第1部 平成27年度(2015年度)の中小企業の動向 

2 中小企業の全要素生産性(TFP)

前項における労働生産性分析では、付加価値額と労働投入14との関係のみを考慮したが、労働以外の投入要素も考慮したのが全要素生産性(TFP)である。続いては、中小企業の全要素生産性(TFP)の現状について分析する。

14 生産活動のために投入した労働力のこと。

■本章における全要素生産(TFP)の考え方

本章においては、コブ=ダグラス型生産関数を前提に、一定期間における付加価値額の伸び率のうち、資本投入15の寄与分と労働投入の寄与分を除いた全ての部分を全要素生産性(TFP)伸び率と考えて計算を行った16。全要素生産性(TFP)の伸びは、付加価値額の伸びのうち、資本投入でも労働投入でも説明できない部分全ての変化を指すことから、投入要素の質の向上や技術進歩、イノベーションの結果等の合計を表すとされている17

15 生産活動のために投入した資本のこと。

16 詳しくは、付注1-3-1を参照。

17 ただし、本書においては、景気や需要の変動による変化を取り除いていないため、好景気、不景気、大きな事故、異常気象、需要の増減等の影響も、全要素生産性の数値に影響を与えていることに留意が必要である。この点、小西(2013)では、製造業の生産性について、経済産業省「工業統計」、同「生産動態統計」を用いることにより生産関数分析で得られる結果を供給要因、需要要因、その他要因に分解し、供給要因による生産性の変化を取り出すことに成功している。

■全要素生産性(TFP)伸び率の業種別比較

この全要素生産性の考え方を用いて、業種別比較を進めたい。直近の期間(2010-2014)に注目し、中小企業の付加価値額の伸び率及びこれに対する資本投入、労働投入、全要素生産性の寄与を業種別、規模別に比較したのが第1-3-8図である。さらに、TFPの伸び率のみを取り出して比較したのが第1-3-9図である。

第1-3-8図 付加価値額伸び率に対する資本、労働、TFPの寄与度(中小企業、業種別)
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第1-3-9図 業種別TFP伸び率(中小企業)
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第1-3-8図により中小企業における付加価値額伸び率を業種別に比較すると、生活関連サービス業,娯楽業において労働投入、資本投入ともにマイナスに寄与し、付加価値額全体ではマイナス2.8%と低い数値となった。教育・学習支援業18においても、TFPが大きくマイナスに寄与し、同じく2.8%と低水準の伸び率を示している。飲食サービス業、宿泊業において労働投入がマイナスに寄与し、付加価値額全体の伸び率もマイナスとなっている。他方で、医療,福祉業では付加価値額伸び率がプラス30.2%と最も高くなっており、TFPの伸び率も全業種の中で群を抜いている19

18 「企業活動基本調査」における「教育・学習支援業」の範囲には、日本標準産業分類に掲げる細分類8245、8249のみしか含まれていない点には留意が必要である。

19 ただし、労働生産性等、他の指標と比較すると、絶対水準としては依然として低いところにとどまっている(第1-3-3図参照)。

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