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材料製造プロセス

水素タンクからの炭素繊維リサイクルを実現

岐阜県

カーボンファイバーリサイクル工業株式会社

2022年1月26日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 水素タンクからのリサイクル炭素繊維連続巻取り技術開発と中間基材への応用
基盤技術分野 材料製造プロセス
対象となる産業分野 航空・宇宙、自動車、ロボット、産業機械、建築物・構造物
産業分野でのニーズ対応 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(小型化・軽量化)、環境配慮
キーワード 水素タンク・リサイクル、リサイクル炭素繊維、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、脱炭素社会、サーキュラーエコノミー・資源循環社会
事業化状況 事業化に成功
事業実施年度 令和1年度~令和2年度

プロジェクトの詳細

事業概要

 本研究開発では、これまでの航空機組立廃材向けのCFRPリサイクル技術を高度化し「水素タンクを丸ごと熱分解処理する技術」および「熱分解した水素タンクから炭素繊維を連続した長繊維として回収する技術」の開発に取り組んだ。また単に、水素タンクから長繊維状態の炭素繊維を取り出すだけでなく、事業化を見据え、ユーザーが利用しやすいスライバーやペレットなど中間基材化までを目標として開発に取り組んだ。

事業概要
開発した技術のポイント

 本研究開発により水素タンクから炭素繊維を連続した長繊維として回収・再利用することが可能となった。開発した技術のポイントは、以下の通り。
①高密度炭素繊維含有水素タンク熱分解技術の開発(水素タンクを丸ごと熱分解処理する技術)
 -ランニングコストを削減・最小化するための水素タンクに対する熱分解条件の最適化を実現した。
②再生長炭素繊維の巻き取り装置の開発(熱分解した水素タンクから炭素繊維を連続した長繊維として回収する技術)
 -多くの中間基材向けの材料として活用可能な状態である炭素繊維トウが、4~5本束になった状態での「ボビン状への巻取り(長繊維状態での連続巻取り)」を実現した。
③再生長炭素繊維のリサイクル化技術の開発(ユーザーが利用しやすい中間基材化)
 -事業化を含めた中間基材開発については、川下ユーザが最も強い関心を示したことから、ペレット化、特に「短繊維ペレット」向け材料について、先行する形で成果が出ている。

ボビン状への巻取り(長繊維状態での連続巻取り)
短繊維ペレット向け材料
具体的な成果

①高密度炭素繊維含有水素タンク熱分解技術の開発(水素タンクを丸ごと熱分解処理する技術)
 -最適条件下で熱分解技術により回収した炭素繊維の品質とそのムラは、残留炭素率で3~6%、最終目標値の3~11%以内を達成。炭素繊維引張強さ保持率についても、種々の評価手法でいずれも80%以上を実現した。
②再生長炭素繊維の巻き取り装置の開発(熱分解した水素タンクから炭素繊維を連続した長繊維として回収する技術)
 -炭素繊維トウが、4~5本束になった状態での「ボビン状への巻取り(長繊維状態での連続巻取り)」を実現した。
 -炭素繊維トウを一束一束ごとに分繊して巻き取ることができる「より汎用性の高い巻取装置」の開発は今後の課題であるが、装置開発の肝となるような「繊維のかみ合い」という新たな技術課題の存在が明らかになるなど、これまで不明であった巻き剥がしメカニズムに関する新たな知見を得ることができた。
③再生長炭素繊維のリサイクル化技術の開発(ユーザーが利用しやすい中間基材化)
 -m(メートル)級の長さの炭素繊維での活用:再生長炭素繊維を用いた平板での評価は、曲げ強度で1,100MPa超え。引っ張り強さ保持率についても種々の評価方法で80%以上を実現。
 -50cm級の長さの炭素繊維での活用:「スライバー化」については、試作品の品質は着実に向上してきた。その派生技術である「ダイレクト撚糸化」についても、基礎的な生産工程を確立し、撚糸化の目処を立てた。
 -数cm(センチメートル)級の長さの炭素繊維での活用: ロボットアーム等の補強材用途向けとして、評価用サンプルの作成・提供に取り組んだ。
 -mm(ミリメートル)級の長さの炭素繊維での活用:短繊維ペレット向け材料については、東レT700を用いた材料と比較して80%以上の強度実現を確認。「長繊維ペレット」についても、押出成形の基礎試験を実施し、製造条件を把握した。

再生長炭素繊維を用いた平板の強度試験結果
知財出願や広報活動等の状況

2年間の事業期間を通じて以下の展示会へ出展し、本研究開発のPRに取り組んだ。
・令和元年度
 -岐阜県新技術・新工法展示商談会inトヨタ自動車(岐阜県産業経済振興センター 主催)
 -みえ・あいち・ぎふ「新技術・新工法展示商談会」inホンダ(岐阜県産業経済振興センター・三重県産業支援センター・あいち産業振興機構 共催)
・令和2年度
 -ENEX2021(第45回地球環境とエネルギーの調和展)
 -次世代ものづくり基盤技術産業展 TECH Bi EXPO 2021

研究開発成果の利用シーン

 サーキュラーエコノミー・資源循環社会の進展により、自動車や家電製品、産業機械の部品や土木建築資材向けのリサイクル材料として活用が見込まれている。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

 ペレット化、特に「短繊維ペレット」向け材料を中心とした川下ユーザーとの共同開発に注力し、一部開発品については、 令和4年度春ごろ採用の予定である。また、ペレット以外の顆粒状材料については、既に産業機械部品向けの材料として供給実績を得ている。(2021年12月現在)

提携可能な製品・サービス内容

加工・組立・処理、素材・部品製造

製品・サービスのPRポイント

・水素燃料電池自動車(FCV)の水素タンクについては、リサイクル困難であり使用後は埋め立てざるを得なかったが、今回の研究開発により、リサイクル可能となり水素タンクから炭素繊維を連続した長繊維として回収/再利用することが可能となった。
・水素タンク由来のリサイクル炭素繊維は、航空機組立廃材由来の炭素繊維と比べ、熱分解後の付着炭素が少ない。このため樹脂中の炭素繊維の比率が高まり、強度等の物性面で、バージン材に近い高強度を実現できる。
・ペレット向けの材料としてみた場合、水素タンク由来のリサイクル炭素繊維は、連続した長繊維状態から同じ長さに切り揃えることで、長さのバラツキやイレギュラーな長い繊維を防止できバージン材と同じ生産性でペレット化できる。

今後の実用化・事業化の見通し

 2年間の研究の成果として、「短繊維ペレット」向け材料を中心に具体的な事業化を見据えた共同開発の提案を複数社より得ることができ、早期の事業化に向け大きな契機を得ることができた。このためペレット化、特に「短繊維ペレット」向け材料を中心とした川下ユーザーとの共同開発に注力し、早期の販売を目指して事業化を推し進め、一部開発品については、 令和4年度春ごろ採用の予定である。また、ペレット以外の顆粒状材料については、既に産業機械部品向けの材料として供給実績を得ている。(2021年12月現在)
 さらには大手自動車メーカーでは、中国等で現地生産した水素燃料電池自動車(FCV)の水素タンクについては、リサイクルの現地化も検討されていることから、熱分解炉について海外からの注目や引き合いが増えている状況である。これについては、大手商社と連携して商談を進めている。

実用化・事業化にあたっての課題

 「短繊維ペレット」向け材料、顆粒状材料以外での事業化、さらには、究極の目標である水素タンクから水素タンクへの「タンクtoタンク」での水平リサイクルの実現に向け引き続き、以下の課題解決に取り組んでいる。
・炭素繊維トウを一束一束ごとに分繊して巻き取ることができる「より汎用性の高い巻取装置」について、巻きはがしメカニズムに関する知見を活かしつつ、多様化する水素タンク仕様にも対応可能な装置仕様へとブラッシュアップする。
・再生長繊維の物性、ハンドリング性向上に必須の表面処理技術については、これまで得られた成果を元にユーザーごとの最適解を都度検討し、その際には導入した押出し装置を積極的に活用する。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 カーボンファイバーリサイクル工業株式会社
事業管理機関 公益財団法人岐阜県産業経済振興センター
研究等実施機関 学校法人金沢工業大学
守富環境工学総合研究所

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 カーボンファイバーリサイクル工業株式会社(法人番号:8200001018674)
事業内容 炭素繊維リサイクル、再生炭素繊維の販売、活性炭の委託加工、リチウムイオン電池の委託加工、レアメタルの委託加工
社員数 21 名
本社所在地 〒505-0116 岐阜県可児郡御嵩町御嵩2193-102
ホームページ https://cfri.co.jp/
連絡先窓口 RCF事業部長 飯山茂樹
メールアドレス shigeki_iiyama@cfri.co.jp
電話番号 0574-49-9836