第1部 小規模事業者の動向

2 経営計画の策定状況等について

第1-2-33図は、小規模事業者における経営計画の作成の有無を示したものである。

これを見ると、「作成したことがある」者は53.0%にとどまっており、約半数の小規模事業者が経営計画を作成したことがないことが分かる。

第1-2-33図 経営計画(事業計画や収支計画など)の作成の有無
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また、小規模事業者の経営計画の作成の有無について、個人事業者と法人別に示したものが第1-2-34図である。

これを見ると、経営計画を作成したことがある者は、個人事業者では43.9%であるのに対し、法人では64.0%となっており、法人の方が経営計画を作成した割合が高いことが分かる。

第1-2-34図 経営計画の作成の有無(個人事業者、法人別)
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さらに、小規模事業者の経営計画の作成の有無について業種別に示したものが、第1-2-35図である。

これを見ると、「宿泊業(64.5%)」や「製造業(64.0%)」、「飲食サービス業(58.6%)」などでは、経営計画を作成した割合が相対的に高く、「建設業(41.5%)」や「その他の業種(47.3%)」、「生活関連サービス業(48.8%)」などでは、その割合が相対的に低いことが分かる。

第1-2-35図 経営計画の作成の有無(業種別)
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次に、「経営計画を作成した背景や動機」について示したものが、第1-2-36図である。

これを見ると、「補助金申請で必要となったから」と「業績を向上させたいから」との回答が、それぞれ約6割となった。

「業績を向上させたいから」や「経営状態を正しく知りたかったから」、「自社の強みや弱みを知りたいから」という自発的な回答も多く見られる一方で、小規模事業者持続化補助金等の補助金申請や融資申込を契機として経営計画を作成したとする小規模事業者も多いことが分かる。

第1-2-36図 経営計画を作成した背景・動機(複数回答)
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さらに、経営計画の作成に当たって、活用したり相談したりした機関や人については、「商工会・商工会議所の経営指導員」が最も多く、次いで「税理士や中小企業診断士、経営コンサルタントなど」、「金融機関の担当者」、「ほかの経営者や経営者仲間」が上位となっている(第1-2-37図)。

その一方、特定の機関や人に頼らず「自らの情報収集と独学」で経営計画を作成したとする者も24.7%と一定数存在する。

第1-2-37図 経営計画作成時に活用または相談した機関や人(複数回答)
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次に、経営計画を作成した効果について示したものが、第1-2-38図である。

これを見ると、「経営方針と目標が明確になった」及び「自社の強み・弱みを認識できた」との回答がそれぞれ約7割となっているほか、「販路開拓のきっかけとなった」が約4割、「資金繰りの状況が把握できた」が約3割となっている。

第1-2-38図 経営計画を作成した効果(複数回答)
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続いて、経営計画を作成した効果として、経営計画の作成の有無と業績傾向との相関を示したものが第1-2-39図である。

これを見ると、「作成したことがある」者の方が「作成したことがない」者に比べて売上高が増加傾向にあることが分かる。

第1-2-39図 経営計画の作成の有無と売上高の傾向
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次に、経営計画を作成したことのない者に対し、今後、経営計画を作成する意向の有無について聞いたものが第1-2-40図である。

これを見ると、「作成してみたいと思う」との回答は約1割と低くなっているが、「適切なアドバイスがあれば作成してみたい」とする回答が約5割と過半数を占めている。このことから、支援機関等が、小規模事業者の経営計画作成に対して適切なアドバイスを行うことが重要であることが分かる。

第1-2-40図 今後の経営計画作成の意向
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また、「経営計画を作成したいと思わない」者について、その理由を聞いたものが第1-2-41図である。

これを見ると、多い順に「現状維持ができれば良いため」が41.9%、次いで「計画など大仰なものは不要なため」(37.2%)、「経営内容を熟知していれば不要なため」(37.0%)、「時間的な余裕がないため」(33.4%)となっている。また、第1位の回答に限ってみれば、「経営内容を熟知していれば不要なため」が最も多い。

その一方で、「効果に懐疑的なため」や「どのように作成したら良いかわからないため」がそれぞれ約2割あることから、行政庁や支援機関などの支援者側においては、経営計画策定の効果や経営計画の策定方法について、より分かりやすい形で情報提供等を行っていく必要があるといえよう。

第1-2-41図 経営計画を作成したいと思わない理由(複数回答)
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コラム1-2-1

「小規模事業者持続化補助金」について

小規模事業者の「事業の持続的発展」は小規模企業振興基本法(小規模基本法)の基本原則であるが、小規模事業者の販路開拓による事業の持続的発展を支援する予算として小規模事業者持続化補助金が措置されてきた(平成25年度、平成26年度、平成27年度の各補正予算)。ここでは、小規模事業者持続化補助金について概観する。

●事業概要(平成27年度補正予算)

本補助制度は、小規模事業者が、商工会・商工会議所と一体となって、販路開拓に取り組む費用(店舗の改装・改修やチラシ・カタログの作成費用等)を支援している。

平成27年度補正予算においては、小規模事業者の経営を強化していくことを目指して、小規模事業者が販路開拓と合わせて行う業務効率化・生産性向上に向けた取組も支援する。

なお、本補助金の申請に当たっては、小規模事業者に自らの経営計画に基づく経営を促すため、「経営計画書」の添付を要件としている。

コラム1-2-1〔1〕図 小規模事業者持続化補助金の概要

●事業の効果

前回の『2015年版小規模企業白書』においても、小規模事業者持続化補助金の効果を取り上げているが(同白書コラム1-3-1)、その後、期間の経過を踏まえ、本補助金の効果にどのような傾向が見られるかを把握することとし、平成25年度補正予算で同補助金を活用した採択事業者を対象に、追跡アンケート調査を実施した(2015年10月~11月。なお、前回調査は2014年11月、2015年2月の2回実施)。

本補助金では、経営計画の作成を要件としているが、今回の調査で、採択事業者に改めて聞いたところ、66.2%の者が同補助金の活用をきっかけに初めて経営計画を作成したと回答している(コラム1-2-1〔2〕図)。

コラム1-2-1〔2〕図 経営計画書等の作成経験の有無
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また、経営計画の作成を行った小規模事業者の意識の変化についても、今回改めて、聞いたところ、「自社の強み・弱みが明らかになった」及び「他の補助金や支援制度の活用についても関心を持った」とする回答が5割を超えたほか、「新たな事業を企画できた」及び「事業の見直しを行うきっかけとなった」との回答が4割を超えるなど、過去の調査と同様の傾向となっており、経営に向き合おうとする意識が継続しているものと考えられる(コラム1-2-1〔3〕図)。

コラム1-2-1〔3〕図 経営計画の作成を経た、小規模事業者の意識の変化(複数回答)
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人口が減少し、顧客獲得のための販路開拓が極めて重要な経営課題となる中、販路開拓の精度を高めるためにも、自らの事業を足元から見直し、経営の方向性を定めるための経営計画づくりが必要となってきている。

なお、これらの経営計画書等を作成するため、採択事業者に支援の必要性を聞いたところ、87.0%の採択事業者が「支援がなければ作成は難しい」と回答している(コラム1-2-1〔4〕図)。

コラム1-2-1〔4〕図 経営計画書等の作成における支援の必要性
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採択事業者の主要な取組についても、今回改めてアンケートで聞いたところ、多い順に、「店舗の改装・改修等」(1,500件、19.1%)、「設備等の導入(リース・レンタル含む)」(1,239件、15.8%)、「チラシ・パンフレット・カタログ等の作成・配布」(1,223件、15.6%)、「ホームページの作成・改良」(1,075件、13.7%)であった(コラム1-2-1〔5〕図)。

コラム1-2-1〔5〕図 採択事業者が取り組む「補助事業」
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コラム1-2-1〔6〕図 採択事業者の取組の事例

採択事業者が事業に取り組んだ後、その効果はどうなっているであろうか。

前回アンケート調査では、既に事業を実施している採択事業者のうち、取引や顧客の獲得状況について51.3%が新たな取引先や顧客を「獲得した」と回答し、また、売上の増加の状況では、35.0%が売上げが「増加した」との回答であった。

コラム1-2-1〔7〕図は、前回及び今回のアンケート調査により、取引先や顧客の獲得状況を示したものである。これを見ると取引先や顧客の獲得状況について前回調査と比べて、新たな取引先や顧客を「獲得した」とする回答が上昇している(前回:51.3%→今回:65.8%)。

また、コラム1-2-1〔8〕は売上の増加状況を示したものである。これを見ると前回調査と比べて、売上げが「増加した」とする回答が増えている(前回:35.0%→今回:55.5%)ことが分かった。

このことは、補助金に効果の全てを結び付けることはできないものの、補助事業を活用した販路開拓の取組が、経営の好循環につながっていることをうかがわせるものとなっている。

コラム1-2-1〔7〕図 小規模事業者持続化補助金活用による新たな取引先や顧客の獲得状況
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コラム1-2-1〔8〕図 小規模事業者持続化補助金の活用による売上の増加状況
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