未来志向型の取引慣行に向けて

概要

平成28年9月15日、親事業者と下請事業者双方の「適正取引」や「付加価値向上」、サプライチェーン全体にわたる取引環境の改善を図ること等を目的とした「未来志向型の取引慣行に向けて」を公表しました。
現在では、「価格決定方法の適正化」、「コスト負担の適正化」、「支払条件の改善」の既存の重点3課題に、「知財・ノウハウの保護」と「働き方改革に伴うしわ寄せ防止」を追加し、取引適正化重点5課題として取組を推進しています。

重点課題

「未来志向型の取引慣行に向けて」の推進について

  • 既存の重点3課題の深堀とともに、新たに「知財・ノウハウの保護」「働き方改革に伴うしわ寄せ防止」を追加し、取引適正化重点5課題として取組を推進
  • 「下請Gメンや調査等によるきめ細かな実態把握」、産業界における「契約のひな形・ガイドライン等ルールの遵守徹底」「下請法等に基づく厳正な指導」を全体の方針として取組を実施。
  • コロナ禍の経済状況を踏まえつつ、取引適正化に向けた取組を一層進めていく。
新たな重点課題
重点5課題 現状・課題 今後の取組方針
知的財産・ノウハウの保護
  • 中小企業が知的財産権等に関して、公正な条件での適正な契約を締結できていない。
  • 知的財産権等に関する支援を行うことができる外部の専門人材が少ない。
  • 企業内において、 知的財産等の重要性が認識されていない。

<下請Gメンによって把握した問題事例>

  • 親事業者が立ち合いと言って工場を見学し、自社のノウハウを持っていかれて内製化されてしまった。(印刷)
  • 海外生産用金型の製造依頼を受け、設計図の有償譲渡はしているが、満足な価格になっていない。(化学)
  • 知財Gメンによる知財の活用等の実態把握の実施 (7月以降)
  • 大企業・中小企業、学識者、 弁護士、支援機関等有識者による検討会を7月に設置。
  1. 「知財取引における契約のひな形、 ガイドライン」の策定
  2. 支援策 (普及啓発、 支援機関等の専門人材の活用)
  3. 知財Gメンの体制強化の検討(知財弁護士の登用等) について、9月頃に公表。
働き方改革に伴うしわよせ防止
  • 本年4月からの時間外労働の上限規制の中小企業適用を踏まえ、 中小企業の実態把握が必要。

<下請Gメンヒアによって把握した問題事例>

  • 短納期発注が多くなったが、 割増料金がもらえない。 (自動車)
  • 金曜日に仕事を発注し、「土・日曜日にやれ」と言われた。単価の上乗せは認められなかった。(電機・情報通信機器)
  • 今後も、Gメン等により取引実態を把握。 問題事例に対し、指導・ 助言を実施。
  • 良い事例・悪い事例の周知徹底。(業界団体等)
既存の重点課題
重点5課題 現状・課題 今後の取組方針
型取引の適正化
  • 昨年度の協議会の議論を踏まえ、振興基準を本年1月に改正し、 親事業者による金型の保管料の負担や不要な金型の廃棄などの 進展が見られるものの、 その進捗は道半ば。
  • 不要な金型の廃棄の更なる推進と振興基準や型取引適正化推進協議会報告書の周知徹底が必要。

<下請Gメンヒアによって把握した問題事例>

  • 金型の引取りの要請を行ったが引き取ってもらえず、 100型を無償保管中である。(自動車)
  • 親事業者が木型の保管料や廃棄の相談をまったく受け付けてくれない。(工作機械)
型取引ルールを反映した自主行動計画の改定を踏まえ、以下の取組を実施。
  • 型取引適正化推進協議会による、 各業界団体からの取組状況の聴取。 (8月目途)
  • 個別企業に対する数万社単位でのフォローアップ調査の実施。 (9月目途)
  • これらの結果を踏まえ、産業界による自主行動計画の改定やアクション等につなげる。
支払条件の改善
  • 下請代金の現金払い化については着実に浸透しているものの、 業界慣習や大企業間取引に着目すると改善が鈍い。
  • 手形サイトについては、90日もしくは120日のサイトに張り付いている状況。
  • 約束手形の割引料が下請代金に加味されておらず、 十分な協議がなされていない。
  • 新型コロナ感染症による影響を鑑み、下請事業者の資金繰り改善のためにも、 支払条件改善への一層の取組が必要。

<下請Gメンヒアによって把握した問題事例>

  • 以前は手形での支払いだったが、 今年より月末締め180日後の現金払いに変わった。(電機・情報通信機器)
  • 下請法対象外だが、 締切から125日後の現金払いという取引先がある。 (自動車)
  • ①業種ごとの現金払い・手形等の支払期日と取引慣行の実態 ②決済手段の在り方 (ファクタリング・電子記録債権等を含む)等について、事業者・金融機関等を交え議論を開始。 (7月目途)
  • 中小企業への新型コロナ感染症の影響を踏まえ、 手形通達の再改正を検討
  • 産業界への働きかけの強化(振興基準、 自主行動計画等の再検討) (11月頃方向提示)
  • 今後も、 Gメン等により取引実態を把握。 問題事例に対し、指導・ 助言を実施。
  • 良い事例・悪い事例の周知徹底。(業界団体等)
価格決定方法の適正化
  • 本年2月に、賢人会議 「中間とりまとめ」において、大企業と中小企業が共存共栄していく関係を構築するため、適正な価格転嫁など取引適正化をサプライチェーン全体で進め、 雇用・所得環境を改善させていく必要性を指摘。

<下請Gメンヒアによって把握した問題事例>

  • 海外企業の価格を引き合いに出し半額近い値下げを口頭で要求された。 (自動車)
  • 量産ロットの見積もり価格が小ロットの注文にも適用され、利益が出ないので困っている。 (電機・情報通信機器)
  • 本年5月に 「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」を設置し、 個社による下請振興基準の遵守等を含む自主行動宣言 (パートナーシップ構築宣言) を通じ、 更なる取引適正化を推進。
  • 今後も、Gメン等により取引実態を把握。問題事例に対し、指導・ 助言を実施。
  • 良い事例・悪い事例の周知徹底。(業界団体等)

対策の内容について

1.関係法令の改正

(1)下請代金法の運用強化(運用基準の改正)(平成28年12月14日改正)

公正取引委員会において、「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」(公正取引委員会事務総長通達)を改正し、違反行為事例を大幅に追加しました。

運用基準改正のポイント
  • 運用基準改正のポイント(現行66事例から141事例に大幅増加)
    • 公正取引委員会による勧告・指導の中で、繰り返し見受けられた行為、 事業者が問題ないと認識しやすい行為等を追加
    • 中小企業庁等と共同で実施した大企業 ヒアリングで得られた情報等を元に追加
  • 主な違反行為の追加事例
    【減額】
    コンビニエンスストア本部である親事業者は、消費者に販売する食料品の製造を下請事業者に委託しているところ、店舗において値引きセールを実施することを理由に、下請代金から一定額を差し引いて支払った。
    【買いたたき】
    親事業者は、取引先と協議して定めた「〇年後までに製品コスト○%減」という自己の目標を達成するために、 部品の製 造を委託している下請事業者に対して、 半年毎に加工費の◯%の原価低減を要求し、 下請事業者と十分な協議をすることなく、一方的に通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定めた。
    【不当な経済上の利益の提供要請】
    親事業者は、 量産終了から一定期間が経過した下請事業者が所有する金型、木型等の型について、 機械部品の製造を委託している下請事業者から破棄の申請を受けたところ、 「自社だけで判断することは困難」 などの理由で長期にわたり明確な返答を行わず、 保管・メンテナンスに要する費用を考慮 せず、無償で金型、木型等の型を保管させた。

(2)下請中小企業振興法「振興基準」の改正(平成28年12月14日、同30年12月28日改正)

経済産業省は、親事業者と下請事業者の望ましい取引慣行等を示した下請中小企業振興法「振興基準」を平成28年12月14日、同30年12月28日、令和2年1月31日に改正しました。
改正の概要は以下のとおりです。

(3)通達の見直し

中小企業庁と公正取引委員会において、約50年ぶりに手形支払に関する新たな通達(「下請代金の支払手段について」)を発出しました。 なお、「振興基準」の中でも同内容を記載しています。
内容は、以下のとおりです。

新たな手形に関する通達のポイント
    • 下請代金の支払いは可能な限り現金で。
    • 手形等による場合は、割引率を下請事業者に負担させることがないよう、下請代金の額を十分に協議する。
    • 手形サイトは120日(繊維業においては90日)を超えてはならないことは当然として、将来的に60日以内とするよう努める。

  • 確認書の取得

  • 今後、政府が数年間かけて改善状況を調査します。

2.自主行動計画の策定

幅広い下請構造をもつ業界の業界団体等において、サプライチェーン全体での「取引適正化」と「付加価値向上」に向けた自主行動計画を策定頂きました。

3.業種別下請ガイドラインの改訂

親事業者と下請事業者の間の望ましい取引関係の構築を図るための「下請適正取引等の推進のためのガイドライン(下請ガイドライン)」を改訂し、親事業者と下請事業者の連携・協力に係るベストプラクティスを追加。

  • (1)素形材、(2)自動車、(3)産業機械・航空機等、(4)繊維、(5)情報通信機器、(6)情報サービス・ソフトウェア、(7)広告、(8)建設業、(9)建材・住宅設備産業、(10)トラック運送業、(11)放送コンテンツ、(12)金属、(13)化学、(14)紙・加工品、(15)印刷、(16)アニメーション制作業、(17)食品製造業・小売業(豆腐・油揚製造業)、(18)食品製造業・小売業(牛乳・乳製品製造業)、(19)水産物・水産加工品、(20)養殖業の20業種で策定しています。

4.型管理の適正化に向けたアクションプランの策定(製造産業局 素形材産業室)

経済産業省・中小企業庁では、自動車・素形材業界における公正な取引環境の実現に向けて、平成29年1月から、「型管理(保管・廃棄等)における未来志向型の取引慣行に関する研究会」(座長:神奈川大学法学部 細田孝一教授)を開催し、「未来志向型・型管理の適正化に向けたアクションプラン」を取りまとめました。

【アクションプランの概要】

以下の3つの基本方針のもと、型の廃棄、保管料支払い、マニュアル整備等について、今後、事業者が型管理の適正化を強化していくための具体的な取組内容をまとめていくこととしています。

  1. 不要な「型」は廃棄する。【「減らす」=管理対象の削減】
  2. 引き続き保管が必要な「型」については、必要な管理費用(保管費用等)の支払いや保管義務期間等について、協議・合意の下、取り決めを行う。【「見直す」=管理対象の管理の適正化】
  3. 型管理について、社内においてルール(マニュアル等)を明文化する、運用のあり方を今一度見直す。【「仕組みを作る」=管理の自立化】

「型管理台帳・型廃棄業務フロー・廃棄申請書等」、「発注者と受注者の協議・相談について」、「型の取り扱いに関する覚書(ひな形)の解説書」は以下のページをご参照ください。

5.型取引の適正化について

経済産業省・中小企業庁では、金型、木型等の型取引の適正化を進めるため、令和元年8月から、「型取引の適正化推進協議会」(座長:神奈川大学法学部 細田孝一教授)を開催し、報告書を取りまとめました。

参考資料

<本発表のお問い合わせ先>

中小企業庁事業環境部取引課
電話:03-3501-1669(直通)

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