精密加工
鉄道レールには継ぎ目が溶接されたロングレールが採用され、レールの溶接時の余盛除去・継ぎ目平滑化を効率的に削正する余盛除去装置の開発を行う
宮城県
大研工業株式会社
2021年2月19日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 鉄道レールの溶接余盛(よもり)除去装置の開発 |
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基盤技術分野 | 精密加工 |
対象となる産業分野 | 鉄道 |
産業分野でのニーズ対応 | 高効率化(人件費削減)、高効率化(生産性増加) |
キーワード | 余盛除去、削正装置、鉄道、レール、溶接 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 平成29年度~令和1年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
開業35周年を迎えた東北新幹線は、老朽化したレールの一斉交換工事を施工する。新幹線のレールには継ぎ目が溶接されたロングレールが採用されている。レールの溶接作業には、溶接時の余盛を除去し、継ぎ目を平滑化する削正作業が付随する。現状において削正作業は、ハンドグラインダーによる人力で行われており、本作業の効率化が課題となっている。そこで、効率的に溶接余盛を除去可能な余盛除去装置の開発を行う。
開発した技術のポイント
・レール研削面の残留応力測定手法の構築
‐残留応力を測定するための手法を構築した。
・レール断面全周の削正が可能な機構
‐レール断面形状の輪郭を全周加工するために、砥石を各位置へ位置決め可能な装置を開発した。
・耐候性
‐装置は屋外で使用されるため、温度の変化や降雨や降雪に耐えうるか環境テストを実施した
・作業安全性
‐レール研削中時に大量の火花、切りくずが発生する。安全性確保のため、砥石周囲には砥石カバーを配置した。また、非常停止ボタンを配置した。
・可搬性
‐装置は新幹線の場合の保守用階段を用いて高架軌道へ運搬する場合もある。そのため、少ない人数での運搬を可能とする小型・軽量な装置が必要である。運搬時に複数のユニットへ分割可能な構造を採用し、可搬性を確保した。
具体的な成果
・模擬試験結果(粗加工機 Ver.2 と仕上げ加工機Ver.3)
‐ 粗加工機 Ver.2 は、軽量化と操作性や視認性が大幅に向上した。
仕上げ加工機 Ver.3 は、熟練作業者より初心者でも高精度な仕上げが可能と高い評価を得た。
・レール研削面の残留応力測定手法の構築
‐「ポータブル型X線残留応力測定装置」を使用し、加工面における残留応力値を測定する手法を構築した。導入した「電解研磨装置」を用い、加工面から深さ方向における残留応力の分布を測定する手法を確立した。
・レール断面全周の削正が可能な機構
‐底面以外の大部分の余盛を除去する粗加工機と、頭頂面と頭側面のみを精密に仕上げる仕上げ加工機により、レール断面全周削正を実現した。
・耐候性
‐粗加工機、仕上げ加工機共に、電気駆動部品について、散水試験(10L/minで1分間、2セット)と温度サイクル試験(-15~40℃、3サイクル)を実施し、故障なく作動することを確認した。
・作業安全性
‐両加工機共にリスクマアセスメント表を活用して問題点の抽出と対策案の検討を行い、安全性の設計を行った。
・可搬性
‐粗加工機は 135kg で 4 人で搬送可能。3 ユニットへの分割が可能とした。
仕上げ加工機は総重量73㎏であり、2名での運搬可能とした。
知財出願や広報活動等の状況
特願 2020-024898で出願し、早期審査請求を経て、令和2年10月6日付けで、特許6774077号 レール研削装置が登録された。
研究開発成果の利用シーン
開発した装置により、レール溶接部の余盛除去作業を人による手作業から機械による作業とし、負担軽減と作業効率化をすることができる。また、高度熟練および重労働作業から解放することができる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
仕上げ加工機は補完研究で装置レベルの向上を図り、溶接業者での実機加工結果を経て、早期の販売につなげる。
粗加工機は、鉄道レール以外の業界へも範囲を広げて活用を調査して行く。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、製品製造、技術ライセンス
製品・サービスのPRポイント
従来、鉄道レール溶接部の余盛を除去する作業は人による手作業で行われてきた。
熟練の作業者にしかできない要求精度であり、適切な人材確保が必要であった。
また、作業者は悪環境での作業となり、夜間の非運行時間に作業を終了させる必要があり効率化も求められていた。
本装置を適用することで、熟練作業者と同等以上の除去精度を確保することができ、人材確保の問題を解決でき、作業効率化も実現できる。
今後の実用化・事業化の見通し
・事業化予定
令和2年度:仕上げ加工機のデモ機を完成し、溶接業者に貸出評価検証
令和3年度:数社に絞って仕上げ加工機販売開始 令和4年度:仕上げ加工機本格販売開始
・売上予定
令和3年度年度: 12,000 千円/年
令和4年度年度: 36,000 千円/年
令和5年度年度以降: 60,000 千円/年
実用化・事業化にあたっての課題
主に研究開発の課題として以下がある。
■粗加工機
・軸移動やクランプ等の段取りに要する非加工時間の割合が多く効率的な削正が難しいことと、運搬に4人以上を要する装置重量の問題が作業者に敬遠されている。
■仕上げ加工機
・取扱い性や労力軽減の面で、細かな改善点がある。
事業化に向けた提携や連携の希望
鉄道レール保全設備の販売企業との連携を模索中
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 大研工業株式会社 |
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事業管理機関 | 大研工業株式会社 |
研究等実施機関 | 宮城県産業技術総合センター 自動車産業支援部 家口 心、渡邉 洋一、吉川 穣、久田 哲弥 |
アドバイザー | 東経連ビジネスセンター株式会社 森 由喜男 全溶株式会社 井上哲生 辰巳光正 上村孝志 ノリタケカンパニーリミテド |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 大研工業株式会社(法人番号:3370201000255) |
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事業内容 | 金属製品製造業 機械・機械部品設計製作 |
社員数 | 43 名 |
本社所在地 | 〒989-6213 宮城県大崎市古川保柳字北田38-1 |
ホームページ | http://www.pro-daiken.com/ |
連絡先窓口 | 専務取締役 今野 啓輝(ヨシテル) |
メールアドレス | y.konno@pro-daiken.com |
電話番号 | 0229-226-2333 |
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