研究開発された技術紹介

自動車やロボットに使用される軸受ローラの小径化傾向にともなって製造工程に必要な加工ジグの薄肉化が求められている。しかし、摩耗防止のために超硬合金焼結体をジグ表面にろう付する従来製造方法では熱歪による割れや剥離が原因で不良率が高い。そこで本研究開発では、レーザ粉体肉盛技術を用いてジグ表面に超硬合金層を低入熱で積層することによって従来困難であった厚さ1mm以下の超薄肉長尺精密ジグの製造技術を確立し、短納期・低コスト化と新分野開拓を図る。

【レーザ粉体肉盛技術を用いてジグ表面に超硬合金層を積層すると伴に、同工程とジグ基材加工工程を一台の装置に集約】
・硬さ1,500HV相当の超硬合金を積層可能にし、シミュレーション解析やプロセスモニタリングによって積層を安定化した
・原料粉末のプラズマ処理によって超硬合金層内の空隙を防止した
・レーザ超音波検査技術により割れや内部欠陥を非破壊で検出可能にした
・機械加工と積層の工程集約および条件最適化により、超薄肉長尺精密ジグの低コスト化と短納期化を実現した

1.レーザ肉盛による超硬合金積層技術の開発
・WC含有率88%の原料で1529HV達成
・下地挿入と予熱、粉体加熱処理によって欠陥防止
・プロセスモニタリングとレーザ出力自動制御により積層にともなう幅バラツキを±5%に抑制
・シミュレーション解析結果とプロセスモニタリングによる検出結果との間に整合性があり、相互に妥当性あり
2.原料粉末製造技術の開発
プラズマ加熱を繰り返すことで真球度向上（91%）や緻密化（見かけかさ密度増大率73%）、流動性向上（基本流動エネルギー指標0.6J以下）を図ったWC-Co造粒粉末を作製
3.非接触非破壊検査技術の開発
・レーザ超音波検査範囲60mmにおいて0.01mm^2の欠陥を検出
4.ハイブリッド加工技術の開発
・薄肉ジグの機材の切削加工条件および研削加工条件の確立を進め、目標加工時間5時間以内、製造コスト65,000円以下で厚さ1mm、長さ400mmのブレードを試作した
・ジグの品質基準として超硬積層部の「硬さ」「摩擦摩耗試験」「空隙量」を得た

・心なし研削加工等向けの超薄肉長尺精密ジグ（ブレード）をはじめとする研削加工用精密ジグの製造および補修
・積層造形用原料粉末の製造販売
・金型産業向けに使用可能なレーザ粉体肉盛積層造形装置として製造販売
・高機能レーザ粉体肉盛積層造形ユニットの製造販売

実用化に向け補完研究を継続

厚さ1mm、長さ400mmのブレードの製造時間が目標の5時間以内を達成した。製造コストも、目標の65,000円以下を達成した。
プラズマ加熱処理された超硬合金焼結造粒粉を使用すれば、従来品と同等の耐久性を有するジグを低コストで製造できる可能性を見出した。

実用化に向け、補完研究を実施中
・耐摩耗性向上ための粉体原料の改良と生産体制構築
・プロセス安定性向上のための装置改良
・多用途向けジグ製品化のための品質安定化
・2023年度中の事業化を目指す