表面処理
膜質改善のためのプラズマ用パルス電源装置
福島県
有限会社エイチ・エス・エレクトリック
2022年1月28日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | HIPIMS対応可能なフレキシブルパルス電源システムの開発 |
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基盤技術分野 | 表面処理 |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護、自動車、半導体、光学機器 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(信頼性・安全性向上) |
キーワード | パルス電源、HiPIMS、プラズマ用電源、膜質改善、成膜装置 |
事業化状況 | 事業化に成功 |
事業実施年度 | 平成29年度~令和1年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
自動車部品の表面処理は、耐摩擦性や耐食性の向上のみならず、平準化による燃費の改善など環境と省エネルギー面での寄与の大きい。近年、高品位成膜法として高出力インパルスマグネトロンスパッタリング法(略称HiPIMS法)が注目されているが、現状のパルス電源ではHiPIMSの性能を十分発揮できない。本研究ではHiPIMSによる高品位成膜に必要なフレキシブルパルス電源の開発を行う。
開発した技術のポイント
フレキシブルパルス電源を構成する4つの要素①DC-DCコンバータ、②パルス生成回路、③異常放電保護回路、④制御装置(コントローラー)の開発を行い、それらを組み合せてフレキシブルパルス電源システムを構築した。小容量で各種試験向けのα版フレキシブルパルス電源、大容量で商業生産向けのβ版フレキシブルパルス電源を製作した。α版パルス電源は、企業や大学においてプラズマ試験を実施し、良好な評価を得た。
具体的な成果
①DC-DCコンバータ開発
‐小型軽量化と高効率化のために、SiC-FETとSiCダイオードを使用し、スイッチング周波数85kHzで最高効率95.7%のDC-DCコンバータを開発した。さらにトランスとリアクトルの小型化によって装置容積の30%削減を達成した。
②パルス生成回路開発
‐正負の3値パルスを生成可能な回路を考案し、研究開発向けに5kW級 のパルス電源(α版と称する)、生産ライン向けに50kW級のパルス電源(β版と称する)を開発した。さらに、主パルスのほかに、主パルスと同期したパルスを基板に印加する回路を開発した。
③異常放電保護回路開発
‐約200nsの速度で過電流遮断が可能な双方向スイッチを開発した。さらに、永久磁石と鉄心で構成される限流器を提案し、α版およびβ版パルス電源に対応できる限流器を開発した。
④制御装置の開発
‐低コストでシステムの制御・監視・通信・操作を実現するために、myRIOをベースとしたリアルタイムコントローラを開発するとともに、安価なシングルボードコンピュータとタッチパネルを用いた操作システムを構築した。さらに、IOT対応を目的として、遠隔操作用ソフトウェアを一般的なPCで使用できるように整備し、ユーザ所持のPCにて遠隔操作できるように改良した。
知財出願や広報活動等の状況
1.スパッタリング用電源システム、特許第6775858号 2.電源システム、特許第6713143号 3.電源装置、特許第6558789号 4.過電流保護装置、特許第6558788号 5.スパッタリング用パルス電源装置、特許第6348243号
研究開発成果の利用シーン
開発したHiPIMS用フレキシブルパルスによって、成膜品質の良好なHiPIMS用フレキシブルパルス電源の実用化が加速される。
開発したDC-DCコンバータ(定格500V-10A-5kW)を複数台直並列で使用出来るため、パルス電源の出力に応じて柔軟にシステムを組むことができる。
開発した異常放電保護回路によって、突発的な異常放電に対してシステムを確実に保護できる。
開発したフレキシブルパルス電源のシステムコントローラを使うことで、低コストでシステムの制御、監視、通信、操作を実現できる。さらに、ユーザー所持のPCにて遠隔操作することができる。
パルス発生回路、DC-DCコンバータ、双方向スイッチ、および限流器の解析モデルを構築した。これにより、フレキシブルパルス電源の特性予測と最適設計、開発期間の短縮に有用となる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
小容量α版パルス電源について、企業や大学にプラズマ試験を実施頂き、高い評価を得た。
提携可能な製品・サービス内容
加工・組立・処理、製品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発
製品・サービスのPRポイント
①HiPIMS用フレキシブルパルス電源:本事業によって、成膜品質の良好なHiPIMS用フレキシブルパルス電源の実用化が加速されるものと期待する。
②フレキシブルパルス電源:上記の研究成果をもって事業化を行い、競合他社製品に対して国産化、コストパフォーマンスの良さ、アフターケアの充実がメリットである。
③ジュール制御スパッタリング電源:ハードディスク製造用スパッタリング電源にジュール制御機能を付加したものである。
④陽極酸化用パルス電源:本研究成果を従来製品に適用することにより、高性能且つ価格競争力のある陽極酸化用パルス電源の製品化が可能となる。
今後の実用化・事業化の見通し
今後川下企業へのPRをし、事業化を進めていきたい。
小容量のα版パルス電源については、企業や大学から高い評価を得ている。
フレキシブルパルス電源については、競合他社製品に対して、国産化、コストパフォーマンスの良さ、アフターケアの充実を売りとして売り上げアップを図る。
実用化・事業化にあたっての課題
川下企業へのPR
追加研究(装置の実装技術の改良、設備の低コスト化)
事業化に向けた提携や連携の希望
真空機器装置メーカーで成膜装置を製造している企業との提携を模索しています。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 有限会社エイチ・エス・エレクトリック |
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事業管理機関 | 公益財団法人福島県産業振興センター |
研究等実施機関 | 日幸電機株式会社 国立大学法人東北大学 未来科学技術共同研究センター 教授 一ノ倉 理 国立大学法人宇都宮大学 工学部 准教授 後藤 博樹 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 有限会社エイチ・エス・エレクトリック(法人番号:8380002034653) |
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事業内容 | パワーエレクトロニクス製品の開発・製造販売 |
社員数 | 4 名 |
本社所在地 | 〒969-3502 福島県喜多方市塩川町常世字西町699 |
ホームページ | http://www.hse-web.jp |
連絡先窓口 | 有限会社エイチ・エス・エレクトリック 代表取締役 関本英雄 |
メールアドレス | hselectric@hse-web.jp |
電話番号 | 0241-27-8478 |
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