精密加工
SiC基板の高レート加工、新しい加工工程の構築
長野県
不二越機械工業株式会社
2023年3月3日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | これからのEV社会に向けたパワー半導体向け革新的研磨装置の開発 |
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基盤技術分野 | 精密加工 |
対象となる産業分野 | 半導体、工作機械 |
産業分野でのニーズ対応 | 高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、高効率化(生産性増加)、環境配慮、低コスト化 |
キーワード | SiCウェハ、パワー半導体、高能率加工、陽極酸化、溶融アルカリエッチング |
事業化状況 | 実用化間近 |
事業実施年度 | 令和1年度~令和3年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
電気自動車(EV)の普及に向けSiCパワーデバイスの量産化と低コスト化が求められている。本研究では、従来の加工工程に代わり、溶融アルカリエッチングを援用した両面加工では、ひずみの無い平行平面ウェハの生産技術を、電解加工と電界砥粒制御を援用した仕上げ研磨では、高レートかつ高品位なスクラッチフリーウェハの生産技術を確立し、大口径に対応した実用装置を開発することで大幅な生産性向上を実現する。
開発した技術のポイント
・電解加工、電界砥粒制御援用研磨装置の開発
-仕上げ研磨へ電解加工の技術を取り入れることで、電解の効果により高硬度なSiCの表面に軟質な酸化膜を生成できるため、SiCの研磨を容易化する。
-電界砥粒制御技術は研磨部へのスラリー引き込み効果を持っており、大口径ウェハや高速回転条件においても、高い加工レートと優れた加工品質が得られる。
-電解加工と電界砥粒制御技術を一つの装置に搭載し交互に用いることで、一つの加工プロセス中に、表面の軟質化と高いレートでの除去加工を行うことができる。
・溶融アルカリエッチング援用 両面加工装置の開発
-溶融アルカリエッチングを用いることで、除去レートは非常に高く、加工変質層も生じない両面加工が可能となる。
-エッチングプロセス中に両面研磨の運動要素を付与することで、高レートかつ加工変質層を持たない、平坦な平行平面ウェハの創生技術を開発する。
-溶融アルカリエッチングは600℃以上の溶液を用いるため、装置の安全性、作業性を高め、SiCの加工工程全体の生産性を向上させる。
具体的な成果
・電解加工・電界砥粒制御 援用研磨装置
-電解加工と電界砥粒制御の2つの電極を搭載した研磨ヘッドを試作した。2つの回路間の絶縁技術、双方の機能の切替え技術を確立した。
-電解加工と電界砥粒制御技術を交互に援用可能な予備試験機を製作した。電解加工と研磨の組合せにより1.5倍、電界砥粒制御と研磨との組
合せにより1.2倍の研磨レートを得た。
-専用スラリーと専用パッドを用い電解援用加工を行い、6インチSiCで4.26μm/hの高いレートを得た。
-電解加工用の専用スラリーと専用パッドを用いて、1.4倍の研磨レートを得た。
-6インチ対応の電界砥粒制御と電解加工の援用機能を搭載した多軸研磨試験装置の設計製作を行った。4インチウェハの2軸同時加工を行い、既存の研磨装置(SLM-140H)と同等の研磨レートと研磨精度を得た。
・溶融アルカリエッチング援用両面加工装置
-装置内エッチング部の温度を700℃以上に維持するための断熱構造技術、加工部材の熱変形を抑制する技術を確立した。
-ウェハの仕込み取り出し機構、エッチング液の管理メンテナンス機能を備えた、2インチ用の溶融アルカリエッチング援用の加工試験装置を設計製作した。
-2インチウェハの溶融アルカリエッチングの加工レートは50~200μm/hと目標を達成した。
知財出願や広報活動等の状況
2021年度砥粒加工学会学術講演会にて、E40「高速研磨装置における電界スラリー制御技術の適用」として発表。
2021年度砥粒加工学会学術講演会にて、A06「陽極酸化を利用したSiCウェハの高能率電気化学機械研磨(ECMP)法の開発-断面TEMによる加工歪の評価-」として発表。
研究開発成果の利用シーン
SiCパワー半導体産業は、今後の世界的発展が約束された分野である。今回実施された戦略的基盤技術高度化支援事業は、SiCパワー半導体製造において中核となる研磨技術に関するものである。本事業の成果は、今後の実用化をするうえで非常に重要な研究成果である。
今回の戦略的基盤技術高度化支援事業で取り組まれた研究開発は、SiCウエハの高品質化、低コスト化に繋がるものである。
今回の成果をベースに、製造装置を完成、販売され、SiCパワーデバイスの普及に貢献できる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
6インチウェハ対応の多軸研磨装置は、すでにユーザーからテスト要望が届いている。
予備試験機である単軸装置は量産化は難しいが、研究開発用途や少量生産用途の試験装置としての受注生産は可能である。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、試験・分析・評価、試作機でのテスト加工
製品・サービスのPRポイント
電気自動車(EV)の普及にはSiCパワーデバイスの量産化、低コスト化が求められている。
本事業では、両面ラッピング工程に代わる技術として、溶融アルカリエッチングを援用した両面加工技術を用い、除去レートの向上だけでなく、通常のエッチングでは達成できない平行平面を創生する。
エッチング加工では新たな変質層が生まれず、次工程の負担の大幅な低減につなげる。
また、仕上げ研磨に代わる技術として、高速高圧研磨と電解加工技術と電界砥粒制御技術との融合技術を用いる。
これらの技術を搭載した複合研磨装置を設計開発し用いることで、従来の総加工時間を1/3に短縮し、ウェハの量産化、低コスト化へ寄与する。
今後の実用化・事業化の見通し
開発した試験装置やデモ機を利用してユーザーテストを受け付け、ユーザーごとの要望に応じてカスタマイズした装置の販売を目指している。
試験装置の完成発表を2022年9月と定めて研磨試験を進めている。
エッチング試験機は溶融アルカリエッチングの安全な試験装置として完成を目指す。2023年を目標に2インチウェハ用のデモ機完成を目指している。
商品化と装置販売は4インチウェハ対応以降を想定している。
実用化・事業化にあたっての課題
・試験装置
-試験装置は2軸だが、量産向けの4軸化や、定盤径のサイズUP、自動仕込み取り出し機能付きなどのバリエーション追加を想定している。
・予備試験機
-商品化のために、電解加工用のスラリー、パッド、共通電極定盤などの実用化が必要となる。
・エッチング試験機
-溶融アルカリエッチングの安全な試験装置として完成を目指す。エッチング部の温度管理、断熱構造、液量管理などの技術確立を進める。
事業化に向けた提携や連携の希望
開発した試験装置やデモ機を利用したテスト加工が可能です。研磨試験装置は8インチウェハまで対応可能です。SiCだけでなくGaNなど難加工材料の研磨も対応可能です。テスト評価をいただき、ユーザーごとの要望に沿って装置やオプションをカスタマイズ対応いたします。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 不二越機械工業株式会社 開発研究部 |
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事業管理機関 | 公益財団法人長野県産業振興機構 長野センター |
研究等実施機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 パワーエレクトロニクス研究センター 加藤智久、河田研治 秋田県産業技術センター 先進プロセス開発部 久住孝幸 国立大学法人埼玉大学 大学院理工学研究所 池野順一 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 不二越機械工業株式会社(法人番号:1100001002967) |
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事業内容 | 生産用機械器具製造業 |
社員数 | 202 名 |
生産拠点 | 本社工場 |
本社所在地 | 〒381-1233 長野県長野市松代町清野1650 |
ホームページ | http://www.fmc-fujikoshi.co.jp |
連絡先窓口 | 不二越機械工業株式会社 開発研究部開発研究課 宮下忠一 |
メールアドレス | tadamiya@fmc-fujikoshi.co.jp |
電話番号 | 026-261-2000 |
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