文字サイズ
標準
色の変更

研究開発された技術紹介

  1. トップ
  2. 研究開発技術検索
  3. 軸ガタ検出機能付高精度磁気式エンコーダの開発

機械制御

軸ガタ検出機能付高精度磁気式エンコーダの開発

長野県

多摩川精機株式会社

2024年12月5日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 回転軸の軸ガタ検出機能を付加した自己校正型ロータリエンコーダの開発
基盤技術分野 機械制御
対象となる産業分野 ロボット、工作機械
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高性能化(精度向上)
キーワード 軸ガタ検出、自己校正、磁気式ロータリエンコーダ、故障予知、精密角度計測
事業化状況 事業化に成功し継続的な取引が続いている
事業実施年度 平成28年度~平成30年度

プロジェクトの詳細

事業概要

角度誤差検出と軸ガタ検出機能を持ち合わせるインテリジェントな「軸ガタを検出する機能を付加した高精度な歯車型磁気式ロータリエンコーダ」を実用化することにより、過酷環境下で利用される工作機械のモータ主軸の角度制御の高精度化と継続的な故障予知による寿命管理技術に資する研究開発を行う。

開発した技術のポイント

自己校正型高精度ロータリエンコーダの開発を行った。
・±10秒以下で角度精度が保証された回転制御により高精度な加工が可能となる。
・位置検出精度の向上により工作機械制御の高剛性化・静音化・低振動化につながる。
・軸ガタの1μmの変化を常時測定することで、主軸モータ軸受の保守時期の把握が可能となり工作機械・工具の寿命管理、生産工程の改善につながる。
・軸ガタの1μmの変化を常時測定することで、工作機械の故障予防となり、工作機械の信頼性、作業の安全性に寄与する。
・軸ガタ量の変化の把握により、主軸モータの最高回転数の制限を更に上げ高速化に寄与でき、加工効率を向上することができる。
・小型化が可能なため、従来の磁気式エンコーダと置き換え可能なため、低価格で加工精度と加工効率が向上した高機能な工作機械に変えることができる。
・高精度な光学式エンコーダと同等レベルの精度を実現したことにより、より耐環境性・信頼性の高い本高精度磁気式エンコーダに置き換えが可能である。

具体的な成果

・角度自己校正のセンサの開発
‐ロータリエンコーダの自己校正技術を導入し、歯車の周りに3個以上のマルチヘッドセンサユニット化した歯車型磁気式ロータリエンコーダを製作し、川下製造業者の主軸モータに搭載されている現状センサ直径と同等のΦ130mm程度の小型としながら、自己校正原理評価装置による測定にて±10秒以内の角度の高精度化を達成した。
・軸ガタのセンサの開発
‐3個以上の複数個のセンサが出力する角度情報から、角度誤差と軸ガタ情報を分離する軸ガタ検出原理を確立し、軸ガタ検出原理評価装置を用いた軸ガタ検出機能の評価にて、軸ガタ量1μm~数100μmの検出感度を達成した。
・自己校正方式と軸ガタ検出の両用センサの開発
-角度自己校正と軸ガタのセンサの研究結果を用いて、自己校正方式と軸ガタ検出の両用可能なセンサの商品構成案の検討・設計を行い、試作品を製作した。試作品にて、角度精度の更なる向上を図るため高精度化にて考案した方式による調整の実施と安定した高精度を確保するための安定化回路を開発し精度評価を行った。軸ガタ検出は、新規開発の「軸ガタ表示器」と川下製造業者製造の実機モータにて検出した軸ガタ発生量とを比較し同等であることを確認した。また、より定量的な測定が可能なレーザ測長機による軸ガタ試験機を製作・評価し、同等であることを確認した。
・小型・低価格化商品開発
‐角度の高精度化と軸ガタ検出機能を内蔵した歯車型磁気式ロータリエンコーダを、10万円以下で製品化する技術を確立した。また、量産に向けた更なる小型化、低価格化の方法として、信号処理回路の収納容積を最大限簡素化する回路基板のコスト低減となる ASIC(特定用途向け集積回路)化に向け、回路開発を行った。

開発した自己校正原理評価(角度精度測定)装置
角度±10秒を達成した歯車型磁気式ロータリエンコーダ
開発した軸ガタ試験装置
軸ガタ検出感度1 µm
開発したレーザ測長機による軸ガタ試験機
1次試作製品形状外観
知財出願や広報活動等の状況

・ISMTII2017論文
Evaluation of high accuracy gear-type magnetic rotary encoder
Tsukasa Watanabe1,a,#, Yoshinori Watanabe2,b , Yasuharu Onuki2,c,
Takashi Fujimoto3,d, Katsunori Shimodaira3,e and Kenichi Tamura3,f
・産総研特許・・・1件準備中

研究開発成果の利用シーン

非球面レンズなどの小型自由曲面形状から、航空機部品や自動車部品、金型などの大型で複雑な特殊曲面形状の加工において用いられる、絶対値角度の高精度化と軸ガタ検出機能を持ち合わせるインテリジェントな「軸ガタを検出する機能を付加した高精度な歯車型磁気式ロータリエンコーダ」を実用化することにより、過酷環境下で利用される工作機械の主軸モータや回転テーブルの角度制御の高精度化と継続的な故障予知による寿命管理技術に寄与する。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

川下製造業者2社への搭載に向け試作開発を行っている。
1社目は、工作機械主軸(スピンドル)モータ搭載用、2社目は、回転テーブル搭載用として、共に割出角度の高精度化、軸ガタ検出機能による故障予知、信頼性向上に向け試作開発中である。

川下製造業者製モータに搭載した歯車型磁気式エンコーダの1次試作
提携可能な製品・サービス内容

加工・組立・処理、素材・部品製造

製品・サービスのPRポイント

耐環境型歯車型磁気式エンコーダの絶対値角度精度を10秒以内に向上したことにより高精度な加工が可能となる。また、マシニングセンタなどの多軸工作機械にて角度の高精度制御の必要なC軸等へ、光学式エンコーダに取って代わり
・工作機械・工具の寿命管理、生産工程の改善につながる。
・工作機械の信頼性、作業の安全性に寄与する。
さらに、軸ガタ機能付きエンコーダを付加したことで工作機械は加工精度を向上させると同時に、工作機械の保守時期の把握が可能であり加工作業の効率化が期待できる。その結果工作機械ユーザーである加工業者の競争力の向上をもたらす。また、加工精度と加工効率の向上は製品の高品質化、低価格化をもたらし、川下製造業者の競争力も向上が期待できる。
また、本研究開発の成果物は広く一般に産業用モータの軸ガタ検出に転用可能である。産業用モータを内蔵する車両、風車、ロボット、発電機などの回転精度を高精度化し、軸ガタを検出する需要は大きい。本研究開発の新技術を産業用モータに使われている歯車型磁気式ロータリエンコーダに広く転用することにより、川下製造業者は高性能で競争力のある製品を製作できる。またユーザーにとっては回転軸の軸ガタを常時検知することで、故障予防、寿命管理費用の低減化、省エネ効果が期待できる。

ISMTII西安論文2017_ページ_1
ISMTII西安論文2017_ページ_2
ISMTII西安論文2017_ページ_3
ISMTII西安論文2017_ページ_4
ISMTII西安論文2017_ページ_5
今後の実用化・事業化の見通し

研究開発内容に関する海外を含めた外部の取組状況の調査、本研究成果の開発製品事業化に向けた市場及びその妥当性の調査、国内外客先訪問打合せなどによる調査など外部資源を積極的に活用しながら、今後のグローバルな拡販可能な事業化を見据え、学会研究発表などで研究内容やその成果を世界発信している。・市場動向調査により、新たな回転テーブルの海外市場物件も掘り出すことができ、事業化を広げ始めている。

実用化・事業化にあたっての課題

本研究成果物である高精度化、軸ガタ検出の更なる能力の向上に加え、精度の高い軸姿勢誤差までも検出可能な機能を付加することにより、さらに広く、多くの市場への展開を計るべく研究を開始している。研究課題のハードルは高い。

事業化に向けた提携や連携の希望

事業化をさらに確実なものとするため、新たに実施している研究への川下製造業者の参画を計画している。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 多摩川精機株式会社 第二事業所
事業管理機関 公益財団法人長野県テクノ財団 伊那テクノバレー地域センター
研究等実施機関 エ・モーションシステム株式会社 開発部
国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター 工学計測標準研究部門

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 多摩川精機株式会社(法人番号:6100001022548)
事業内容 電子部品・デバイス・電子回路製造業
社員数 645 名
生産拠点 多摩川精機株式会社第二事業所
本社所在地 〒395-8515 長野県飯田市大休1879番地
ホームページ https://www.tamagawa-seiki.co.jp
連絡先窓口 多摩川精機株式会社技術品質統括部 認証支援課
メールアドレス kenichi-tamura@tamagawa-seiki.co.jp
電話番号 0265-21-1910