中小企業者のためのエクイティ・ファイナンスの基礎情報
株式発行により資金調達をする際の基礎知識と投資契約書のひな形を整理しました

令和4年12月22日更新

1.背景

中小企業者の多くは、資金調達が必要な際に金融機関による融資を利用しており、株式発行による資金調達(エクイティ・ファイナンス)を利用するケースはほとんどありません。しかし、新規事業の立ち上げやR&D、他社のM&Aなどのチャレンジに取り組む際に資金が必要な場合には、リスクマネーとしてのエクイティ・ファイナンスの活用余地が大きいと考えられます。
実際、全国の中小企業者に対して実施したアンケートにおいても、事業拡大等の成長投資を行った中小企業者の約6割が、そのための必要資金を借入によって調達しており、そのうちの約4割が、借入金の返済条件などの理由によって思い切ったチャレンジができなかったと評価しています。
また、中小企業者の4割が、ポストコロナを見据えた事業転換や事業化までに時間のかかるビジネス、中長期的な研究開発を目的に、エクイティ・ファイナンスの利活用を検討したいと考えていることが分かりました。
 そこで、中小企業者がどのような場合に、どのようにしてエクイティ・ファイナンスを活用すればよいのかといった情報を、以下の通りまとめました。

2.エクイティ・ファイナンスの基礎知識について

エクイティ・ファイナンスに関する知識や経験に乏しい者を想定して必要な情報を整備しています。資金の受け手となる中小企業者はもちろん、金融機関等が中小企業者にエクイティに関する説明をする際や、自らが出資者になる場合にも利用可能です。
全三章で構成されており、

  • 第一章では、中小企業者におけるエクイティ・ファイナンスの概要(エクイティ・ファイナンスのメリットとデメリットや、資金の受け手や出し手が期待することなど)
  • 第二章では、株式評価・出資者の投資回収について(代表的な株式の評価方法や、売却先による出資者の投資回収方法の分類)
  • 第三章では、株式の種類・増資の手続き(種類株式として付与または制限できる権利や、具体的な増資の手続きにおけるポイント)をまとめています。

さらに詳しい内容については、本リリースの末尾に記載しております。

3.投資契約書のひな形について

中小企業者がエクイティ・ファイナンスを利用する典型的なシチュエーションを前提にした、

  • 株式引受契約:会社が発行する株式を出資者がその対価(金銭)を払い込むことによって、株式を引受(取得)すること、および、その条件を定めた契約
  • 発行要領:「株式引受契約」の条件のもとで発行される株式の具体的な内容(募集株式の総数、1株あたりの払込金額、払込金額の総額、付与される権利等)について定めた書類

のひな形を作成しております。

  • 本資料は、中小企業庁金融課による、株式会社三菱総合研究所に対する委託調査「令和3年度中小企業実態調査事業 中小企業に対する直接金融に係る調査」の結果に基づくものです。
  • 第三章および投資契約書のひな形については、渥美坂井法律事務所・外国法共同事業の濱須伸太郎弁護士(シニアパートナー)と水上高佑弁護士(シニアパートナー)による全面的な支援のもと作成しております。

(参考1) 中小企業に対する出資者について

現状では、中小企業者に対するエクイティの出し手が少ないことも大きな課題です。これは、通常の中小企業者に対して出資をしたとしても、IPOやバイアウトによるEXITが想定しにくく、高いIRR(内部収益率)が実現できないことが大きな理由です。逆に、自己資金を使った投資を行うケースや投資期間を長く確保できるファンドであって、非常に高いIRRを設定する必要がない場合であれば、中小企業者に対するエクイティの出し手になり得ると考えられます(例えば金融機関本体や、金融機関系の投資専門会社など)。

(参考2) 各資料の構成

資料1:第一章 中小事業者のエクイティ・ファイナンス

  1. エクイティ・ファイナンスの概要
    1. エクイティ・ファイナンス(増資による資金調達)の概要
    2. エクイティ・ファイナンスの有効な活用場面
  2. エクイティ・ファイナンスの出資者
    1. 第三者割当増資の候補となる出資者
    2. 金融機関・投資ファンドから出資を受けることの利点
    3. 取引先から(へ)の出資を受ける(行う)ことの利点
  3. エクイティ・ファイナンスの実施にあたって
    1. 出資者が出資先企業に期待すること
    2. 出資先企業が出資者に期待すること
    3. 事業者が外部者からの出資を受ける際の心構え
    4. 中小事業者によるエクイティ・ファイナンスのポイント

事例:中小事業者によるエクイティ・ファイナンス

付録:中小事業者向けアンケート結果(抜粋)

資料2:第二章 株式評価・出資者の投資回収

  1. 株式評価方法
    1. 会社の株式をいくらで発行するべきか?
    2. 株主価値・株価とは?
    3. 株式評価方法にはどのようなアプローチがあるか?
    4. インカムアプローチ
    5. マーケットアプローチ
    6. コスト・アプローチ
  2. 出資者の投資回収
    1. 出資者による投資回収(EXIT)とは?
    2. 投資回収(EXIT)の方法
    3. 市場を通した取引(不特定の者への株式売却)
    4. 相対による取引(特定の者への売却)
    5. 株主コミュニティの仕組み
    6. 株主コミュニティの利用場面

資料3:第三章 株式の種類・増資の手続き

  1. 株式の種類
    1. 増資による資金調達においてはどのような株式が発行できるか?
    2. 種類株式として付与または制限できる株主の権利とは?
    3. なぜ種類株式を発行するのか?
    4. 種類株式に付与/制限できる株主の権利
  2. 増資の手続き
    1. 増資手法の種類
    2. 増資をするためにはどのような手続きが必要か?
    3. 増資を検討する際に特に留意しなければならないことは?
    4. オーナー企業が外部からの出資を受ける場合に留意すべきこと
      【参考】株主間契約

資料4:投資契約書のひな形(概要PPT)

  1. 「投資契約書のひな型」の整備
  2. 「投資契約書のひな型」において想定している場面
  3. 「投資契約書のひな型」における発行条件  【参考】株主間契約

<お問い合わせ>

中小企業庁財務課

電話:03-3501-1511(内線 5281)

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