下請中小企業振興法

概要

(1) 下請中小企業振興法の概要

下請中小企業振興法(以下「下請振興法」という。)の目的は、親事業者の協力のもとに、下請中小企業の体質を強化し、下請性を脱した独立性のある企業への成長を促すことにあり、次の5つの柱からなっている。

第1は、下請中小企業の振興のための下請事業者、親事業者のよるべき振興基準の策定とそれに定める事項についての指導及び助言である。

第2は、下請事業者等がその親事業者の協力を得ながら作成し、推進する振興事業計画制度である。この制度に基づく計画が適当である旨の承認を受けた場合は、金融上の支援措置等が講じられている。

第3は、2以上の特定下請事業者が、有機的に連携し、新製品の開発や新たな生産方式の導入等の新事業活動を行うことにより、既存の親事業者以外の者との取引を開始・拡大することで、特定の親事業者への依存の状態の改善を図る特定下請連携事業計画制度である。この制度に基づく計画が適当である旨の認定を受けたものについて、金融上の支援措置等が講じられている。

第4は、下請中小企業の取引機会を創出する事業者(自らが親事業者等から一括して発注を受けた上で、提携する下請中小企業の中から、発注内容に最適な企業を選定し再発注する事業を行う者)であって、一定の基準を満たす場合には認定を受けることができる制度である。認定を受けた事業者のうち中小企業者である場合には、その事業の遂行に必要な金融上の支援措置等が講じられている。

第5は、下請中小企業と親事業者との取引円滑化のための下請企業振興協会の充実・強化である。下請企業振興協会の主な業務は次のとおりである。

  • 下請取引のあっせんを行うこと。
  • 下請取引に関する苦情又は紛争について相談に応じ、その解決についてあっせん又は調停を行うこと。
  • 下請中小企業の振興のために必要な調査又は情報の収集若しくは提供を行うこと。

(2)基本的性格

下請振興法は、親事業者の協力のもとに、下請事業者自らが、その事業を運営し、かつ、その能力を最も有効に発揮することができるよう体質を強化し、下請性を脱して独立性のある企業への成長を促すことを目的としている。

したがって、同じく下請事業者との取引の適正化を図ることを目的とする下請代金法が規制法規であるのに対し、下請振興法は、下請中小企業を育成・振興する支援法としての性格を有する法律である。

(3)下請中小企業振興法の一部改正

親事業者の海外展開や国内での集約等が進む中、下請中小企業は厳しい状況に直面しており、顧客の需要に対応した商品・サービスの提供の展開に向けた新事業活動を行うことにより、自立的に取引先の開拓を図ることが急務である。これらに対応するため、平成25年6月に法改正を行い、下請中小企業が連携して自立的に取引先を開拓する計画「特定下請連携事業計画」を創設し、計画の認定を受けた者に対し、中小企業信用保険法の特例等の支援措置を講じることとした。また、振興基準において、「下請事業者の自主的な事業の運営の推進に関する事項」等の事項を追加した(平成25年6月21日公布、平成25年9月20日施行)。

その後、さらなる下請中小企業の振興・自立のために令和3年8月に法改正を行い(令和3年6月16日公布、令和3年8月2日施行)、対象となる取引を拡大するとともに、下請事業者が親事業者の協力を得て実施する振興事業計画につき、申請主体の範囲を広げ、支援措置が拡充された。また、下請中小企業取引機会創出事業者の認定制度を創設し、振興基準に認定事業者に関する事項として「下請取引の機会の創出の促進」の事項を追加した(令和3年7月30日付20210715中第3号、8月2日施行)。

振興事業計画

この制度は、下請事業者が、親事業者の協力を得て、下請事業者の施設または設備の導入、共同利用施設の措置、技術の向上、事業の共同化等の事業について振興事業計画を作成し、国の承認を受けたものについて、その円滑な達成に必要な金融上の支援措置等を講ずることとしている。

1.支援措置

(1)高度化資金事業(独立行政法人中小企業基盤整備機構、都道府県)
振興事業計画に基づき実施する、新製品・技術開発などの事業の用に供する施設を設置する事業において、必要な資金の貸付を行う。
(2)中小企業信用保険法の特例
下請事業者が承認を受けた計画に基づき事業を行うために必要な資金について、普通保険、無担保保険、特別小口保険、そして、流動資産担保保険の特例として、付保限度額の別枠化、保険料率の引き下げ等の優遇措置を講じている。

特定下請連携事業計画

2以上の特定下請事業者(※)が、有機的に連携し、新製品の開発や新たな生産方式の導入等の新事業活動を行うことにより、既存の親事業者以外の者との取引を開始・拡大することで、特定の親事業者への依存の状態の改善を図る「特定下請連携事業計画」を作成し、国の認定を受けたものについて、金融上の助成措置等を講ずることとしている。

  • 特定下請事業者とは、「下請事業者のうち、その行う事業活動についてその相当部分が長期にわたり特定の親事業者との下請取引に依存して行われている状態として経済産業省令で定めるものにあるもの」をいう。

1.支援措置

(1)中小企業信用保険法の特例
特定下請事業者が認定を受けた特定下請連携事業計画(認定特定下請連携事業)に基づき事業を行うために必要な資金について、普通保険、無担保保険、特別小口保険の限度額の別枠化、保険料率の引き下げ等の措置を講じている。また、新事業開拓保険の限度額の引上げの措置を講じている。
(2)中小企業投資育成株式会社法の特例
特定下請連携事業を行うために、資本の額が3億円を超える株式会社の設立に際して、その株式を中小企業投資育成株式会社が引受けることにより、資金調達を支援している。
また、中小企業者のうち、資本金の額が3億円を超える株式会社が、認定特定下請連携事業を行うために発行する株式、新株予約権、新株予約権付社債を中小企業投資育成株式会社が引受けることにより、資金調達を支援する。

下請中小企業取引機会創出事業者

この制度は、自らが親事業者等から一括して発注を受けた上で、提携する下請中小企業の中から、発注内容に最適な企業をデジタル技術等の活用により選定し再発注する事業を行う者(下請中小企業取引機会創出事業者)を認定し、認定を受けた当該事業を行う中小企業については、その事業の遂行に必要な金融上の支援措置等を講ずることとしている。

認定を受けた事業者は、従来の取引関係に依存しない新たな取引機会の創出のほか、振興基準に準拠することも求められることから、適正な価格転嫁などの取引の透明化等を実現するものと期待される。

振興基準

振興基準は、下請中小企業の振興を図るため、下請事業者及び親事業者のよるべき一般的な基準として下請中小企業振興法に基づき、定められるものです。

また、振興基準に定める具体的な事項について、主務大臣(下請事業者、親事業者の事業を所管する大臣)は、必要に応じて下請事業者及び親事業者に対して指導、助言を行います。

詳細は以下をご覧ください。

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