第2部 中小企業の稼ぐ力

第3節 IT利活用に係る課題と高収益企業の取組

本節では、中小企業においてIT投資が進まない理由・課題及び、IT投資により期待した効果を得られている企業の成功要因について明らかにしていく。

本節では、「稼ぐ力」を強化するために稼ぐ力のベースとなる「売上高経常利益率」に注目し、収益力、すなわち売上高経常利益率の比較を通じて、投資により高収益体質になっている企業とそうではない企業のIT投資の効果・取組の違いを確認していく。具体的には、同一企業規模内での売上高経常利益率が上位25%の企業(以下、「高収益企業」という。)と下位25%の企業(以下、「低収益企業」という。)に分類し、分析を行っていく。

1 IT投資を行わない理由と課題

■IT投資未実施企業がIT投資を行わない理由

第2-2-11図は、IT投資が重要であると考えているものの、現在IT投資を行っていない企業に対して、IT投資を行わない理由を尋ねたものである。これを見ると、「ITを導入できる人材がいない」と回答した企業が最も多くなっており、次いで「導入効果が分からない、評価できない」、「コストが負担できない」の順になっている。この結果から、IT投資を重要視している企業は、自社の経営課題を解決するためにIT投資を行いたいものの、ITを導入するためのITを運用できる人材がおらず、またITの導入によりどのような効果を得られるかが分からず、さらにコストも負担できないために投資に踏み切れていない企業が多いことが分かる。

第2-2-11図 IT投資未実施企業のIT投資を行わない理由
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■IT投資実施企業の抱える課題

次に、第2-2-12図は、IT投資を行っている中小企業が今後IT投資を行っていく上での課題を、高収益企業、低収益企業別に見たものであるが、全体で見ると「情報セキュリティ等のリスク対応が必要」の課題が最も高く、次いで「社員のIT活用能力が不足している」、「IT人材が不足している」の順になっている。また、高収益企業は人材、低収益企業はコストへの課題を抱える傾向が強いが、高収益企業と低収益企業で抱える課題にそこまで顕著な差はないことが分かる。

第2-2-12図 高収益、低収益別に見たIT投資実施企業の今後IT投資を行う上での課題
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