立体造形
金属粉体を利用し、二次元的に高い熱輸送能力を持つベーパーチャンバーの高均熱、高熱輸送能力を実現
新潟県
株式会社WELCON
2021年2月16日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 焼結による高均熱、高熱輸送ベーパーチャンバーの開発 |
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基盤技術分野 | 立体造形 |
対象となる産業分野 | 産業機械、情報通信、半導体 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加) |
キーワード | 高熱輸送、高熱伝導率、均熱、薄型 |
事業化状況 | 事業化に成功 |
事業実施年度 | 平成29年度~令和1年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
・放熱や温度均一性の確保など熱に対する要求が高まっており、従来手法のヒートパイプの場合、扁平加工により熱輸送量が低下し、二次元的な面の温度分布を均一にすることが困難であった。
・本研究では、自社で試作に成功している二次元的に高い熱輸送能力を持つベーパーチャンバーについて、金属粉体を利用した手法をさらに高度化させ、性能の向上を図り、高均熱、高熱輸送能力を実現する。
開発した技術のポイント
・金属粉焼結利用による高毛細管力構造の開発
‐ベーパーチャンバーに高毛細管銅粉構造を適用し、熱輸送量、最大発熱密度を向上させた。銅粉はアトマイズ粉(球形)と、電解銅粉(杉の葉形状)を用いてそれぞれの特徴を生かし最適化した。
・高アスペクトパターン印刷技術の開発
‐大気圧プラズマとステージ加熱を用いることで、150℃でのペースト焼成が可能となった。
また、高粘度ペーストの塗布は、特殊樹脂材料をマスクとして用い、高アスペクトパターン印刷可能とした。
加えて、特殊樹脂材料マスクを板状に成型し、レーザー切断による加工で高精度マスク製作を達成した。
・低温~高温で使用可能な作動冷媒選定
‐低温ではメタノール、高温では水を選定した。ベーパーチャンバーの使用環境温度が-20℃~30℃でも動作可能とした。
・Ti 材料による筐体の高耐圧化
‐高温で使用時、作動冷媒が水となるため筐体内が高圧となることが多い。機械的強度を確保するためTiを採用した。
具体的な成果
・金属粉焼結によるべーパーチャンバーの実用化に大きく近づくことが出来た。
・高熱輸送能力、高発熱密度の発熱源の冷却は、熱輸送量 200W、発熱密度 100W/cm2の目標値に対し、熱輸送量 300W、発熱密度 104W/cm2を達成した。
・高熱伝導率は、目標見かけ熱伝導率 5000W/mK に対し、最大で10000W/mK の熱伝導率を達成した。
・環境温度-20℃で試験を行い、作動を確認できた。40W程度の発熱に対し、見かけ熱伝導率約700W/m・Kを達成した。
・印刷マスクの材質を特殊樹脂材料とし、高精度レーザー加工機によって加工することで、銅粉体の焼結の形状自由度が増した。その結果、高精度なパターンを形成することに成功した。パターン分解能は4μm、位置合わせ精度は±15μmを達成した。
・Ti 材料を採用して筐体の高耐圧化を行った。その結果、作動冷媒を水とした場合にも漏れなく封入でき、動作を確認できた。
研究開発成果の利用シーン
熱対策部品としてのべーパーチャンバーは、小型かつ高発熱部品の冷却用途として利用できる。
具体例の1つとして、次世代スマートフォンの冷却がある。
これまではグラファイトシート等、素材の熱伝導率を利用した放熱が行われてきたが、
近年の高速通信化や高演算化等に伴う処理能力の増大により、さらなる冷却能力が求められている。
別の具体例として、自動車用 ECU などの高発熱部品の冷却用途がある。自動車用 ECU では安全機能のためのセンサーやカメラが追加され演算量が増大しており、非常に大きな発熱の冷却が求められている。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
本研究で得られた成果は小型デバイスの冷却に展開可能であり、幅広く市場展開を行う。
展示会やWebサイトで情報展開を行い、興味を持っていただいた顧客にはサンプル提供を行う。
また、熱設計、解析、評価技術を駆使し、明確でない課題に対してどのようにベーパーチャンバーを適用すべきか、提案を行う。加えて、周囲への放熱技術も併せて必要となる場合、それらの提案も合わせて行い、顧客の解決すべき課題をトータルでサポートする。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、製品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発
製品・サービスのPRポイント
金属粉焼結により、これまでのベーパーチャンバーより高い熱輸送能力が得られた。それにより、300Wを超える高発熱源の冷却も可能となった。
また、1mm未満の薄さにしても、40W程度の高い熱輸送能力が得られた。これにより、高い熱負荷だけでなく、スペースが無い機器での冷却にも対応可能である。
さらに、ベーパーチャンバー自体は拡散接合技術を用いて製作している。これは原子の拡散を利用し、材料同士を溶かさずに直接接合する技術であり、高い接合信頼性が得られる。
今後の実用化・事業化の見通し
現在、各種企業や研究機関から引合や試作依頼を頂いており、良い評価を頂いている。
また、ベーパーチャンバーを適用した機器が世の中に徐々に広がっていることもあり、多くの業界から問い合わせを頂いている。
熱対策に関するニーズは今後も増えることが予想され、さらなる需要増が期待される。
実用化・事業化にあたっての課題
基本的な特性や性能の評価は行っているが、個別の要求事項に対しては都度評価が必要となる。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社WELCON |
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事業管理機関 | 公益財団法人新潟市産業振興財団 |
研究等実施機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社WELCON(法人番号:8110001009195) |
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事業内容 | 金属製品製造業 |
社員数 | 70 名 |
本社所在地 | 〒956-0113 新潟県新潟市秋葉区矢代田15-1 |
ホームページ | https://www.welcon.co.jp/ |
連絡先窓口 | 株式会社 WELCON 取締役技術部長 斎藤 隆 |
メールアドレス | takashi_saito@welcon.co.jp |
電話番号 | 0250-38-1900 |
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