立体造形
社会やクルマが新しく変わっていく中、目指したのは、環境性に優れた鋳物砂です
大阪府
富士化学株式会社
2022年1月25日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 高崩壊性無機バインダ鋳型の再生の実現と廃棄物の無害化資源化による自動車向けアルミニウム合金鋳造におけるゼロエミッション化技術の開発 |
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基盤技術分野 | 立体造形 |
対象となる産業分野 | 自動車、農業、産業機械、工作機械 |
産業分野でのニーズ対応 | 環境配慮 |
キーワード | 砂型鋳造、アルミ鋳物、自動車鋳物、無機系粘結剤、鋳物砂 |
事業化状況 | 実用化間近 |
事業実施年度 | 平成30年度~令和2年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
これまで、富士化学株式会社は水ガラスなどの無機系粘結剤の製造販売を実施してきた。
従来砂型に使用している無機の粘結剤は、鋳造後も粘結剤の成分が残留するため、崩壊性および再生性の低さが問題とされてきた。そこで、研究グループでは新規無機粘結剤などを添加するなどして、高い崩壊性を有する無機鋳造法などを開発している。
これまでの研究の結果、比較的簡単な形状の鋳物であれば有機材料と同等の砂型の鋳造が可能となったが、自動車エンジンのシリンダヘッドのような複雑な形状の砂型を量産する技術レベルには達していない。この課題を解決すべく、新規無機粘結剤を用いて乾態化させることで、造形性を大幅に向上させるだけでなく、高い崩壊性・砂再生に適した無機粘結剤の開発を行う。同時に有機系鋳物砂に機能面及びコスト面で対抗するために、鋳物砂の再生化および無害化、資源化に取り組む。
開発した技術のポイント
半湿体状と乾態状の新規無機系粘結剤の開発をし、流動性の向上および強度の両立を達成した。
半湿体状の粘結剤はこれまで広く用いられる無機系粘結剤と非常に近い状態で、比較的少量生産での手込めなどの製造に適しており、砂の再生も容易に可能であり、植物の育成剤としての効果も確認された。
また、乾態状の無機粘結剤では、これまでのシェルマシーンのような砂型の製造装置を改造などせずにそのまま使用可能となるように、半湿体状の技術を乾態化する技術の開発を実施した。この無機粘結剤は流動性と強度の両立、無機粘結剤の特徴である有害ガスの発生がない事など非常に高い評価を自動車メーカーより頂いており、今後、共同で試験などを実施可能な段階まで開発が進捗している。
具体的な成果
・新規無機粘結剤の開発における課題への対応
-新規無機粘結剤を用いて恒温恒湿条件下に一定時間保管した砂型の強度解析を基準とし様々な配合について検討した。その結果、開発当初の目標であるJIS試験体での強度2.0MPaおよび開発途中からユーザーの具体的な要望である抗折強度4.0MPaを達成できた。
-新規無機粘結剤の加熱前後の強度に及ぼす静置雰囲気の影響について、開発当初の目標値である強化低下率80%以上を達成できた。
-新規無機粘結剤の砂型の温度を変えたX線回折法により、高い崩壊性を有する鋳造砂を設計することができ、さらにSEM-EDX解析によりユーザーに対して新規無機粘結剤に関する性能をより詳しく説明できるようになった。
・アルミニウム合金鋳造及び再生技術開発における課題への対応
-高崩壊性無機鋳物砂の開発において、アルミ鋳物製造に適した新規無機粘結剤の配合を決定する事ができた。
-実際の砂型の温度および温度分布から、材料や配合、実験条件を設定する事が可能となった。このことから、砂型に必要とされる初期強度や、崩壊性の発現温度などを設定するために極めて有効な情報を確認できるようになった。
-理想的な条件で繰り返し利用する事で、95%程度の再生利用を実現し、砂の繰り返し利用によるコスト削減が可能となった。
-湿式再生においても砂の再生率95%を達成した。
・新規粘結剤の開発および、崩壊剤として機能する多孔質材料の併用、更に粘結剤の固体化などにより、当初の目標であるブロー造形性の向上と強度の両立が達成できた。また、アルミ鋳造試験を共同で実施することで有機系の材料に比べて、圧倒的にガスの発生が少ないことを確認した。
・従来廃棄していた鋳物砂を植物肥料としてロメインレタスと芝で試験を行い、植物育成材としての効果を確認する事が出来た。
知財出願や広報活動等の状況
本研究の前提となる技術については、以下のように特許を取得済みである。
・鋳物砂に多孔質材料を添加する新規無機工法の開発(特許5971553)
・無機砂型の硬化及び崩壊メカニズム(特開2016-209920)
研究開発成果の利用シーン
無機系の粘結剤を用い、有機ガスの発生しない状況での自動車エンジンのシリンダヘッドのような、複雑な形状の鋳物を製造したい時に利用できる。また、従来、有機系砂型の製造に利用していたシェルマシーンの様な既存の製造装置での砂型製造に利用可能であり、砂型製造、鋳物製造の現場の環境の改善に非常に有効な対策として利用可能である。同時に、有機系粘結剤と異なり鋳造時に粘結剤が燃焼する事がない。そのために、ガス欠陥への大きな対策になると考えられる。よって、従来、ガス欠陥のために不可能であったより精密な鋳物の設計などに利用出来る。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
富士化学で約1トン/日程度の製造設備を準備し、実製造設備での製造テストを行う予定であり、自動車メーカー等への本格採用、実用化を目指していく。テスト製造レベルのサンプル出荷は積極的に実施できる状況にある。
提携可能な製品・サービス内容
製品製造、共同研究・共同開発、技術コンサルティング
製品・サービスのPRポイント
無機系の粘結剤の研究は、環境規制の厳しい生産拠点への対応、有害ガスの発生による作業環境および地域環境への対応、今後より微細化および高精細化する鋳物に対するガス欠陥対策など、鋳造業界の課題に対する根本的な解決策となる。
一方で、長年の問題とされてきた無機系の粘結剤に関する大量生産に対する問題も大きく改善できており、自動車メーカーにサンプル提出を開始し、有機系と同程度の生産性が見込める可能性があるとの評価を受けている。
今後の実用化・事業化の見通し
自動車業界をはじめ、鋳物砂のメーカーにもアプローチし製品の出荷体制なども整えて、製品化および実用化を目指す。
また、ブロー法の生産方式は自動車メーカー以外でも非常に広く用いられていることから、非常に難易度の高い自動車部品の中子を作製する事が出来れば、多くの鋳物製造業者に対して非常に有効な広報手段となると期待できる。
実用化・事業化にあたっての課題
大型実機での連続製造に対する製造条件の最適化までは到達出来ていないため、継続して開発に取り組む必要がある。
事業化に向けた提携や連携の希望
乾態状の無機系鋳物砂は、従来のいわゆるシェル砂と同程度の使用量が見込める。そのために製造量の確保が課題の一つである。現在の開発状況ではシェル砂の製造装置での無機系鋳物砂の製造が可能になると思われる。そのために中小企業を含む、様々な砂メーカーなどと連携を希望する。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 富士化学株式会社 営業開発部 |
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事業管理機関 | 公益財団法人岐阜県産業経済振興センター 技術振興部 開発支援課 |
研究等実施機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 製造技術研究部門 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 富士化学株式会社(法人番号:2120001008524) |
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事業内容 | 1.各種珪酸ソーダの製造販売 2.有機金属化合物及び無機化合物を利用した膜形成剤の製造販売 有機金属化合物及び金属錯体の分野に於ける受託開発並びに製造 3.珪酸ソーダカレット・珪酸カリ・薬液注入硬化剤の販売 4.コンクリート強化防水材製造販売 5.シリカ水製造販売 6.レクチン製造販売 7.環境計量及びその証明 8.その他工業薬品の販売 |
社員数 | 142 名 |
生産拠点 | 東京工場(千葉県船橋市)、名古屋工場(愛知県春日井市)、大阪工場(大阪府枚方市)、テクニカルセンター(岐阜県中津川市) |
本社所在地 | 〒534-0024 大阪府大阪市都島区東野田町3丁目2-33 |
ホームページ | https://www.fuji-chemical.com/ |
連絡先窓口 | 営業開発部 須永基男 |
メールアドレス | sunaga@fuji-chemical.jp |
電話番号 | 0573-68-7222 |
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