バイオ
多くの有効成分を含む焼酎かすからの、世界初の脂溶性のポリフェノール量産化を目的としたSDGs社会実現研究
鹿児島県
薩摩酒造株式会社
2023年2月14日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 世界初の脂溶性ポリフェノールの量産化を目的に、独自の抽出・濃縮・精製技術による焼酎かすからの製造技術の確立 |
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基盤技術分野 | バイオ |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護、食品、化粧品 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高効率化(生産性増加)、環境配慮 |
キーワード | 機能性表示、抗老化、認知機能改善、アップサイクル、抽出精製 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 令和1年度~令和3年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
芋焼酎かす中に希少な脂溶性ポリフェノール類が含まれ、実験室規模で抽出分離した試験品提供の結果、川下企業から当物質の早期量産化を求められている。焼酎かすの固形分から抽出する当物質の実用化に当たっては異臭対策、工程内の酸化、熱分解対策、装置の小型化と、当物質を取り出しやすい視点を変えた酒造技術の確立、試作品の公的評価(機能性評価等)が必要であり、実用化前段階の研究を共同体企業で協力して実施する。
開発した技術のポイント
・異臭対策を考慮した焼酎かすの脱水・乾燥技術の確立
‐腐敗臭を抑制する焼酎かすの保管温度、保管時間を確認した。
‐ろ過圧搾機の操作方法を確立した。
‐乾燥物の取扱、乾燥機の操作性、乾燥時間、設備投資等を考慮して乾燥機を選定した。
・脂溶性ポリフェノールの量産化技術の確立
‐量産化に対応できる脂溶性ポリフェノールの精製技術を確立した。
・素材化技術の開発
‐脂溶性ポリフェノールの高純度精製技術を確立した。
‐脂溶性ポリフェノールを配合した食品や化粧品の試作品を開発した。
・安全性・機能性の評価
‐脂溶性ポリフェノールの食品及び化粧品の素材としての安全性データを得た。
‐実験動物で脂溶性ポリフェノールの腸管からの吸収や脳への蓄積を確認した。
‐ヒト試験において視覚記憶力及び社会的認知能力の向上を確認した。
具体的な成果
・世界初の脂溶性ポリフェノールを含む機能性素材を紫芋焼酎や紫芋ワイン等の製造残渣(焼酎かす)から製造する技術を確立し、食品と化粧品で使用可能なポリフェノール製剤とこれを活用した食品や化粧品を開発した。当該素材はカフェ酸セチルエステル(CA16)を含む。
・異臭対策を考慮した焼酎かすの脱水・乾燥技術や、脂溶性ポリフェノールの量産化技術、高純度精製法を確立した。
・食品安全性について、機能性表示食品ガイドラインの安全性手順を参考に、変異原性試験、急性毒性試験、亜急性毒性試験、過剰摂取試験、ヒト臨床試験を実施し、安全であることを確認した。
・化粧品安全性について、感作性試験、皮膚刺激性試験、眼刺激性試験を実施し、安全であることを確認した。
・食品機能性として、ヒト臨床試験による認知機能改善の効果を確認した。
・化粧品開発では、バリア機能(定期保湿持続性試験)やシワ改善(抗シワ試験)、美白(美白試験)、抗糖化等の効果を確認した。
・本事業で開発したものは、「脂溶性ポリフェノール」というこれまでにないオイル状のポリフェノールで、これを用いて製品の試作品を開発した。
知財出願や広報活動等の状況
2022年の主な活動
・4月「脂溶性ポリフェノール含有芋焼酎粕抽出物を含む食品の摂取が健常な日本人男女の認知機能に及ぼす影響」(「薬理と治療」 vol50 no.4),小峯修一,本坊愛一郎,開忍,宮鍋征克,阿部忍威,高良毅
・5月「ifia HFE2022 東京ビッグサイト」出展
・5月「ショップチャンネル」にてOxinoil販売開始
・7月エステサロンにてサプリメントの採用決定
・8月「日本ポリフェノール学会」にて発表
・9月「Food Style Japan 東京ビッグサイト」出展
・11月「Food Style Kyusyu 福岡マリンメッセ」「Food Style Okinawa 沖縄コンベンションセンター」出展
・12月「国際栄養学会 東京国際フォーラム」「中小企業研究開発(サポイン・サビサポ)展 東京ビッグサイト」出展
研究開発成果の利用シーン
食品と化粧品で使用可能なポリフェノール製剤とこれを活用した食品や化粧品の提供。これまでにない「脂溶性ポリフェノール」というオイル状のポリフェノール素材として食品や化粧品メーカーに提案する。食品では、ヒト臨床試験で得られた認知機能改善をヘルスクレームとする機能性表示食品届出を行い、今後加速する高齢化社会に向けた認知機能サプリメントとして利用する。またこの成分を配合した機能性酒類の製造にも取り組む。化粧品としては、本事業で得られたバリア機能や抗シワ、抗糖化のエビデンスを元に、高機能化粧品として自社ブランドやOEM受託製造を行う。100年以上の鹿児島県の焼酎伝統技術、焼酎トップブランドの薩摩酒造の焼酎モロミ利用、焼酎カスの有効利用というSDGs研究というストーリー性も国内大手企業や海外からも注目される。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
薩摩酒造は今シーズン仕込んだ紫芋焼酎もろみをPPL原料として、令和4年度は乾燥焼酎かす約150kgの製造を予定している。
鹿児島県での芋の病気や新型コロナによる焼酎製造量の減少に伴う紫芋焼酎の仕込みの目途が立たず、PPLの製造できないため今後の事業化予定は遅延する可能性がある。
本事業で行った機能性試験や安全性試験のエビデンスより、PPLの有効性が顧客から高評価である。
まずはジェヌインR&Dの既存顧客に提案を行い、下記が具体的に進んでいる。
・TV通信販売のバイヤーに提案した結果、非常に興味を持たれ2022年初めから商品化を行い「Oxinoil」という商品で5月にデビュー放送した。
https://www.shopch.jp/pc/product/prodlist/keyword?keyWord=%83I%83L%83V%83m%83C%83%8B
・全国にエステサロンの店舗を持つ会社への提案により、記憶力改善サプリメントの商品化が決定した。令和5年1月時点でサプリメントの配合内容まで決まっているが配合する量のPPLが作れないため保留中である。PPL製造後にすぐに発売できるよう、包装資材のデザインや試作試験、保存性試験を先に進める。
提携可能な製品・サービス内容
素材・部品製造、製品製造
製品・サービスのPRポイント
・これまでに無い世界初の脂溶性ポリフェノールである。
既存のポリフェノールは水溶性であるためすぐに尿として排出されるが、開発品は脂溶性なので細胞膜との親和性が高く、微量での効果に期待ができる。
・食品として化粧品としての安全性試験や機能性試験のエビデンスがある。
食品としてはヒト臨床試験を実施し、記憶力改善効果を確認し論文がアクセプトされている。
・焼酎製造の日本の伝統技術から生まれた機能性成分。
・焼酎かすを利用したSDGs研究開発。
今後の実用化・事業化の見通し
今後、化粧品は試作品を作成した後、5年以内に製品化して販売する。サプリメントや食品は、5年以内に機能性表示食品届出などを行なう。販売促進計画として、各展示会、動画配信、SNSでのPRや、ドラッグチェーンへの展開を行なっていく。また血液への効果も期待できることから、補完研究として、株式会社ジェヌインR&Dにより、赤血球の粘弾性改善について研究を行う予定である。
実用化・事業化にあたっての課題
・川下産業が求めるコストに見合わず、想定より高価な商品であること
・新型コロナによる焼酎の消費量低下や芋の病気による芋不足により、紫芋焼酎かすの入手が非常に難しい状況であること
・脂溶性ポリフェノールを配合した商品をどのように訴求していくか、消費者にわかりやすく伝える必要があること
事業化に向けた提携や連携の希望
開発品を配合した化粧品やサプリメント、酒類の販売先。クリニックやエステサロンのようにエビデンスを重視した商品開発を希望する顧客。脂溶性ポリフェノール残渣を利用したい企業。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 薩摩酒造株式会社 |
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事業管理機関 | 公益財団法人かごしま産業支援センター |
研究等実施機関 | 薩摩酒造株式会社 株式会社 ジェヌインR&D 国立大学法人京都大学 |
アドバイザー | ロート製薬株式会社 ADEKA 総合設備株式会 株式会社エヌチキン 学校法人鹿児島純心女子大学 鹿児島県工業技術センター |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 薩摩酒造株式会社(法人番号:6340001012590) |
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事業内容 | 酒類の製造販売輸出入、清涼飲料等の製造販売、食品類の仕入販売、農産物の研究開発及び生産物の販売、など |
社員数 | 169 名 |
生産拠点 | 鹿児島県に、頴娃蒸溜所、火の神蒸溜所、花渡川蒸溜所、壜詰工場の4つの工場を保有 |
本社所在地 | 〒898-0025 鹿児島県枕崎市立神本町26番地 |
ホームページ | https://www.satsuma.co.jp/ |
連絡先窓口 | 薩摩酒造株式会社 顧問 小峯修一 |
メールアドレス | iskomi@satsuma.co.jp |
電話番号 | 0993-72-1231 |
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