9 大企業と中小企業の収益力の特徴
以上までの分析を踏まえ、第1-3-2図を念頭に置きつつ、大企業と中規模企業・小規模企業の収益力の特徴を整理すると以下のようになる。
〔0〕収益力
大企業と中規模企業・小規模企業との間の売上高経常利益率の差は、特に2000年代以降、大企業の利益率が中規模企業・小規模企業の利益率を上回る形で拡大した。
〔1〕需要開拓
大企業と中規模企業・小規模企業との間の1社当たり平均売上高の差は、特に1990年代後半以降、大企業の売上高が中規模企業・小規模企業の売上高を上回る形で拡大した。
〔2〕固定費の削減
大企業では、特に1990年代後半において、中規模企業・小規模企業と比べて固定費の削減が売上高経常利益率の上昇に寄与した。
〔3〕規模の経済
大企業では、特に2000年代以降、売上の回復に伴う生産の拡大により規模の経済が働いたことで、中規模企業・小規模企業と比べて相対的に売上高経常利益率が上昇した。
〔4〕交易条件
特に1990年代後半から2000年代前半にかけて、中小企業の交易条件が大企業と比べて相対的に悪化したことで、大企業と中小企業の間で交易条件の差が広がった。
〔5〕生産性の向上
中規模企業・小規模企業では、特に2000年代以降、大企業と比べて生産性の向上を通じた高付加価値化努力が売上高経常利益率の上昇に寄与したと考えられる。
このように、大企業は中規模企業・小規模企業と比べて固定費の削減、規模の経済の効果を通じて収益力を高めてきた。これに対して、中規模企業・小規模企業は大企業と比べて生産性の向上を通じた高付加価値化努力により収益力を高めてきたといえる。なお、以降で詳細を分析していくが、平均値で見た大企業と中規模企業・小規模企業の収益力の差の広がりは、低収益の中規模企業・小規模企業の収益悪化によって下押しされたことによりもたらされた面もあると考えられる。