研究開発された技術紹介

炭素繊維複合材料(CFRP)は軽量で高強度な構造材料として、航空機への適用が本格的に開始されているが、同様な軽量化が嘱望され大きな需要が見込まれる自動車への適用は、期待したほど進展していない。これには熱硬化性タイプでは成形時間が長く量産性に乏しいことが足枷となってきた。本提案は、量産性に優れる熱可塑性タイプを用い、車載用大型複雑形状製品を既存の金属プレス機で製造する技術の確立を目的とする

熱可塑性樹脂からなるCFRPのプリプレグシートを積層・組合せ構造により、最終製品形状に最適なスタンパブルシートを作製して金属材料に用いていた従来のプレス機を活用し、プレス成形を可能にする
(新技術)
CAE解析を併用して、熱可塑性樹脂からなるCFRPの、成形性のよい大型のスタンパブルシートの設計・製造を行った
(新技術の特徴)
・金属材料と同様のプレスマシンで成形が可能なため、加工が容易で低コスト化が図れる
・大型、複雑形状の成形に短時間で対応可能となった

・CAE成形解析技術用材料特性の計測
‐従来の金属材料と同水準でCAE解析を可能とする材料特性の計測技術を確立した
・CAE成形解析技術によるスタンパブルシートの設計
‐CAE不良推定箇所と実成形不良箇所が一致
・大型スタンパブルシートの作製
‐1,000mm×1,500mmの寸法のスタンパブルシートを曲げ強度600MPa以上の品質で成形できる技術を確立した
・複雑形状製品の金型の設計と成形条件の設定
‐800mm×1,200mm×80mm相当の大型複雑形状製品を60秒以内に成形できる技術を確立した

熱可塑性CFRPを用いた大型複雑形状製品のプレス成形(試作・共同開発)と金型設計

・大幅な作業性の向上とコストダウンが見込まれる技術を確立した
・自動車用バックドアとフロアパネルの大型複雑形状製品の成形に成功した

・軽量かつ高強度な熱可塑性CFRPでできた、大型スタンパブルシートの成形加工により、自動車の燃費向上に貢献
‐CAE解析を併用することで、不良箇所の予測可能
‐成形成功率が高い(一発立ち上げ可能)
‐自動車フロアー部品(右図)の重量が約1kgで成形可能
‐成形時間が約50秒で完了
‐熱可塑性樹脂からなるCFRPの大型複雑形状製品を、既存のプレス機を活用したプレス成形により、簡便かつ短時間に低コストで生産できる
・自動車部品に限らず多様な分野へ展開が可能
‐800mm×1,200mm×80mm相当の大型複雑形状製品を成形できるため、自動車分野だけでなく航空宇宙分野やロボット分野など様々な分野への展開が期待される

以下の研究課題を解決し、自動車分野だけでなく航空宇宙分野やロボット分野への市場の拡大を図る
(1)射出成形によりリブおよびボス形状を形成する複合成形技術の大型成形品への技術適用
(2)熱可塑性CFRP部品を金属部品の置換材料として適用するための信頼性を確認および向上する技術
(3)金属部品と同様にピアス加工あるいはトリム加工が可能な金型の設計製作技術
(4)熱可塑性CFRPのプレス成形前後の内部欠陥を簡易的に評価する技術