1. はじめに
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事業継続計画(BCP)
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企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと。
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Business Continuity Plan (BCP)
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事業継続管理(BCM)
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事業継続計画を策定(構築)し継続的に運用していく活動や管理の仕組みのこと。①事業の理解、②BCPサイクル運用方針の作成、③BCPの構築、④BCP文化の定着、⑤BCPの訓練、BCPサイクルの維持・更新、監査といった活動が含まれる。
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本書では、事業継続計画(BCP)を策定し、それを適切な状態に維持するための様々な活動を継続的に実施するという意味で、「BCPサイクル」と表現している。
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Business Continuity Management (BCM)
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BCPサイクル
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事業継続管理のこと(「事業継続管理(BCM)」を参照のこと)。
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リスクマネジメント
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企業を取り巻くリスクは大小様々であり、それらのリスクに優先順位を付けて未然防止活動等により全体としてリスクを最小化する活動のこと。また、そのための計画策定や見直し等を含めて継続的に運用していく仕組みのこと。
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リスク
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共通の性質として次の2つの性質を含むため、影響度と発生頻度の観点から測定される事象のこと。
①その事象が顕在化すると、好ましくない影響が発生する。
②その事象がいつ顕在化するかが明らかでないという、発生の不確実性がある。
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サプライチェーン
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原材料の確保から最終消費者にいたるまでの財と情報の流れにかかわる全活動(開発・調達・製造・配送・販売等)を意味する。また、サプライチェーンを統合的に管理するための経営手法をサプライチェーンマネジメントという。
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緊急事態
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地震や風水害等の自然災害やテロや火災、事故等の人為的災害といった従業員や中核事業等に対して重大な被害や影響を及ぼす可能性のある事態のこと。
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BCPの発動
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緊急事態が発生した場合に、BCP(事業継続計画)を基に事業継続及び事業への影響を最小化するための対策を始めること。
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2. 基本方針と運用体制
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公的支援制度
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平常時における事前の防災対策や緊急事態発生後の事業への支援を目的として、商工中金や自治体、政策投資銀行等が実施する中小企業を対象とした支援制度のこと。制度一覧は〔資料10〕を参照のこと。
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取引先企業
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サプライチェーンにおいて取引のある企業のうち、製品やサービスを提供する顧客のこと。財や情報の流れで下流に位置する。
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協力企業
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製品やサービスの創出のために、材料や部品の仕入業者や情報提供等の支援をしてくれる企業のこと。財や情報の流れで上流に位置する。
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サブリーダー
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事業継続計画の策定・運用において、総務、財務、労務等の各部署の代表として、実施責任者である経営者を支え、各部署においては実質的な責任者として活動する人のこと。
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3. 平常時におけるBCPの策定と運用
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中核事業
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会社の存続に関わる最も重要性(または緊急性)の高い事業のこと。
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重要業務
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ボトルネック
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本来は、瓶(ボトル)のくびれ(ネック)の意味。事業の継続や業務復旧の際に、その部分に問題が発生すると全体の円滑な進行の妨げとなるような要素。
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目標復旧時間(RTO)
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中核事業や基幹業務を復旧させなければならない目標時間のこと。
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Recovery Time Objective (RTO)
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ビジネスインパクト分析(BIA)
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中核事業の特定とそれに係るボトルネックを把握するプロセスのこと。
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Business Impact Analysis (BIA)
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キャッシュフロー
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会社が得たお金から会社が活動するのに支払うお金を差し引いた余剰資金のこと。現金収支ともいう。商品受け渡しと金銭の授受がずれる商慣行により、損益計算書で示される利益と現金として手元にある利益(金額)がずれることがあり、その場合の手元にある利益がキャッシュフローに相当する。
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災害復旧貸付
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罹災した中小企業者向けに設備資金・運転資金を貸付ける国民金融公庫や中小企業金融公庫、商工組合中央金庫の支援制度のこと。被災中小企業に対する公的支援制度の一覧は、〔資料10〕を参照のこと。
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代替資源
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事業を継続するにあたり必要となるモノや人、情報等に関する資源が被害を受けて利用できない場合には、代わりとなる資源のこと。事業継続に係る各種資源の代替の情報については、〔様式08〕を参照のこと。
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バックアップ
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代替資源とほぼ同じ意味であるが、本指針では情報に関する代替をバックアップと呼んでいる。例えば、中核事業の継続に必要な情報を電子データ、紙データに関わらず複製を作成し、同じ災害で被災しない場所に保存しておくことが挙げられる。
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耐震化
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建物の地震に耐える能力を高めることで、耐震診断により改修が必要と判断された場合に実施する補強を指す場合もある。建物全体で地震に耐える旧来の技術のほか、建物下層部の特殊な装置により地震エネルギーを吸収・遮断し上層部の揺れを低減する免震技術や、建物内部にエネルギーを吸収するダンパーを取り付けて建物を揺れにくくする制震技術を含めて耐震の概念で表す場合もある。
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二次災害
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ある災害が発生した場合に、それが原因となってその後に発生する災害のこと。例えば、地震の後に発生する火災や爆発等が挙げられる。
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心肺蘇生法
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意識傷害や呼吸・循環機能の著しい低下または停止に至った人に対して、気道確保や人工呼吸、心臓マッサージ等の応急的な対応を行い蘇生を試みるための方法のこと。
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応急救護
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負傷者に対して、救急車が到着するまでの間に、薬品や特別な器具を使用せずに実施する救命方法のこと。
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防災士
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「自助・共助・協働」を原則として、社会の様々な場で減災と社会の防災力向上のため活躍が期待され、かつそのために十分な「意識・知識・技能」を有する者として認証を受けた人のことをいい、NPO法人日本防災士機構によって2003年に創設された民間資格である。防災士を数多く養成することによって、社会全体の防災力向上を実現することが防災士制度の目的である。
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総合訓練
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BCPが定める実施事項を通して行う訓練のことであり、通報・連絡や消火、避難・移動、バックアップしているデータの取出し等の要素訓練が含まれる。
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意志決定訓練
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緊急事態が発生したことを想定して、収集した情報を基に対応方針や具体的な対策事項について検討し決定する訓練。
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机上訓練
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現場の消火訓練等とは異なり、会議室等で実際の状況を想定して意思決定をする訓練のこと。災害対策本部の活動等を想定して実施されることが多い。
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要素訓練
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応急対応における全体の活動を対象としたものではなく、避難や消火、緊急連絡といった活動の一部分を採り上げて実施する訓練のこと。通報・連絡や消火、避難・移動、バックアップしているデータの取出し等の各訓練が挙げられる。
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安否確認
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災害が発生した場合に、従業員や顧客、従業員の家族等安全や被害の状況を確認すること。家族の安否確認は、過去の地震において市民が最も心配に思う事項の1つである。
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事業影響度評価
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緊急事態が発生した場合の事業への影響について、従業員や施設・店舗、設備、情報、ライフライン、財務等の幅広い視点から評価すること。事業に対する小さい影響よりも重大な影響を把握することが重要である。中核事業の影響評価については、〔様式07〕が参考となる。
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4. 緊急時におけるBCPの発動
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エスカレーション(escalation)
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緊急事態の進展に合わせて、対応体制を拡大したり、判断者をより上位者に移行したり、対策内容を高めていったりすること。
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取引調整
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被災後に被災前と同様の取引を行うことが困難な場合に、取引先とその後の取引について調整すること。他社での一時的な代替生産等の対応が含まれる。
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取引復元
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事業資源が復旧した時点で、代替生産等を引き上げ、被災前の取引に復元すること。
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財務診断モデル
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復旧費用や今後のキャッシュフロー、不足資金を予測するための診断モデルのこと。本指針の5章を参照のこと。
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警戒宣言
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地震の予知を基に地震の発生に備えるために国が発令する宣言のこと。現状では駿河湾沖を震源地とする東海地震のみが対象となっている。警戒宣言が発令された場合には、静岡県を中心とする地震防災対策強化地域では学校の休校や多くの企業活動の停止、交通規制等の様々な社会的規制が法律に基づき実施されることになっている。
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土石流
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大雨等で崩れた山や谷の土砂が水と混ざって、非常に早いスピードで下流に流れる自然現象のこと。大きな岩等を先頭にして、時速40~50キロメートルで進むことがあり、逃げる場合には土石流の進行方向に対して直角に逃げる必要がある。
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山腹崩壊
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山の中腹(=山腹)が崩れる自然現象のこと。土砂崩れと呼ばれることもある。
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内水氾濫
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堤防内の水は普段は河川に流れるが、河川の水位が上昇することにより水が河川に排水できずに堤防内で氾濫が生じること。
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高潮
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台風や発達した低気圧により、海面が異常に上昇する自然現象のこと。海面が上昇することにより海水が堤防を越える場合や、高い波が堤防を越える場合があり、その結果、堤防内が浸水することがある。
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避難勧告
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災害により住民に危険が生じた場合や危険が生じる可能性がある場合に、自治体が避難のための立ち退きを勧めるもの。同報無線や広報車等によって住民に伝えられる。
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避難指示
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避難勧告より状況が悪化し避難すべき時期が切迫した場合に、自治体が避難のための立ち退きを勧めるもの。同報無線や広報車等によって住民に伝えられる。避難勧告より緊急性が高い。
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感染症
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菌やウイルス等の病原体が体内に侵入して増殖し、発熱や下痢、咳等の症状を伴う病気のこと。
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ハザードマップ
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過去の災害や実地調査等を基に、災害により危険が予想される場所を表した地図のこと。防災マップや危険区域予測図と呼ばれることもる。地震や津波、洪水のほかに、火山や落石・地すべり等のハザードマップがある。避難経路や避難場所等の避難に関する情報が盛り込まれていることが多く、自治体等により公開されている。
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5. 財務診断モデル
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被害額
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被害を受けた設備や施設等の被害金額であり、過去の購入時の価格(簿価)に相当するもの。広義には、施設等の物的被害や従業員等の人的被害、機会損失等による間接被害を金銭換算したものが被害額になる。復旧で設備や施設を再調達する場合には現状の価格になるため、復旧費用は被害額よりも大きくなる場合が多い。
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復旧費用
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被害を受けた設備や施設等を復旧するための費用であり、それらを再調達する場合には現状の価格が復旧費用となるため、過去の購入時の価格で計算される被害額よりも大きくなる場合が多い。
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利益保険
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復旧までの生産減少や、休業の営業利益減、休業中に支払う給与・地代・租税公課等の「固定費」支出をカバーする保険。
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減価償却
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施設や設備等の資産の価値が、使用年数が経過するにつれて減少するという会計上の考え方のこと。これらの資産は減価償却資産と呼ばれ、会計上は購入した時に全額が必要経費となるわけでなく、使用可能年数(耐用年数)に渡って分割して必要経費として取り扱うことになる。
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再調達価格
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地震等で設備等の資産が被害を受けた場合に、その資産を再度購入する場合の値段のこと。一般的に、物価上昇等を考慮すると、被害を受けた資産を購入したときの価格よりも高くなることが多い。また、被害を受けた資産よりも高機能や高品質なものを購入することも考えられる。
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簿価
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全壊
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半壊
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住家の損壊が甚だしいが補修すれば元通りに再使用できる被害。
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ア二ュアルレポート
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アニュアル(annual)は「例年の、年々の、年一回」のという意味があり、アニュアルレポートは年次報告を意味する。
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コミットメントライン
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金融機関との契約期間中はいつでも好きな時に、一定の金額までは事前に定められた条件で、機動的に金融機関から借り入れできることを法的に確約(コミット)した融資枠のこと。
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ムーディーズ
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元本の償還や利払いの観点から債権の安全性を評価し、債権の格付けを行う会社の1つ。世界的に有名な会社。
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6. 事前対策メニュー一覧
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アンチウィルスソフト
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コンピュータウィルスを発見し駆除するためのソフトウェアのこと。
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インストール
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ソフトウェアを使えるようにするために、ソフトウェアを構成するプログラムやデータ等をハードディスクにコピーし設定を行うこと。
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「セットアップ」(setup)とも呼ばれることもある。
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アップデート
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更新の意味。コンピュータウィルスは日々進化・多様化するため、コンピュータウィルスの情報やソフトウェアの内容を定期的に更新することが求められる。更新方法は各アンチウィルスソフトの説明書を参照のこと。
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7. BCPの様式類
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レビュー
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8. BCP関連資料
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危機管理
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危機が発生した場合または発生しつつある段階において、その被害を最小限にとどめるために実施する活動のこと。また、そのための計画策定や見直し等を含めて継続的に運用していく仕組みのこと。
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図上訓練
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災害時を想定して、地図や被害想定地図等を用いて、状況整理や対応方針、対応事項の検討等を実践する訓練のこと。図上訓練以外にも、消火や避難といった実際に現場で活動する実働訓練もある。
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