3.1.3 財務状況を診断する

(1) このステップの目的

 このステップの目的は、あなたの会社の事業所建屋の状態や現在の資産状況、損益の状況をもとに、あなたの会社が地震等により被災した場合、事業を復旧・継続するのに必要な金額を算出します。建物・設備の復旧費用と事業が中断されることによる損失(キャッシュフローの悪化額)を予測して、復旧費用の総額を計算します。また、あなたの会社が事業の復旧に対して借入が必要となるかどうかを把握します。
 あなたの会社のキヤッシュフローが被災後どのようになるかを具体的に認識することにより、被害を軽減するための以下のような事前対策を採るべきかどうかの判断が可能になります。なお、事前対策には、人的被害、物損被害、経済的被害がありますが、このステップで検討するのは、経済的被害に対する事前対策にあたります。(人的被害、物損被害に対する事前対策は、本指針3.2.2の「事前対策を検討・実施する」において別途検討します。)

     ・1ヶ月程度の操業停止に耐え得る資金の事前確保
     ・適切な損害保険の加入
     ・事前対策実施 等

 一つ目の項目で「1ヶ月程度」としている趣旨は、緊急事態発生月の従業員給与や仕入品購入用資金の目安としたものであることに留意して下さい。
 災害発生後には、多くの中小企業で復旧資金の借入が必要になるものと考えられます。このBCPを実行することによって、災害発生後の政府系中小企業金融機関・保証協会等の災害復旧貸付・保証制度をより有効に活用できます。また、この分析・検討結果を持って、政府系中小企業金融機関や保証協会等に相談に行くことにより、災害復旧貸付の審査が円滑かつ迅速に進められることが期待されます。
 (被災中小企業に対する公的支援制度については、資料10が参考にできます。)


(2) 実施のポイント

 財務状況を評価するために、ここでは、「財務診断モデル」を利用します。この時、あなたの会社に関する①の情報が必要となりますので、財務諸表等を参照しながら、当該情報を把握して下さい。これらの情報を漏れなく入力することにより、②の情報が自動的に計算されます。

  ① 財務診断に必要な情報
   ・災害の種類と規模
   ・事業所建屋の建築年次、構造種類、簿価
   ・主な資産の種類と簿価
   ・毎月の固定費と変動費
   ・緊急事態に遭遇した場合の復旧日数や復旧費用の推定値 等

  ② 財務診断により得られる情報
   ・主な資産の種類と簿事後の毎月キャッシュフロー予測(収入と支出)
   ・必要な借入金額
   ・毎年の返済可能額 等

「財務診断シート」を利用して下さい。
 ここでの診断結果は、本指針3.2.2の「事前対策を検討・実施する」において、事前に導入すべき対策の検討において利用することができます。

   「3.2 BCPの準備、事前対策を検討する」に進んで下さい。


3.1.2 中核事業が受ける被害を評価する     3.2 BCPの準備、事前対策を検討する