表面処理
ノズルから噴射される原料粉をターゲット板に衝突させ、その場で生成されるナノ活性種を基板上に成膜させる新規エアロゾル化ガスデポジション装置
茨城県
有限会社渕田ナノ技研
2021年2月19日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 高い絶縁破壊電界強度を持ったナノ構造セラミックス成膜技術の研究開発 |
---|---|
基盤技術分野 | 表面処理 |
対象となる産業分野 | 環境・エネルギー、航空・宇宙、自動車、産業機械、電池、半導体、エレクトロニクス、化学品製造 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加) |
キーワード | エアロゾル化ガスデポジション、静電プラズマ、スパッター、ターゲット板、高絶縁膜 |
事業化状況 | 事業化に成功し継続的な取引が続いている |
事業実施年度 | 平成26年度~平成28年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
新規エアロゾル化ガスデポジション(AGD)装置を使用し、高い絶縁破壊電界強度を持つセラミックス被覆膜形成技術を開発する。摩擦帯電された粒子を利用した成膜方法で、プラズマ中で生成されるナノ粒子・ナノ活性種形状が緻密に結合したナノ構造の膜ができる。成膜条件を最適化させることにより、アルミナ被覆膜の絶縁破壊電界強度としてバルク体の20倍の3MV/CM以上で、かつその成膜速度がスパッタ法の20倍の200NM/MIN以上となる成膜技術を研究開発する
開発した技術のポイント
・高い絶縁破壊電界強度を持つセラミックス被覆膜形成技術を開発し、かつその成膜速度の高速化を目指した
-絶縁破壊電界強度:3MV/cm(アルミナ膜)、成膜速度:200nm/min以上(常温成膜)
・新技術;ターゲット方式エアロゾル化ガスデポジション(T-AGD)装置
・新技術の特徴;外部から原料微粒子を装置内に導入し、一度ターゲット板に衝突させて、帯電した粒子が誘発するプラズマ場中で、生成したナノ活性種を基板上に成膜させる。形成膜中への原料粉の混入を極力避け、緻密に結合したナノ構造膜のみを形成するセラミックスの常温成膜の方法。
具体的な成果
・高い絶縁破壊電界強度のアルミナ成膜
‐ターゲットの角度:120度が最適
‐ノズル入射角度:60度が良好であった
‐ターゲット-基板間距離:25mm、50mmで良好
‐以上の条件で、2MV/cm(ターゲット材:ステンレス鋼)を達成した(100mm角の成膜)
・アルミナ膜の成膜速度(200nm/min)の検討
‐ターゲットの角度:プラズマ領域の広がりから120度が最適であった
‐ノズル入射角度:60度が良好であった
‐ターゲット材質:ステンレス鋼が良好であった
‐ターゲット-基板間距離:25mm、50mmで良好
‐エアロゾル化容器の真空加熱:800℃まで加熱処理できることを確認し、300℃の真空加熱処理後のガス導入で、アルミナ膜の成膜処理は十二分であった
‐上記条件で、成膜速度750nm/minを達成した(100mm角の成膜)
知財出願や広報活動等の状況
・論文(粉体粉末冶金協会 平成26年度技術進歩賞)
-Eiji FUCHITA, Eiji TOKIZAKI and Eiichi OZAWAi, ""Progress Film Forming Technique by the Aerosol Gas Deposition Method (History, Mechanism and Practical Application)"", J. Jpn. Soc. Powder Powder Metallurgy, 63 (2016) 937-946.
・特許
-名称;成膜方法、成膜装置、出願番号;特願2014-258652、特許番号;6485628
-名称;成膜方法、成膜装置および構造体、出願番号;米国14/626,220、特許番号;US 9,752,227
-名称;成膜方法、成膜装置および構造体、出願番号;韓国10-2015-0018661、特許番号;韓国10-1671097
-名称;成膜方法、成膜装置および構造体、出願番号;中国20150292827.9、特許番号;中国ZL201510292827.9
-名称;成膜方法、成膜装置および構造体、出願番号;欧州15 168 657.3、権利化が許可され、独、英、仏へ登録処理中
・新聞
-2015年3月18日、日刊工業新聞27頁、常温で絶縁膜を高速成膜する静電誘導プラズマ技術を開発(日本セラミックス協会発表)
-2018年3月8日、日刊工業新聞 30頁、第43回発明大賞「考案功労賞」受賞、静電誘導プラズマ場中セラミックスの常温・高速成膜技術
-2018年4月11日、日刊工業新聞 17頁、第30回中小企業優秀新技術・新製品賞「奨励賞」受賞、静電誘導プラズマセラミックス成膜装置
・学会発表
-2015年春 応用物理学会
-2015年春 日本セラミックス協会
-2015年春 粉体粉末冶金協会
-2016年春 粉体粉末冶金協会
-2019年秋 粉体粉末冶金協会講演概要[1]、図1マスク付きターゲット方式AGDの機構配置図[2]、図2B マスク付きT-AGDによるアルミナ膜のI-V特性[3]
・雑誌
-第53回機械振興賞受賞者業績概要、13頁[4]
研究開発成果の利用シーン
・高い絶縁破壊電界強度の被覆膜の形成装置
-形成膜への原料粉などの混入を避ける
-緻密なナノ粒子構造の膜形成が可能
-絶縁破壊電界強度がバルク体の20倍以上大きい
-ターゲット材質を任意に選定でき、交換も可能
-市販の原料粉が使用可能・遮蔽コーティング膜の形成装置
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
・有償試作T-AGD成膜処理
-アルミナ絶縁膜、遮蔽コーティング膜、耐熱バリアー膜などの試作成膜処理、10件
・T-AGD実験機の製造・販売
-遮蔽コーティング膜形成T-AGD実験機の製造・販売1台
-T-AGDへ追加改造できるAGD実験機の製造・販売1台
・引き合い状況
-アルミナ膜、ジルコニア膜などの有償試作成膜処理への引き合い、10件
-T-AGD実験機への引き合い、7件
-受託成膜処理用の実用化TM-AGD機への引き合い、数件
提携可能な製品・サービス内容
製品製造、共同研究・共同開発、技術ライセンス
製品・サービスのPRポイント
・静電荷電されたセラミックス微粒子が誘発するプラズマ中で活性種を生成し、その活性ナノ種のみを利用する新規成膜方法を考案し、ターゲット方式AGDと命名した。従来法のノズル方式AGDに比べ、成膜内に原料粉が混入しない、セラミックスの微細ナノ粒子の緻密膜が常温で形成できる
・薄くて高い絶縁破壊電界強度のアルミナ膜が高速で成膜可能。
絶縁性:バルク体の10倍以上
成膜速度:スパッタの100倍以上。
競合技術であるスパッタ法では成膜速度が遅く、実用化できなかった分野など、その適用分野は多岐にわたる。例えばアルミナ、ジルコニアなどの成膜分野への利用が可能となる
・スパッタ法に比べて、プラズマを発生させる高圧電源が不要である。また、成膜圧力が200Pa程度で、排気系として高価なターボ分子ポンプなどが不要である。これらのことより、消費電力量が少なく、かつ装置コストが抑えられる
今後の実用化・事業化の見通し
・展示会(イノベーション・ジャパン、Nanotech展)、ビジネスマッチング(NEDO、東京・大阪)、イノベーションリーダーズサミットなどに参加してきた。顧客への技術PR、およびAGD装置に求められる仕様の確認に努めている
・日本セラミックス協会、粉体粉末冶金協会の学会発表や論文投稿も続けている。粉体粉末冶金協会の技術進歩賞を受賞した
・日本発明大賞、中小企業優秀新技術・新製品賞、機械振興賞などに応募し、受賞した。企業および本成膜技術のPRになったと考えている
・多くの川下企業から試作成膜処理を請け負い、特性評価をいただいている。アルミナ絶縁膜、遮蔽コーティング膜、耐熱バリアー膜などの分野である。装置値への引き合いも多いが、すでにT-AGD実験機の販売を行っている。受託成膜処理用などの実用化TM-AGD機への引き合いもいただいている。成膜材質はアルミナ膜、ジルコニア膜の検討が多くなっている
実用化・事業化にあたっての課題
弊社の現状の事業規模では、生産機の製造は2台/年程度と考えられる。人的・設備的増強を図ったとしても、急激な対応は難しいと判断しており、ライセンス先での製造を考える。特に弊社での対応が難しい海外販売に関して、あるいはまた、製造数量の拡大に伴い、ライセンス販売が増大すると考えている
事業化に向けた提携や連携の希望
渕田ナノ技研が零細企業であるがゆえに、人的制約が付きまとう。人員数、海外対応スキルなどに懸念がある。その懸念の払拭のために、新たな業務提携によりAGDビジネスを実施していただける企業を募ったところ、国内数社から提携に向けた打診を受けている。新規市場対応の装置仕様には、新規設計を伴うものが少なくなく、その対応が図られるものと考えている。
また、ライセンス契約済みの㈱アルバックには、すでに米国へのAGDの販売を2台実施いただいている。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 有限会社渕田ナノ技研 つくば事業所 |
---|---|
事業管理機関 | 株式会社つくば研究支援センター |
研究等実施機関 | 国立大学法人筑波大学 喜多英治、谷本久典 |
アドバイザー | ・(国)物質・材料研究機構 目義雄氏 ㈱アルバック 村上裕彦氏 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 有限会社渕田ナノ技研(法人番号:2040002059153) |
---|---|
事業内容 | エアロゾル化ガスデポジション装置等、受託試作成膜 |
社員数 | 3 名 |
生産拠点 | 茨城県つくば市 |
本社所在地 | 〒305-0822 茨城県つくば市苅間1561-3 |
ホームページ | http://www.nanotechepd.com |
連絡先窓口 | 渕田英嗣 |
メールアドレス | e.fuchita@nanotechepd.com |
電話番号 | 029-856-3935 |
研究開発された技術を探す