5.1 復旧費用の算定

(1) 復旧費用とは(「損害の金額」」と「復旧費用」の違い)

 災害時にあなたの会社の資産(建物や機械)が損壊し「資産の損害」が生じます。これが直接損害です。また、その結果あなたの会社の事業がストップし、「事業中断による損害」が発生します。これが間接損害です。
 財務診断において、キャッシュフローを検討する場合は「損害の金額=直接損害+間接損害の金額」ではなく、復旧費用=事業を再開するのに必要な費用の総額(C)」が問題になります。
 直接損害の金額は再調達価格(損壊した資産と同じ資産を今購入したらいくら支払わなければならないか。)です。然し、建物や機械を復旧する場合には、この際、建物の構造を木造から鉄骨造りに換える。あるいは最新式の機械に更新することもあり得ます。場合によっては設備を縮小することもあるかま知れません。ですから、再調達価格は「復旧費用」とは、必ずしも同じではありません。
 「事業中断による損害」に対しては、財務診断では「事業中断によるキャッシュフローの悪化額」を計算する必要があります。この場合は、現金で流出しない減価償却費の金額を考慮する必要があります。
 あなたの企業が災害に見舞われたとき、その影響は金額的にどうなるのかを、本モデルで順次考えて行きましよう。

 なお、資産の損害(直接損害)の算定にあたっては、再調達価格を使用します。財務諸表上の資産の簿価減価償却後なので、その資産を再度購入する場合の値段(再調達価格)とは異なることを前提としています。
 損害保険の世界では、基本コース5.2に記載したように、時価(再調達価格―経年減価)、新価(再調達価格)と言う概念があり、どちらで損害保険契約をするかで、補償される金額が異なってきます。新価(再調達価格)で補償される契約を結ぶべきです。(それでも復旧費用に満たない場合もありますが、損害保険は実損を填補するものです。)



5. 財務診断モデル(中級コース)     5.1.2 損益計算書・製造原価計算書のデータ入力