3.4 BCP文化を定着させる

(1) このプロセスの目的

 会社へのBCPの定着という意味では、ただBCPを策定していればよいということではなく、緊急事態発生時にそれを従業員が有効に活用できなければ意味がありません。
 BCPを実効性の高いものにしようとするならば、災害時にBCPを利用して実際に復旧活動にあたる従業員が、BCP運用に対して前向きに取り組む必要があることはいうまでもありません。そのためには、BCPに関する訓練や教育が積極的に行われるとともに、BCP運用に対する経営者の前向きな姿勢が、会社の文化として定着することが重要になってくるのです。本指針では、そのような文化のことを「BCP文化」と表現することにします。
 BCPの運用は会社が存続する限り継続されるべき活動であり、維持・更新と、教育・研修を継続的に実施しながら、BCPを会社に定着させることが重要となってきます。


(2) このプロセスでの実施内容

① 従業員へのBCP教育を実施する

 従業員に対して行うべきBCP教育の内容は、大きく分けて2つあります。

     1.従業員にBCP運用活動を受け入れてもらう
      ・BCPや防災に関する社内ディスカッション
      ・BCPや防災に関する勉強会 等

     2.防災や災害時対応に関する知識や技能を従業員に身に付けてもらう
      ・心肺蘇生法等の応急救護の受講支援
      ・BCPや防災対策関連のセミナーへの参加支援 等


② BCP訓練を実施する

 緊急事態発生時にBCPが有効に活用されるためには、従業員へのBCP教育と併せて、定期的な訓練を実施することが望まれます。訓練の目的としては、主に以下のものがあげられます。

・策定したBCPの実効性を評価すること
・各従業員のBCPに対する理解を深め、その活動に対して積極的に取り組むとともに、緊急事態発生時での各自の役割を明確に認識してもらうこと
BCPの不備や欠陥等の改正すべき点を明らかにすること
・従業員間での連携・協力を促すこと 等

 BCP訓練には様々なレベルや種類がありますが、訓練を無理なく行うためには、以下のような、BCP発動手順の一部分を取り上げた訓練(要素訓練)を実施することにより、従業員に着実に習得させていくことが望ましいでしょう。

 ・机上訓練
 ・電話連絡網・緊急時通報の演習
 ・代替施設への移動訓練
 ・バックアップしているデータを取り出す訓練 等

 また、社内訓練でなくとも、各自治体が主催する防災訓練も行われています。このような訓練に参加することは、社内の防災能力を高めるだけでなく、自治体と会社間、または、近隣の会社同士の連携や協力を高めることにもつながります。地域間での連携や協力体制は、災害発生時においての、あなたの会社の事業継続に対して、大変有効な要素となりますから、このような訓練にも積極的に参加することが望まれます。
 (BCPに関する教育や訓練については、資料15が参考にできます。)


③ BCP文化を醸成する

 「BCP文化の醸成」の実現には、長期的な視点で経営者と従業員の意識を高めていくことが望まれます。また、BCP運用に対する従業員の認識を促進させるためには、BCPや防災に関する情報の社内への発信等を、平時より継続的に実施する必要があります。
 経営者が平時から意識しておくべき点の例を以下に示します。

 ・従業員との平時からのコミュニケーション
 ・従業員のための安全対策の実施
 ・取引先や協力会社、地域を大切にした事業の実践
 ・その他、BCPや防災に関する各種活動の支援

 


事業継続に関連する情報の整理と文書化をする     3.5 BCPの診断、維持・更新を行う