第2部 中小企業の稼ぐ力 

2 高収益企業と低収益企業のIT投資の取組

■高収益、低収益別のIT投資の効果

次に、高収益企業と低収益企業で、IT投資を行ったことにより得られる効果の違いについて見ていく。第2-2-13図は、「業務効率化のための基幹系システム」と「付加価値向上のための業務支援系システム」の二つのIT投資を行ったことによる効果を高収益企業と低収益企業で比較したものである。これを見ると、業務効率化のための基幹系システムの効果について、高収益企業は「業務プロセス合理化・意思決定の迅速化」の割合が最も高く、低収益企業に比べて効果を実感している企業が多い。また、付加価値向上のための業務支援系システムの効果についても、高収益企業は「業務プロセスの合理化・意思決定の迅速化」を筆頭に、「売上の拡大」、「利益率・生産性の向上」、「営業力・販売力の強化」の効果について、低収益企業に比べて効果を実感している企業が多いことが分かる。

第2-2-13図 高収益、低収益別に見たIT投資の効果
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以上の結果より、IT投資により得られる効果について、高収益企業の方がよりプラスの効果を実感していることが分かった。同じIT投資を行えば同じ効果を実感できるのであれば、高収益企業と低収益企業とで顕著な差は見られないはずである。ここからも、高収益企業は、IT投資の効果を実感し業績を更に向上させるための取組を行っていることが考えられる。

■高収益、低収益別のIT投資前後の取組〜IT投資の成功要因〜

ここからは、IT投資によって効果を得られている企業と得られていない企業のIT投資前後での取組の違い、IT投資の成功要因について、高収益企業、低収益企業それぞれのIT投資前後の取組に焦点を当てることで、具体的に分析していく。

第2-2-14図は、IT投資前後に行った取組のうち、投資効果を得るために有意であった取組を高収益企業と低収益企業で比較したものであるが、高収益企業と低収益企業では、「IT導入に併せた業務プロセス・社内ルールの見直し」、「IT導入に対しての各事業部門、従業員からの声の収集」、「IT導入に向けての計画策定」、「IT・業務改善等についての社員教育・研修の実施」、「ITの段階的な導入・導入後のモニタリング」等の取組状況に大きな違いがあることが分かった。

第2-2-14図 高収益、低収益別に見たIT投資の効果を得るために有意であった取組の実施状況
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以上より、ITを導入する際に、業務プロセスや社内ルールの見直しを行い、各事業部門や従業員から意見・情報を収集するとともに、従業員に関連教育を行いながら、段階的・計画的に実施すること、さらにIT導入後も投資の事後評価を実施することが重要であると考えられる。

事例2-2-5. 有限会社吉花

WEBサイトによる集客とクラウド・コンピューティングシステムの活用により業務効率化と利益率改善を実現させた企業

石川県加賀市の有限会社吉花(従業員44名、資本金300万円)は山中温泉の温泉旅館「お花見久兵衛」(客室50室)を運営している企業である。1958年の創業以来、顧客のメインは、旅行代理店経由での、会社旅行といった団体客中心の顧客構成であり、さらに、団体客の場合は宿泊のほかに宴会、物販等の売上もあるため、業況も手堅く推移していた。しかし、景気の低迷とともに、宿泊業全体の市場規模が縮小、さらに団体客から個人客へと顧客構成が変化、顧客単価が減少することで業況も悪化し、業務の複雑化に伴い従来のオペレーション体制では業務が回らなくなってしまった。

同社の吉本龍平社長は、従来の業務のやり方に危機感を感じ、立て直しを図るために2004年に入社。当時の吉本社長は、経営に関する知識や経験もなく、どのように同社の立て直しをしていいか困窮していた。そこで、IT導入により今まで俗人的であった業務プロセスの見える化を行うことで、同社の問題がどこにあるかを見付けるために、ITの導入を決意した。

まず、従来の旅行代理店に依存した営業体制では多様なニーズを持つ個人客の集客は困難であると判断し、直接顧客を獲得するために、2005年より自社のホームページ構築を開始した。多様なニーズに合わせた商品企画を行うとともに、ホームページのアクセスログを解析し、どのページが一番アクセスさせているかを調べたり、トップの写真を変えることで予約成約率がどのように変化するかを分析したりすることで、計画・実行・検証・行動のPDCAサイクルを繰り返し、自社ホームページの最適化を行っていった。

次に、複雑化した業務の効率化を行うために、クラウド・コンピューティングを利用したシステムを2010年に導入した。それまでは、電話・FAXの予約から予約台帳への転記等、全ての作業を紙でオペレーションしていたため、時間やコストがかかり、さらに転記ミス等も多く効率的ではなかった。同システムを導入することで、紙ではなく全てコンピュータ上でデータ管理するようにし、また部門ごとに分離されていたシステム(予約・フロント・会計)を連結することで合理化、省力化を実施、さらにシステム管理により集計された顧客属性や販売データを把握することで、効果的な広告宣伝や、顧客属性に合った商品開発を行うことが可能になった。

このように、実践と効果検証を繰り返しながら段階的にホームページの改良を重ねることで、WEB上での予約成約率の向上により売上を伸ばし、さらにクラウド型システムの導入により、業務効率化、コスト削減を行うことで利益率も向上させることに成功した。

しかし、これらのIT導入による社内改革は、当初は吉本社長が独断で判断し、従業員の声を聞くこともなくトップダウンにより実践したものであった。そのため、IT導入により一時的に業績は改善したが、時間が経つに連れて、従業員の反感の声も高まり、従業員の仕事へのモチベーションも低下し、接客サービスも低下、顧客満足度も合わせて低下してしまい、売上はまた徐々に減少していった。

吉本社長は、トップダウンによるIT導入が間違っていたことに気付き、そこからは、自らの考えを全従業員に伝えるとともに、従業員の声を吸い上げ、意見も反映させた上で今後の事業計画を策定し、さらに従業員一人一人への接客やITに係る指導・教育にも力を入れるように、社内体制の見直しを行った。そうすることで、徐々に従業員のモチベーションも回復し、接客サービスの質も改善し、顧客満足度も高まっていった。また、今までは一部の従業員しか導入されたシステムを活用していなかったが、全社的にITに係る教育を行うことにより、現場レベルでよりシステムが活用されるようになり、再び業務も効率化され、一度落ち込んだ業績も、徐々にもとの状態に戻りつつある。

同社の吉本社長は、「ITの導入と人材の育成により、我が社の業績は徐々に伸びてきてはいるが、まだまだ発展途上である。一般的にITの導入はコストがかかると思われがちだが、クラウド・コンピューティングシステム等低コストで導入できるものや、ホームページの解析等無料で利用できるものも少なくはない。旅館業は伝統産業であるため、まだまだ古くからの非効率なやり方が残っているため、適切なIT導入による効果は大きいだろう。」と語っている。

同社の吉本龍平社長

事例2-2-6. 株式会社小林製作所

従業員の意見を収集し、従業員が満足できるように
システムを改良することで生産性を向上させた企業

石川県白山市にある株式会社小林製作所(従業員99名、資本金1,000万円)は、半導体製造装置や工作機械向けの精密板金加工メーカーで、充実した生産設備と技術力を強みに、多品種・小ロット・短納期といった顧客ニーズに対応している企業である。

1919年の創業当初は、船舶や繊維機械のボルトの製造が主力であったが、時代の変化とともにボルトの需要が減少し、事業分野を板金・塗装にシフトした。当時の業態は少品種大量生産であった。1980年代にパーソナルコンピューターが普及し始め、当時まだ学生であった同社の小林靖典社長は、コンピューターの可能性に気付き、いち早くオリジナルの受注管理ソフトを開発し、当時社長であった同社の小林社長の父である小林康治の同意を得て同社に導入したが、経営者側の一方的なIT導入に対して、従業員からは、「パソコンに管理させ、従業員を下に見ている」と反発され、従業員によるIT活用が進まないのみならず、辞めていった従業員もいた。同社の小林靖典社長が入社し、1991年に社長に就任してからは、少品種大量生産という、従業員を機械同様に扱う同社のやり方に疑問を持つようになり、1999年には、スピードのみを重視する会社から、従業員一人一人の幸せを追求する会社に経営方針を転換し、従業員が生き生きと働き甲斐を持って仕事ができる環境づくりを目指し始めた。

変遷する時代とともに、取引先から海外生産と同等の安い価格が要求されるようになり、以前のように利益を確保することが困難になっていった。さらに、2008年にはリーマン・ショックが起こり、業界全体の売上が大幅に落ち込んだ。同社は、そのような会社の状況の変化や危機的試練が起こるたびに、ITの利活用によりコストを削減するために、それまでのシステムを改善し続けた。

まず、受注から出荷までの伝票を管理するのみであった受注管理ソフトを改良し、材料・作業状況・作業履歴・立体図・見積等が一目で分かり、受発注がEDIで行われる生産進捗管理システムを開発した。また、既存の取引先や、新規の顧客開拓による新たな受注が確保できるように、EDIで迅速な受発注を行うことにより取引先との信頼関係構築に努めた。次に、WEBカメラ90台を工場に設置し、全ての作業工程とその担当従業員の作業を記録し、さらに製品製造時の作業工程が瞬時に把握できるように、カメラの記録画像と生産進捗管理システムのデータをリンクさせた。

システムの改良を行う上で、小林社長は従業員の意見を収集し、問題を解決できるように、段階的にシステムの改良を行っていった。例えば、WEBカメラの設置に関しても、従業員から監視されているといった意見が出て反対されるのではないかと予測し、従業員に対して、WEBカメラ設置の目的は製造を記録することであり、それによって品質を高め、生産性を向上させ、従業員の仕事ぶりを公平に評価するためであると全従業員に説明し、賛同が得られた上で実施した。

このように、段階的にシステムの改良を行い、作業工程の見える化を行うことで、業務プロセスの効率化を実現することができた。また、風通しがよくなることで従業員のやる気や生産性も向上し、リーマン・ショックにより落ち込んでいた業績も、翌年には落ち込み前の水準までV字回復させることができた。

同社の小林社長は、「どれほど素晴らしいシステムであっても、従業員が満足できるシステムでないと期待した効果を得ることはできない。投資を成功させるためには、従業員との対話が何より必要である。これからどのような会社にしたいか、従業員一人一人の思いを理解し、共有することが最も重要である。」と語っている。

同社の小林社長(写真右)と黒川部長(写真左)同社の本社工場(写真下)

事例2-2-7. イーグルバス株式会社

独自のシステム導入による業務プロセス見直しと利用者へのアンケートという
デジタルとアナログの融合により、赤字路線を改善させたバス会社

埼玉県川越市にあるイーグルバス株式会社(従業員200人、資本金5,000万円)は路線バス、高速バス、観光バスの運送事業を営んでいる企業である。

同社は1972年の創業以来、高速バス・観光バス事業を展開していたが、2006年に埼玉県日高市の要請を受け、撤退を決めた大手バス会社から路線バス事業を引き継ぐことになったことから、高速バス、観光バスに加えて、新たに路線バス事業も開始した。

引き継いだ路線バス事業は、約40年前と全くダイヤも変わっておらず非効率的な運営であったため、恒常的な赤字状態であった。同社の谷島賢社長は、赤字路線の黒字化にはダイヤの最適化を行うことが重要であると考え、観光業で培った顧客ニーズを捉えるマーケティング手法と、ITを活用して運行データを把握・分析する科学的手法を融合させて、ダイヤ最適化システムを独自に構築し、導入した。具体的には、まず、基礎的なデータを収集するために、バスの乗降口にGPS(全地球測位システム)と赤外線乗降センサーを設置し、運行状況を常時管理し、運行便別の平均乗降人数や運行時間の遅れ、利用率の悪い停留所や時間帯等のデータを把握できるようにした。さらに、日々バスを利用している乗客のニーズをつかむために、システムの導入に合わせて乗客に対するアンケート調査も行った。そうして、ITにより得られた客観的なデータとアンケート調査結果を組み合わせることで、最適なコストで効率よく顧客満足度を向上させ、収益を上げるための運行ダイヤの再構築を行った。

さらに、システム導入により、バス路線の見える化だけでなく、運行コストについても見える化し、コスト削減ができるように、原単位(一定量の生産をするのに必要な各種生産要素の量)による管理を開始、バスの運行時間を短縮することにより削減できるコストを予測し、運行後も実際に削減できたコストについての事後評価も徹底することで、収益力向上に努めた。

同システムの導入とアンケート調査の取組により、路線バス事業の引継ぎ後4年で、乗客の顧客満足度を向上させることで従来よりも乗客数を増加させることに成功し、赤字から回復することができた。また、乗客の顧客満足度を維持するために、日々のアンケート調査とは別に、年1回改定するダイヤについての「ダイヤ改定評価アンケート」や、路線バスが運行する地域の住民の生活は年々変わるため、3年に一度地域住民を対象にしたアンケートも継続的に実施している。

このように、同社はITの活用により赤字路線の改善を行うことができたが、国土交通省によると、全国の7割以上の路線バス会社は赤字であり、厳しい環境下に置かれている。同社についても、同路線については、収支は大幅に改善したが、路線バス事業全体ではまだ赤字であり、今後より一層の生産性と収益力向上が求められている。同社の谷島社長は、「路線バス事業については、今後更に収益力を強化していかないといけないが、同社の経営指標として利益率向上を第一に考えてはいけない。また、データもうわべだけで捉えてはいけない。普段ほとんど利用されないバス路線がIT活用により把握できたとしても、その路線を利用している乗客のニーズをしっかり把握した上で、路線の要否を検討する必要がある。サービス満足度の向上が、収益力の強化につながってくるのである。」と語っている。

同社の路線バス(写真上)同社のレトロな「小江戸巡回バス」(写真下)

事例2-2-8. 株式会社ハッピー

サービスを一元管理する電子カルテシステムにより
事業の全体最適化と収益力向上を実現させた企業

京都府宇治市にある株式会社ハッピー(従業員25名、資本金5,350万円)は「衣服を長持ちさせて、お酒落を楽しんでもらう」ことをコンセプトに、営業店や取次店は持たず、電話やインターネット、宅配便を利用した無店舗型の営業展開で、全国の顧客に衣服の「ケアメンテサービス®」を提供している企業である。

今から37年前の1979年、同社の橋本英夫社長は、自ら開発したドライクリーニング装置を使ったクリーニング業を創業し、1990年代後半には取次店が50店舗近くまで事業規模を拡大させた。しかし、ドライクリーニングにおける洗浄力の限界だけでなく、時代とともに、競争激化による低価格化、ファストファッションの流行等の理由により、我が国のクリーニング市場が年々縮小していった。危機感を覚えた橋本社長は、全店舗を閉鎖して同社を2002年に設立。従来のクリーニング業から脱却し、世界初となる水洗い技術「無重力バランス洗浄技法®20」を2006年に発明するなど、高級素材の衣服でも傷めずに洗浄する、衣服の再生産サービスという新分野事業を開拓した。

同社では、ケアメンテのプロセスに、ITをうまく活用している。同社ではまず、現場の担当者が、顧客から預かった衣服の汚れや状態等をチェックし、システム上に個体別のカルテを作成する。営業担当者は、そのカルテに基づいて、顧客にカウンセリングを行い、最適なケアメンテメニューの提案とリスクの開示を行い、顧客の同意のもとにサービスを提供する。この基幹となる独自の「電子カルテシステム」の開発、導入により、カウンセリングや営業・決済等を行うフロントオフィスと、衣類の洗浄・仕上げ・出荷等のバックオフィスを串刺して一元管理ができるようになり、事業の全体最適化を行うことができた。また、作業の全工程をビデオカメラで記録することにより、従業員の技能等の経験知を暗黙知から形式知へ変換し、「見える化」して人材を人財に変えることで、高品質と高付加価値化を実現させ、顧客満足度の向上に成功した。

さらに、「電子カルテシステム」により蓄積されたデータベースに基づき、顧客ターゲットを絞り込んだ効率的な営業を行うとともに、注文用のWEBページを「電子カルテシステム」と連動させ、顧客がPCやスマートフォン等のモバイル端末からも注文できる仕組みをサイバーフィジカルシステム21として構築した。これらのビッグデータから、データマイニング22を用いた効率的な営業により、コスト削減とリピート率の向上、新規顧客獲得による売上拡大に努めた。

同社設立当初の「電子カルテシステム」は、現在のように様々な機能を持ったシステムではなかった。橋本社長の「現場で利活用できない機能は認めない。」という考えのもとで、現場の従業員の意見を反映しながら、試行錯誤を繰り返して段階的に自社システムの改良を重ね、利便性を向上する機能を拡充させていくことで、現場で利活用できるシステムに仕上げていった。

「電子カルテシステム」の全体マネジメントシステム完成後は、完成前と比べて、広告費を8分の1に抑えながらも売上高は前年比113%、営業利益については完成前の約5倍の実績を達成することができた。通常のクリーニングより高価格帯ながら、売上も順調に伸びている。また、マネジメントシステム完成後も、更なる業務の最適化とサービスの高付加価値化を行うべく、現場の意見を反映させながら、常にシステムの改良を重ねている。

同社の橋本社長は、「従来のクリーニングサービスの概念を超えた“ケアメンテ”という、大切な衣服を再生させる独自の再生産サービス産業を通して、真に豊かなライフスタイルを今後も提供していきたい。」と語っている。

20 ここでいう「無重力バランス洗浄技法」とは、水洗いの長所である洗浄効果と、ドライクリーニングの長所である型崩れ防止効果の両方を、物理的機械力ではなく手洗いよりも優しく水で洗うことにより実現できる、同社が独自開発した洗浄技法のことをいう(国内及び海外特許取得済)。

21 ここでいう「サイバーフィジカルシステム」とは、実世界(フィジカル)に浸透した組み込みシステム等が構成するセンサーネットワーク等の情報を、IT(サイバー)空間のコンピューティング能力を組み合わせることで、より効率のいい高度な社会を実現するためのサービス・システムのことをいう。

22 ここでいう「データマイニング」とは、大量に蓄積されたデータを自動的に検索することで、単純な分析では得られないパターンや傾向、相関関係等の情報を見つけるための技術・手法のことをいう。

同社のカウンセリングの様子(写真左)同社の作業(シルエットプレス)の様子(写真右)

コラム2-2-3

ITの活用と労働生産性

これまで、中小企業においてIT導入が進んでいるものの、今もなおパソコンや会計ソフト等を活用していない企業が少なからずいることを見てきたが、本コラムでは、IT投資と企業の労働生産性の関係について見ていく。

■ITの活用度と労働生産性

コラム2-2-3〔1〕図は、経済産業省「平成26年情報処理実態調査」、「平成26年企業活動基本調査」をもとに、企業におけるITの浸透度の違いによる労働生産性の水準を規模別に示したものであるが、企業規模を問わず、ITを事業部門別、機能別に活用している企業に比べて、ITの目的が不明確で、IT活用が不十分である企業の方が労働生産性の水準が低いことが分かる。

コラム2-2-3〔1〕図 規模別に見た企業におけるITの浸透度と労働生産性(2013年)
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前掲の第2-2-8図第2-2-9図で、中小企業は「財務・会計」、「人事・給与」といった、いずれの業種についても必要な業務領域において、パッケージソフト・システムによりITを活用している企業の割合が高いことを見てきたが、この結果からも、業務を効率的に行うためにパーケージの会計ソフト等を導入している企業は、業務効率化により生産性を向上させている一方で、会計ソフト等を導入していない企業は、ITによる業務効率化も社内で進まないため、導入している企業のように生産性を向上させることができていないことが考えられる。

■IT投資評価と労働生産性

次に、コラム2-2-3〔2〕図は、IT投資前後に行う取組別・規模別に企業の労働生産性を見たものであるが、企業規模を問わず、IT投資の際に事前・事後の効果予測を全く行っていない企業に比べて、行っている企業の方が労働生産性の水準が高いことが分かる。さらに、大企業については、事前の評価だけでなく事後評価も行いPDCAサイクルを確立している企業の方が、労働生産性の水準が更に高いことが分かる。

コラム2-2-3〔2〕図 規模別に見たIT投資評価と労働生産性(2013年)
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そのため、中小企業はこれまで以上に、IT投資の際に事前・事後の評価を徹底して行うことによって、大企業のように労働生産性を向上させることができると考えられる。

コラム2-2-4

IT導入、利活用のための支援策

■IT活用促進資金

中小企業が情報化を進めるために必要な、情報化投資を構成する設備等の取得に係る設備資金、また、ソフトウェアの取得やデジタルコンテンツの制作、上映等に係る運転資金の融資を株式会社日本政策金融公庫が行っている(コラム2-2-4図)。

コラム2-2-4図 【IT活用促進資金制度概要】

コラム2-2-5

攻めのIT経営中小企業百選

「攻めのIT経営中小企業百選」とは、経済産業省が関係機関の共催・協力のもとに主催する、攻めの分野でのIT利活用に積極的に取り組む中小企業をベストプラクティスとして選定する制度である。

我が国企業のIT投資は社内の業務効率化・コスト削減を中心とした「守り」に主眼が置かれているのに対して、米国企業においては、IT活用による製品・サービス開発強化や、IT活用によるビジネスモデル変革を通じて、新たな価値の創出や競争力を強化している。人口減少や高齢化、就業構造の変化等、中小企業を取り巻く環境が変化する中で、我が国の経済基盤を支える中小企業が「稼ぐ力」を高めていくためには、今後我が国企業においても「攻めのIT投資」を更に進めていく必要がある。

既存ビジネスの強化による利益の拡大や、新事業への進出によって新たな価値の創出を目指してITを利活用している中小企業が選定される。

2014年度から募集を開始しており、3年間で約100社を選定することを予定している23

23 第1回目として、2015年10月27日に中小企業33社を選定した。選定企業の事例は、経済産業省ホームページ(http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/it_keiei/100sen.html)で確認することができる。

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