第2部 中小企業の稼ぐ力

第2節 経営者年齢と稼ぐ力

前節までにおいて、経常利益率と自己資本比率の指標を用いて中小企業を四つに分類し、分類ごとに成長への意識や投資への取組等に対する違いを見てきた。

本節では、企業の成長という側面を、企業内の新陳代謝に焦点を当て分析を行う。

一般的に、企業の新陳代謝とは、産業全体の企業の参入、退出や開業、廃業を指すことが多いが、本節で取り上げる企業の新陳代謝とは、企業内における経営者や経営者層の若返りや交代を指し、経営者の年齢と企業の収益力の関係を分析していくこととする。中小企業の場合、経営状況の改善、悪化は経営者の手腕に依存している場合が多い。企業が成長する上で、経営者の新陳代謝を進めることは、重要な課題の一つといえるであろう。

本節では、このような認識のもと、まずは経営者年齢の現状を確認する。これを踏まえた上で、経営者の年代の違いによる、成長への意識や投資意欲の違いを分析し、最後に、経営者が交代したことによる業績への影響を確認する。

1 経営者年齢の現状と経営者年齢による意識の差

■経営者年齢の現状

はじめに、中小企業の経営者年齢の現状を確認する。第2-6-37図は、1995年から5年ごとに代表者年齢の推移を示したものである。これを見ると、1995年では、経営者年齢のピークは47歳であるが、2000年代に推移するにつれ、年齢層のピークもシフトし、2015年では、ピークの年齢は66歳となっている。

第2-6-37図 年代別に見た中小企業の経営者年齢の分布
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続いて、第2-6-38図は、産業別に、経営者の65歳以上年齢の割合の推移を見たものである。製造業では、65歳以上年齢の割合が15%ポイント程度増加し、非製造業では、10%ポイント程度増加していることが見て取れる。製造業と非製造業で、5%ポイント程度の開きはあるものの、経営者の高齢化が進展していることが、第2-6-38図からも分かる。

第2-6-38図 産業別に見た中小企業経営者の65歳以上年齢割合の推移
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さらに、企業の従業員規模別に経営者の高齢化割合の経年推移を見てみる(第2-6-39図)。これを見ると、1995年では、従業員規模が20人以下の企業において、65歳以上年齢の割合が最も低かったのに対して、2015年では、同規模の企業で、65歳以上年齢の割合が最も高くなっていることが見て取れる。企業規模が小さくなるに従い、企業内の新陳代謝が進んでいない傾向にあることがうかがえる。

第2-6-39図 従業員規模別に見た中小企業経営者の65歳以上年齢割合の推移
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コラム2-6-5

都道府県別に見た経営者年齢の分布

本コラムでは、都道府県別に経営者年齢の分布を見てみる。コラム2-6-5図は、1995年度と2015年度における、都道府県別の企業経営者年齢の増減を示したものである。例えば、滋賀県では、1995年から2015年にかけて経営者の65歳以上年齢割合が15%ポイント増加となっており、比較的、高年齢化が進んでいない地域であることが分かる。また、首都圏に着目すると、ほとんどの地域で高齢化割合が20%ポイント以上増加しており、高齢化が進んでいる様子が見て取れる。

コラム2-6-5図 都道府県別に見た中小企業経営者の65歳以上年齢割合の推移(1995-2015)
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