第2部 中小企業のライフサイクル 

第3章 新事業展開の促進

第1節 新事業展開の重要性

国内人口の減少や少子高齢化による国内需要の変容、また、グローバル化による国際競争の激化等、中小企業を取り巻く市場環境の変化は激しくなっている。既存の製品・サービスに対する需要は時間とともに変化し、中には、市場から淘汰される製品・サービスも存在する。加えて、技術革新による製品ライフサイクルの短縮化1や情報技術の発展による消費者行動の変化2等、市場環境が大きく変化している。特に、IoT(Internet of Things)3、ビッグデータ、AI(人工知能)、ロボット等といった新技術が発展しつつあり、これにより産業構造が急激に変化する可能性がある4。このような状況の中で、中小企業が継続して成長していくためには、既存の事業にこだわらず、時代の変化に対応し、積極的に新市場の開拓や新たな事業の展開に取り組んでいくことが重要である。

1 2016年版ものづくり白書では、製造業における製品ライフサイクルについて、10年前と比較してどのように変化しているかをアンケートした結果、「あまり変わっていない」という回答が多い中、全ての業種において「長くなっている」より「短くなっている」企業の方が多いという分析結果を掲載している。

2 平成27年版情報通信白書では、インターネットの普及に伴い、インターネットを通じた商品・サービスの購入も広がっている、と述べており、ネットショッピングを利用する世帯の割合は2002年には5.3%だったが、2014年には25.1%に達した、という分析結果を掲載している。

3 IoTとは「Internet of Things:モノのインターネット」の略で、あらゆるモノがセンサーや無線通信等を介してインターネットにつながる仕組みのこと。詳細は第4節で述べる。

4 経済産業省 産業構造審議会 新産業構造部会「新産業構造ビジョン」

上記のような認識のもと、本章では、中小企業の新事業展開への取組実態を概観しながら、新事業展開に成功している中小企業の特徴や、課題等について見ていく。

1 新事業展開の重要性

上述したとおり、既存の製品・サービスの需要には変化があることから、中小企業が継続的に成長していくためには、第2-3-1図に示す〔2〕新市場開拓戦略、〔3〕新製品開発戦略、〔4〕多角化戦略、〔5〕事業転換戦略の四つの取組が重要となる。本章では、この〔2〕から〔5〕を新事業展開として捉えて、分析を進める。

第2-3-1図 企業の事業展開の戦略について
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第1部では、新事業展開の戦略の一つである事業転換が、生産性向上に及ぼす効果を見たが、改めて、新事業展開の効果を見ていく。ここからは「中小企業の成長に向けた事業戦略等に関する調査5」、「消費者行動の変化に関するアンケート6」により中小企業の新事業展開への取組について分析する。第2-3-2図は、第2-3-1図で見た新事業展開の戦略と経常利益率との関係を見たものである。同図を見ると、いずれの取組においても、新事業展開を実施している企業は、実施していない企業と比べて、経常利益率が増加傾向にある。

5 中小企業庁の委託により、(株)野村総合研究所が2016年11月に25,000社を対象に実施したアンケート調査。回収率15.1%。

6 中小企業庁の委託により、(株)野村総合研究所が2016年12月にインターネットモニター4,006名を対象に実施したアンケート調査。

第2-3-2図 新事業展開の取組別に見た、経常利益率の傾向
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