精密加工
車載用をはじめ、最先端IoT用半導体デバイスの故障解析用試料の作製を目的として、自社技術の吸引プラズマ法を高精度化し、100 μmオーダーの厚さを持つSi基板を、配線を破壊することなく可視光線が透過する1 μm程度に薄膜化する装置を開発する。本装置により、デバイスメーカが求めていた、可視光レーザーを用いたデバイス内部の非接触測定が実現し、IoT分野のデバイス開発における国際競争力の維持に貢献する。
茨城県
株式会社三友製作所
2022年1月10日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | IOTデバイス故障解析用プラズマ精密深掘り装置の開発 |
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基盤技術分野 | 精密加工 |
対象となる産業分野 | 自動車、情報通信、スマート家電、半導体、エレクトロニクス |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(精度向上)、低コスト化 |
キーワード | プラズマエッチング、深掘り、透過光、シリコン、故障解析 |
事業化状況 | 事業化に成功 |
事業実施年度 | 平成30年度~令和2年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
吸引プラズマは低残渣で局所的な加工を比較的低価格かつ小型の装置で実現する長所を有するが、シリコンの精密深掘りという川下産業からの最新要求に対しては、エッチングの再現性に課題が残っていた。また吸引プラズマにおける深掘り固有の問題として、深掘りにおいてはレシピを慎重に作らないと有機物の残渣が発生する現象を見出してきた。そこで本研究では、エッチングの再現性、残渣の低減を実現し、かつ高機能化・精密化した吸引プラズマエッチング装置の開発を行った。
開発した技術のポイント
自社技術の吸引プラズマ法を高精度化し、半導体デバイスの裏面側のSi基板を、配線を破壊することなく可視光線が透過する1㎛程度に薄膜化する技術を開発した。本装置により、デバイスメーカが求めていた、可視光レーザを用いたサブミクロン配線の非接触故障解析用試料加工が可能となり、IoT分野のデバイス開発における国際競争力の強化に貢献する。
具体的な成果
・薄型化加工技術の開発
-基板厚さ300㎛の実デバイスをSi基板側からエッチングし、残渣、傷なしに配線/基盤界面から1㎛の部分でエッチングを終了する技術を開発した。これにより、光学的手法でもサブミクロン単位の配線故障解析が可能となる。
・川下ユーザ評価用精密深掘りエッチング装置の試作
-開発した薄膜化技術をもとに、川下ユーザ評価用精密深掘りエッチング装置を試作した。試料台の稼働により、最大4インチ四方の試料をスキャン加工できる。
知財出願や広報活動等の状況
基本特許は取得済み、または公開済み
・特許第5294816号:「顕微鏡付吸引型局所マイクロプラズマエッチング装置」発明者:新堀俊一郎、他2名 出願人:株式会社三友製作所
・特許第5828198号:「プラズマエッチング装置およびプラズマエッチング方法」発明者:清水哲夫、他5名 出願人:独立行政法人産業技術総合研究所、株式会社三友製作所
・特許第6650799号:「プラズマエッチング装置」発明者:清水哲夫、他7名 出願人:国立研究開発法人産業技術総合研究所、株式会社三友製作所
ただ、本事業により新たな知財が出るため、これらを周辺特許として出願することで独自技術性を高めて装置販売へ活かす。ただし、本知財は装置販売を優先とし、ライセンス化は現在の所は計画をしていない。
研究開発成果の利用シーン
1.微細構造を持つため、故障解析において表面からの配線露出が困難なLSIに対し、LSIの故障個所を特定する手段として利用される。
2.配線を露出したくないシリコンデバイスを可視光を用いて故障解析するための試料前処理に利用される。
3.MEMSデバイスなどハイブリッドなデバイスを部分的にエッチングし調整する目的に利用される。
4.各種デバイスの要素試作に利用される。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
川下ユーザへの評価用試料を提供し、受注を目指している。それと並行して、学会や展示会において川下ユーザと共同で発表することにより、最終的なユーザとなる半導体デバイスメーカへのアピールを図る。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、製品製造、共同研究・共同開発
製品・サービスのPRポイント
1.本研究で開発したエッチング装置を使うことで、半導体デバイスメーカーが求めるサブミクロン配線の非接触故障解析が可能になった。
2.スキャン加工で数mm角のエリアを深掘りすることに成功したため、高倍率のレンズによる観察が可能になった。
3.デバイスの故障解析目的であれば卓上クラスの装置サイズを提供することができる。
4.8インチクラスの基板の局所加工も対応可能である。
今後の実用化・事業化の見通し
大面積の試料を場所ごとに違う深さで精密にプラズマエッチングできるのが他にない特徴なので、シリコンデバイスにとどまらない広い市場を獲得しつつある。
実用化・事業化にあたっての課題
加工面積、加工体積が大きくなることにより必然的に加工時間が長くなるため、無人運転、自動終点検出の機能の実装を進めている。
事業化に向けた提携や連携の希望
本プロジェクトはシリコンデバイスの故障解析用試料作製を目標として出発しているが、実際には同目標以外の使用法に関する引き合いも多い。今後の産業構造の動向は装置メーカとエンドユーザが共同して新しい価値(応用分野、市場)を発掘していくことが主流になると考えられる。そのためにも開発した装置をデバイスメーカに限らぬ多くのお客様に試していただき、改良を重ねていきたい。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社三友製作所 設計開発部 |
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事業管理機関 | 公益財団法人日立地区産業支援センター |
研究等実施機関 | 茨城県産業技術イノベーションセンター 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
アドバイザー | 国内半導体デバイスメーカ |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社三友製作所(法人番号:3050001026524) |
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事業内容 | 分析機器関連製品の製造 、精密機械加工 、電子顕微鏡関連付属品の製造 、半導体故障解析ツールの製造 |
社員数 | 250 名 |
生産拠点 | 茨城県常陸太田市に1工場、同県常陸太田市に3工場を有する。 |
本社所在地 | 〒313-0004 茨城県常陸太田市馬場町457 |
ホームページ | http://www.sunyou-ss.co.jp/index.html |
連絡先窓口 | 設計開発部 新堀俊一郎 |
メールアドレス | shinbori@sunyou-ss.co.jp |
電話番号 | 0294-33-9931 |
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