第1部 平成27年度(2015年度)の中小企業の動向

第3節 中小企業生産性の業種別比較

ここまで、中小企業の生産性に関して様々な指標を確認してきた。本節では、代表的なサービス業である生活関連サービス業,娯楽業、小売業を例に取ってこれらの指標を総括したい。

1 中小生活関連サービス業,娯楽業

中小生活関連サービス業の労働生産性水準を見ると、平均は約485万円/人と、非製造業全体の平均(約830万円/人)を大きく下回り、低い水準となっていた。分布においても小さい範囲で動いており、累積を見ても非製造業の全体平均より大きく左に張り出し、低水準となっていた(第1-3-7図参照)。また、付加価値額伸び率についても、労働投入がマイナスに寄与し、2010年から2014年にかけて▲3ポイントとなっており、伸び悩んでいる。TFP伸び率についてはプラスとなっているものの、その伸び幅は小さい(第1-3-9図参照)。資本装備率を見ると高い水準にあることが確認されたものの、資本生産性は非常に低い水準に位置している(第1-3-10図第1-3-11図参照)。このように、中小生活関連サービス業の労働生産性及び全要素生産性は平均より低い水準に位置しており、前述のサービス業における商品の性質(〔1〕同時性、〔2〕不可分性、〔3〕消失)がこれに影響を与えていると考えられる。

ここで、中小生活関連サービス業,娯楽業の分布状況と大企業生活関連サービス業,娯楽業の平均(約577万円/人)との比較を行いたい。第1-3-12図は、第1-3-7図から同業の累積分布を表すグラフを抜き出し、同業大企業の労働生産性平均を表す点を描き入れたものである。100%からこの点の表す割合までの距離が、大企業平均を上回る中小企業の割合を表す。これを見ると、大企業平均である約577万円/人以上の層に、22.2%もの中小企業が存在していることが分かる20

20 大企業以上の生産性を持つ中小企業の業種小分類別内訳については、付注1-3-2参照。

娯楽業における労働生産性の分布状況
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このような大企業平均以上の生産性を持つ中小生活関連サービス業,娯楽業者は、どのような特徴を持つのだろうか。第1-3-13図は、大企業平均以上の中小企業とそれ以外の中小企業について、様々な指標(〔1〕資本金、〔2〕従業員数、〔3〕企業年齢、〔4〕売上高、〔5〕設備投資額21、〔6〕情報処理・通信費22、〔7〕従業員一人当たり人件費、〔8〕資本装備率、〔9〕資本生産性)の平均を確認したものである。これを見ると、大企業平均以上の労働生産性を持つ中小企業では情報処理・通信費、設備投資額、資本装備率ともに大企業平均以下の中小企業の水準を上回っている。大企業の平均を上回る労働生産性を持つ中小生活関連サービス業,娯楽業は、非常に高い売上高を上げ、設備投資やIT支出を積極的に行っている姿が見られた。

21 有形固定資産当期取得額を設備投資額と見なして計算。

22 リース契約による支払いリース料、コンピュータ貸借料を含む。ここでは、IT化促進の程度を示す指標として追加。

娯楽業の特徴(平均)

以上のことから、中小生活関連サービス業,娯楽業の生産性は業種別に比較すると全体の中では低い水準にあるものの、積極的な設備投資による資本装備率の引き上げやIT化等の取組の結果23、大企業以上の生産性を持つ中小企業も2割以上存在していることが分かった。

23 IT化により事業を伸ばしている生活関連サービス業,娯楽業の例として、コラム1-3-1参照。

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