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研究開発された技術紹介

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精密加工

国際競争力のある小型ロケット開発のための、ロケットエンジン用小型ターボポンプの技術確立

北海道

インターステラテクノロジズ株式会社

2025年1月27日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 低コスト小型ロケット製造販売のための低コスト・小型ターボポンプの研究開発
基盤技術分野 精密加工
対象となる産業分野 航空・宇宙
産業分野でのニーズ対応 高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(生産性増加)、低コスト化
キーワード ロケットエンジン、ターボポンプ、動的設計手法、CAE、CAM
事業化状況 研究実施中
事業実施年度 令和3年度~令和5年度

プロジェクトの詳細

事業概要
システム試験に供した試作ターボポンプの外観

小型ロケットによる低コストな打上げサービス提供のため、ロケットエンジンの中でも開発難易度が高く、開発リスクやコストへのインパクトが大きい部品であるターボポンプを研究開発の主目的とした。開発上のリスクである軸振動に着目した形態設計を行い、それを低コストで実現するため拡散接合や積層造形といった加工技術を取り入れ、治工具を活用しながら効率的な製造手法の確立を実証した。有害な軸振動が発生せず、想定通りの能力が実現されることをターボポンプシステム試験で確認した。

開発した技術のポイント

・ターボポンプの形態設計において動的設計手法を採用し、各翼素の性能と軸振動リスクの低減を両立
・CAM/CAEを活用し、設計の早期段階から性能や耐久性と加工工数の節約とを両立
・切削部品には専用治具を開発/活用し、要求精度を満足する試作品を製造
・複雑な形状を持つ部品には、初期形状の製造に金属3Dプリンタを活用することで、コスト削減と効率化を実現
・燃料インペラには拡散接合技術を用いることで、切削加工のみでは製造が難しい形状を実現し、流体力学的性能を実現
・要素試験やシステム試験を通じて、ターボポンプが設計通りの性能を発揮し、設計意図通り有害な軸振動が発生していないことを確認

具体的な成果

成果1. 製造方法の実証および加工ノウハウの蓄積
 燃料インペラは切削のみでは製造が難しいため、拡散接合技術を組み合わせた低コストの製造手法の適用を目指して試作した。ケーシングは、切削で製造できない部分に新規技術である3Dプリンタを適用し、FEAを用いた強度評価とCAMによる製造性評価を組み合わせて製造手法の開発を進め、製造した試作部品によるシステム試験を完了した。
成果2. 製造した試作品を用いた流体要素試験
試作が完了している実機サイズのインデューサとインペラを組み合わせて機能・性能の確認試験を実施した。また、インデューサの昇圧性能試験と吸込性能試験を実施し、良好な結果を得た。
成果3. ターボポンプのシステム統合試験
製作した小型ターボポンプの動作試験を実施した。試験は2つのシリーズに分け、第1シリーズでは液体酸素の代わりに液体窒素をターボポンプの作動流体に使用して試験を実施、その後、第2シリーズで作動流体を液体酸素に使用して試験を実施した。試験では目標回転数に到達、軸受、シール機構が正常に機能している事を確認し、ポンプ吐出性能の良好な結果を得た。

知財出願や広報活動等の状況

ターボポンプに関連する知的財産は、技術流出を防ぐため、特許出願ではなく、論文発表や秘匿技術として保護されている。これまでに、計11件の学協会での発表や技術論文の公開を通じて、技術力のPRを積極的に行い、産業界や学術界での認知度を向上させている。特に、学術的に重要な技術や設計手法に関しては、技術的価値をアピールしつつ、協力企業や川下企業との連携を深めている。以下に代表的な事例のみ抜粋して記載する。
・内海政春、稲川貴大ほか、宇宙輸送のイノベーションにおける学術界とNew Spaceの連携の良好事例、第67回宇宙科学技術連合講演会
・液化酸素ー液化メタンを推進剤とした民間企業による小型ターボポンプの開発、森田、ターボ機械(第50巻70号)
・ロケット用ターボポンプを対象とした機能構造展開による1Dモデリング支援、岸本、1DCAE・MBDシンポジウム2022
・軌道投入用小型ロケットに向けた一軸式小型軽量化ターボポンプの大学における研究開発、内海、第66回宇宙科学技術連合講演会
・小型軌道投入ロケット用ターボポンプインデューサの不安定現象とその可視化、迫、第61回航空原動機・宇宙推進講演会

学協会における成果の発表例
研究開発成果の利用シーン

開発された低コスト小型ターボポンプは、主に小型衛星の打上げに利用される。この技術により、従来は大型衛星用ロケットに相乗りするしかなかった小型衛星の打上げが、専用の小型ロケットで効率的に行えるようになる。これにより、打上げスケジュールや軌道の自由度が大幅に向上する。また、低コストでの打上げが実現し、打上回数の増加が期待されるため、通信やリモートセンシング、科学観測など、多様な産業分野での活用が進むと見込まれる。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細
小型衛星打上げ用ロケット「ZERO」

小型衛星打上げ用ロケット「ZERO」の打ち上げに向け、機体および打上げ設備の開発を順調に進めている。今後、自社内生産設備・試験設備の拡充および更なる試験の実施を行い、事業化を推し進めていく。

提携可能な製品・サービス内容

製品製造、輸送サービス

製品・サービスのPRポイント

本研究開発で得られた成果を元に、従来まで基幹ロケットの相乗り打上げに頼らざるを得なかった小型衛星が打上げ軌道や打上げ時期を自由に選択でき、かつ低コスト化により打上げ頻度を大幅に増加することができるため、小型衛星の開発や利活用はますます活性化すると考えられる。今後、小型衛星システムの利活用分野と考えられている通信、技術実証、安全保障、リモートセンシング、科学観測やエンターテイメント分野による新市場創造が加速し、我が国における全産業の国際競争力向上につながる。

今後の実用化・事業化の見通し

小型ロケット(ZERO)における輸送サービスの提供をするための設備投資や追加の研究開発を実施している。今後の予定として、エンジンシステムを自社で生産するための設備構築(北海道大樹町・帯広市)、エンジンシステムの開発試験・生産試験を自社で行うための試験設備構築(北海道大樹町)などを進めていく予定である。
量産に向け取り組みは、ターボポンプも含むロケット全体を対象に量産化のボトルネックとなり得る各種部品の生産について、部品供給メーカ・製造メーカと協力しながらサプライチェーン強化に向けた活動を実施していく予定である。
また営業面においても、販路開拓のための体制を拡充、増員し、海外も含めた商談機会を増加させ確実な事業遂行を推進している。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 インターステラテクノロジズ株式会社
事業管理機関 国立大学法人室蘭工業大学 研究推進課研究支援係
研究等実施機関 株式会社IHIエアロスペース
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 インターステラテクノロジズ株式会社(法人番号:5010401080445)
事業内容 ロケットの開発・製造・打上げサービス
社員数 113 名
本社所在地 〒089-2113 北海道広尾郡大樹町字芽武149-7
ホームページ https://www.istellartech.com/
連絡先窓口 岡島欣哉
メールアドレス yoshichika.okajima@istellartech.com
電話番号 01558-7-7330