精密加工
金属3Dプリンターによる複雑形状金型を技量差に依らない後加工で所望の精度とする製造プロセスの構築
山口県
高橋鉄工株式会社
2023年3月3日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 金属3Dプリンターを用いた複雑形状ダイカスト金型における加工技能データを活用した仕上げ工程及びその製造プロセスの構築 |
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基盤技術分野 | 精密加工 |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護、環境・エネルギー、航空・宇宙、自動車、ロボット、産業機械 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高性能化(精度向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、高効率化(生産性増加)、低コスト化 |
キーワード | 精密加工、金属3Dプリンタ、技術伝承、熱処理、金型 |
事業化状況 | 事業化に成功 |
事業実施年度 | 平成29年度~令和1年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
自動車の製造工程において、高張力鋼プレス部品のアルミダイカストへの置き換えが拡充している。アルミダイカストはプレス加工に比べて、軽量化や設計の自由度の高さを生かした複数部品の一体化による工程の集約といったメリットがある反面、製造に使用する金型には、強度を確保するために深リブなどの高L/D(長さに対して幅が極端に狭い)形状を多数含むような複雑形状金型が求められている。このような金型は、従来の加工方法では不良率が90%を越えることや、作業者の技量による完成時間のばらつきが大きいなど、実用レベルでの製造が困難な状態にあった。
本研究開発では、これらのニーズに対応するため、金属3Dプリンターによる複雑形状金型を後加工によって作業者の技量に依らず所望の精度に仕上げる製造プロセスの構築を目指す。造形物の高精度な後加工技術を確立することで、川下企業である自動車産業での車体やエンジン部品などのダイカスト製造工程での生産性の向上、低コスト化に寄与することを目的としている。
開発した技術のポイント
下記の技術開発により、従来加工法では不良率90%を超え、製造困難であったL/D30の形状を含む金型部品について、要求精度(表面粗さRa0.8μm、形状精度+/-0.01mm以下)を満たし、従来比のコスト低減:40%、加工時間短縮:50%で製造可能なプロセスを構築。
・金属積層造形技術の高度化
-99%以上の密度による金属積層造形
-最適な熱処理条件
-機械加工時に悪影響を与えないサポート配置等の造形シミュレーション
・精密加工技術の高度化
-サポート除去技術の確立
-ビビリ発生を抑える加工条件の確立
-仕上げ加工用の新工具開発
・熟練作業者ノウハウデータベース構築
-3Dデータより、過去の事例を検索できるシステム構築
具体的な成果
・金属積層造形技術の高度化
-SKD61にて相対密度99%以上とする造形条件を確立
-マルエージング鋼及びSKD61の造形物に対して、市販剤と同等の機械的性質を得るための熱処理条件を確立
-造形時の熱変形抑制や機械加工時に悪影響を与えないサポート配置検討のための造形シミュレーション条件の確立
・精密加工技術の高度化
-マルエージング鋼及びSKD61の高L/D造形物に対して、ビビリ振動を抑制する技術を開発し、要求精度で仕上げる加工条件を確立
-金属3Dプリンターの仕上げ加工に適した専用工具を開発
・熟練作業者ノウハウデータベース構築
-金型のCADデータ形状から必要となる工具情報を抽出し、既存加工事例と照合するデータベースを構築
・金型部品の試作及び検証
-川下企業のニーズに基づく金型を試作しと、実際の生産現場での実用性を確認
知財出願や広報活動等の状況
本研究開発は各種製造技術の高度化による製造プロセスの構築を目的としており、研究開発成果としてはノウハウが大部分を占めているため、知財出願についてはノウハウの流出防止の為、申請はしない。
研究開発成果の利用シーン
本研究では、形状が複雑かつ要求精度が高いダイカスト金型をメインとして開発を行ってきた。金属3Dプリンターによる製造には後加工技術の確立は必要不可欠であり、開発した金属3Dプリンターと精密加工の融合による製造プロセスにより、下記のような様々な分野で、高機能化、高効率化を実現することができる。
・自動車
・金型
・航空宇宙
・医療
・各種複雑形状部品
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
・川下企業へ試作品を提供し、ダイカストラインで金型の評価を行っている。評価では金型の耐久性はもちろんのこと、金属3Dプリンターによる金型製造の利点のひとつである冷却水管の最適配置を行い、成形品質の改善やサイクルタイムの低減等も評価対象としている。
・検証結果では順調に使用できていると川下企業からの報告を受けており、当企業においては本製造プロセスを用いた他の金型への展開を行っている。
・以上の検証実績を基盤として、より多くの川下企業への技術導入により、従来では製作困難であった複雑形状のダイカスト金型を製造・販売を計画。
・また、金属3Dプリンターでの製造において必須である「後加工技術」に着目し研究開発を進めてきたことにより、金型分野以外にも造形物の後加工の受注も得ている。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、加工・組立・処理、素材・部品製造
製品・サービスのPRポイント
・従来では製作困難であった複雑形状のダイカスト金型の製造が可能となる。ダイカスト金型に限らず、他用途の金型や少量高付加価値製品への適用が見込まれる。
・金型における冷却水管のように、内部に設計自由度があるというメリットを生かすことができる製品に対して、金属3Dプリンターで製造し内部構造を改善することにより、従来技術では実現できなかった製品の開発が可能となる。
・金属3Dプリンターによる製造のみならず、開発したビビリ抑制技術を用いて高L/D形状を有する複雑形状製品の精密加工が可能となる。
今後の実用化・事業化の見通し
・当面は試作物の検証を実施した川下企業での本格導入を検討しており、新規金型の受注有。
・将来的に、主要なダイカストユーザーである自動車産業に対しても、本研究開発の開発技術を活用した製品の提供を進めていく。
・今後は、ダイカスト以外の金型や、航空宇宙、医療関係、その他各種部品製作への適用も検討。
実用化・事業化にあたっての課題
・川下企業における金型の製造方法の変更への対応(金属3Dプリンターの造形材料を金型として使用する場合の物性評価等)
事業化に向けた提携や連携の希望
現在、金属3Dプリンターを用いた部品・製品製造を検討中の企業との連携を希望しております。
また、既存の加工技術では対応できなかった高L/D形状のような複雑形状製品の加工についても、企業との連携を希望しております。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 高橋鉄工株式会社 |
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事業管理機関 | 地方独立行政法人山口県産業技術センター |
研究等実施機関 | 高熱炉工業株式会社 独立行政法人国立高等専門学校機構徳山工業高等専門学校 地方独立行政法人山口県産業技術センター |
アドバイザー | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 株式会社プレスセンター |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 高橋鉄工株式会社(法人番号:5250001008995) |
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事業内容 | 各種金型製造 |
社員数 | 15 名 |
本社所在地 | 〒745-0802 山口県周南市大字栗屋145-3 |
ホームページ | https://takahashi-tekko.com/ |
連絡先窓口 | 高橋鉄工株式会社 専務取締役 高橋亨 |
メールアドレス | t-tooru@takahashi-tekko.com |
電話番号 | 0834-25-0117 |
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