3.4.3 BCP文化を醸成する
(1) このステップの目的
会社全体におけるBCP文化の定着という意味では、BCPに関する訓練や教育をただ実施していればよいということではなく、緊急事態発生時にそれを従業員が有効に活用できなければ、BCPの効果を十分に発揮させられません。
BCPを実効性の高いものにしようとするならば、平常時から一人ひとりの従業員がBCPに関する活動に対して前向きに取組むとともに、BCPに対する理解を深め、自身の役割を明確に認識することが不可欠です。一方、経営者は、全社をあげてBCPに取組むという姿勢を見せ、BCPの推進をアピールすることが望まれます。
このような活動が日常においても自然に実現されるようなBCP文化の醸成が、このプロセスの目的です。
(2) 実施のポイント
「BCP文化の醸成」と一言でいっても、それが一朝一夕にできあがるほど容易ではないことはいうまでもありません。そのため、このプロセスの実現には、長期的な視点で経営者と従業員の意識を高めていくことが望まれます。
あなたの会社へのBCP文化醸成を進めるにあたり、経営者及び従業員それぞれが常に意識しておくべきポイントを以下に示します。
★ 経営者が意識しなければならないこと
もし、何らかの緊急事態が発生しても、あなたの会社が生き続けるためには、従業員の協力を得てBCPを完遂させる必要があります。そのためには、日常より従業員一人ひとりにBCPに対する経営者の熱意と行動を従業員に理解してもらうとともに、従業員の安全や雇用を死守するという姿勢を見せることが必要です。そうしなければ、緊急時においても従業員の最大限の協力を得られません。
★ 従業員が意識しなければならないこと
もし、会社に何らかの緊急事態が発生しても、従業員の安全や雇用が守られるためには、日常からの対策活動や、緊急時におけるBCPの完遂が不可欠です。ただし、経営者だけの力では、緊急時に中核事業を継続させることは非常に困難ですから、日常より、従業員一人ひとりが経営者のBCPに対する熱意と行動を理解し、BCPの運用に積極的に協力する必要があります。
また、BCP運用に対する従業員の認識を促進させるためには、BCPや防災に関する情報の社内への発信等を、平時より継続的に実施する必要があります。
このような活動に対して従業員から深い理解を得られるためには、従業員だけでなく、取引先や協力会社、ひいては地域社会を災害による被害や経済的損失から守るという経営者の意志を明確に示す必要があります。
経営者が平時から実施しておくべき対応の例を以下に示します。
・ 従業員との平時からのコミュニケーション
BCP活動に関する内容も含め、従業員との対話は不可欠です。
・ 従業員のための安全対策の実施
BCPに対する経営者の意志を示すための手段の一つとして、目に見える対策を従業員に提供することは効果的です。例えば、社宅の耐震化や地震保険への加入、家庭用防災用具の配布等があげられます。
・ 取引先や協力会社、地域を大切にした事業の実践
万が一、会社が被災した場合にも、取引先や協力会社等に迷惑をかけず、地域の復興に貢献するという経営者の意志を従業員に示すことも必要です。これは日常の様々な活動を通して実現される部分も大きいため、日ごろから留意しておくことが重要です。
・その他、BCPや防災に関する各種活動の支援
例えば、平常時の職場において、BCPに関する標語をカードにして従業員のデスクに貼り付けるといった活動も、従業員啓発のための活動といえるでしょう。