課題

 今後の課題は、生産性向上にある。現在、2本糸を5m/分で加工しているが、加工速度の高速化技術開発と複数本糸を同時加工する技術開発を進めることが喫緊の課題である。また、装置の連続無人稼働を目的とした安全装置の開発を新たに始めている。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 浅野繊維工業株式会社
事業管理機関 公益財団法人石川県産業創出支援機構 成長プロジェクト推進部 イノベーション支援課
研究等実施機関 国立研究開発法人産業技術総合研究所 環境創生研究部門 界面化学応用研究グループ
石川県工業試験場 繊維生活部
アドバイザー 国立研究開発法人福井大学
旭化成株式会社
旭化成アドバンス株式会社
日華化学株式会社
株式会社島精機製作所
国立研究開発法人産業技術総合研究所

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 浅野繊維工業株式会社(法人番号:1220001017342)
事業内容 繊維加工業・細幅ゴム⼊り織物・経編製造業者、向けカバーリングを製造
社員数 9 名
本社所在地 〒929-1215 石川県かほく市⾼松サ-49-3
ホームページ https://asano-fibers.jp/
連絡先窓口 代表取締役 浅野貴裕
メールアドレス info@asano-fibers.jp
電話番号 076-282-5652