知的財産取引に関するガイドライン・契約書のひな形について

概要

中小企業庁では、令和2年7月に有識者を交えた「知的財産取引検討会」を設置し、知的財産における取引の問題事例の整理を行うとともに、知的財産取引を適正に推進するための対応策について議論してきました。これを踏まえ、問題事例の防止や知的財産取引における企業間の共存共栄を図るため、「知的財産取引に関するガイドライン」を作成するとともに、知的財産に係る取引を行うに当たり注意すべきポイントをまとめたものとして、当該ガイドラインと併せ、契約書のひな形を作成しました。
また、知財Gメンによる調査結果を踏まえ、令和6年10月、ガイドライン及び契約書のひな形を改正しました。

ガイドライン・契約書のひな形に関するポイント

ガイドラインのポイント

【契約締結前】
  • 相手方の秘密情報を相手方の事前の承諾なく、取得、又は、開示を強要しない
  • 相手方の意思に反して、秘密保持契約締結無しに、相手方の秘密を知り得る行為をしない
【試作品製造・共同開発等】
  • 無償の技術指導・試作品製造等の強制をしない
  • 承諾がない知的財産やノウハウ等の利用をしない
  • 共同開発の成果は、技術やアイディアの貢献度によって決められることが原則、これと異なる場合は相当の対価を支払う
【製造委託・製造販売・請負販売等】
  • 製造委託本来の目的に照らして、合理的に必要と考えられる範囲を超えて、相手方の技術情報等の提供を求めない。これを求める場合には相当の対価を支払う
  • 製造委託の目的物とされていない、金型の設計図面、CADデータその他技術データの提供を当事者の意に反して強制しない
  • 監査や品質保証等の観点から秘密情報の開示を受ける必要がある場合には、あらかじめ監査等を必要とする箇所を明確にし、その目的を超えた秘密情報の取得をしない
【特許出願・知的財産権の無償譲渡・無償許諾】
  • 取引と直接関係のない、又は、独自に開発した成果について、出願等に干渉しない
  • 相手方に帰属する知的財産権について、無償譲渡の強要や自社への単独帰属を強要しない。また相手方の知的財産権の無償実施を強制しない

契約書ひな形のポイント

秘密保持契約書 共同開発契約書
  • 一方当事者(例.中小企業)のみが秘密保持義務を負うのではなく、両当事者が公平に秘密保持義務を負う
  • 当事者が知的財産に対する意識を高めるためにも、相互に守るべき秘密を指定する(特に中小企業が従来から保有している技術・ノウハウについて)
  • 相手方に情報提供をしたことをもって、権利や利益についてまで、相手方に譲渡することにはならない
  • 技術・ノウハウに関して意に反した情報提供義務を負わない
  • 共同開発によって得られた知的財産権の帰属は原則として共有とし、持分比率は発明等への貢献比率を貢献に応じて、協議して決める
  • 共同開発によって得られた知的財産権の実施については、条件や費用を協議する。特に、一方当事者が不実施を誓約する場合(中小企業を想定)には、対価を支払う
  • 取引とは直接関係なく、又は、一方当事者(例.中小企業)が相手の秘密情報に依拠せず独自に開発した発明は、発明した者(中小企業)に帰属する
  • 両当事者が秘密保持義務を負う
  • 技術・ノウハウに関して意に反した情報提供義務を負わない
知的財産権等の取扱いに関する契約(開発委託契約)書 知的財産権等の取扱いに関する契約(製造委託契約)書
  • 従来から保有する知的財産権や委託契約後に相手の秘密情報に依拠せず独自に開発をして得られた知的財産権は、その当事者に帰属する
  • 開発委託の目的とする成果は、報酬や費用等の支払によって、発注者に移転する
  • 開発を受託している場合でも、ノウハウや知的財産等の意に反した秘密情報の開示義務を負わない
  • 相手の技術やノウハウについて、発注者・受注者ともに秘密保持義務がある
  • 従来から保有する知的財産権や委託契約後に相手の秘密情報に依拠せず独自に開発をして得られた知的財産権は、その当事者に帰属する
  • 製品の製造を受託している場合でも、ノウハウや図面等の意に反した秘密情報の開示義務を負う訳ではない

令和6年度改正の概要

知財Gメンによる調査の中で、発注者への納品物について、第三者との間に知財権上の紛争が発生した場合に、発注者が例外なく受注側中小企業にその責任を転嫁できる可能性のある契約が締結されている事案を確認しました。他の発注者においても、類似の契約が幅広く存在する可能性があること、また、今後も類似の契約が新規に締結される可能性があることを踏まえ、発注者として注意すべきポイントを明確化するために、「知的財産取引に関するガイドライン・契約書のひな形」を改訂しました。

ガイドラインの改正事項

実際の取引において発生しうる様々なシチュエーションを想定しつつ、状況に応じた適切な責任分担の考え方や、帰責事由がない下請事業者が親事業者に対して行使すべき権利等について、詳細な解説を追記。具体例は以下のとおり。

  • 第三者の知的財産権を侵害しないことに係る保証責任や、その保証に当たっての調査費用等の負担については、目的物の仕様決定において発注者・中小企業が果たした役割等に応じて適切に分担することとし、中小企業に例外なく一方的に転嫁してはならないこと。
  • 発注者から中小企業への「指示」は、例えば、口頭での助言や情報提供のような、正式な書面によらない形式のものも含み得ること。
  • 中小企業に帰責事由がないにもかかわらず、中小企業が第三者から訴えられた場合には、発注者は、中小企業からの、目的物の仕様決定に係る経緯等の開示要請や、第三者との間に生じた損害賠償についての求償等に応じるべきこと。

契約書ひな形の改正事項

  • 責任転嫁行為を含む契約が締結されることを防止するに当たって、中小企業が参照すべきモデル条項を新設。

本文

詳しくは、以下のファイルをご覧ください。

eラーニング教材

独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)の運営するeラーニング提供サイトにおいて、本ガイドライン・契約書ひな型に関する解説を提供しております。

参考資料

関連リンク

(本発表のお問い合わせ先)

中小企業庁事業環境部取引課
電話:03-3501-1669(直通)

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