第3節 まとめ
本章では、小規模事業者の持続的発展に向けた経営力の向上に重要と考えられる取組、地域経済における小規模事業者の役割を踏まえた地域の持続的発展に向けた取組について確認した。
第1節では、小規模事業者の経営力の向上に向けた重要な取組に着目し分析した。地域に根ざした事業を実施している小規模事業者は、人口減少等の外部環境の変化の中で、売上高や営業利益をこれまでどおり維持していくことが難しい状況に陥りつつある現状を示した。そのような中、小規模事業者が事業の拡大や持続的発展を遂げるために、小規模事業者の経営力の向上に向けた取組を分析し、「希少価値・プレミアム感」、「地域資源・文化の活用」などといった競合他社との製品・商品・サービスの差別化を意識することで、業績及び集客力の向上につながる可能性も示した。次に、小規模事業者の限りある経営資源を適切に管理する「経営管理の強化」について確認した。自社の取組や魅力を社外に発信している事業者や、従業員とビジョンを共有できている事業者は、比較的人材を確保できている傾向にあることや、副業・兼業人材の活用が人的リソースの補完だけでなく、業績や集客力の向上につながる可能性を示した。そのほか、自社の原価構成や利益を把握しておくことが、価格転嫁や適切な価格設定につながる可能性を示した。最後に、これらの取組を計画的に行うための「経営計画の策定と運用」について確認した。経営計画を策定し、運用を行うことが、業績及び集客力の向上につながるほか、当初の目的以外の副次的な効果も得られる可能性を示した。また、経営計画の策定・運用に当たっては、支援機関等を活用することも効果的であることを示した。
第2節では、地域経済の持続的発展に向けた取組について分析した。小規模事業者は、地域住民の働く場の提供や、付加価値の創出等で、地域経済の発展に貢献しており、人口減少が進む我が国において、地域経済における重要な役割を担っている可能性を示した。次に、小規模事業者の経営資源を次世代に引き継いでいくための事業承継と、起業・創業について確認した。小規模事業者の後継者難倒産件数は直近数年間の中で比較的高い水準にあり、事業承継は大きな課題の一つであることを示した。起業・創業については、起業関心層が資金面やビジネスコンセプトの立案などに課題があり、起業に踏み切れていない様子を確認した。支援機関及び地方公共団体では、創業支援の優先度が高まっている傾向にあり、様々な創業支援が実施されている様子が見受けられ、起業関心層がこれらの支援を活用して、起業・創業の実現につなげていくことが期待される。次に、地域の持続的発展に向けた取組として、小規模事業者の地域資源の活用状況を確認した。地域資源を活用する小規模事業者は、地域の既存の特産物である農水産品などを活用し、自社商品等の付加価値を高めているほか、地域の魅力の発信に貢献している可能性が考えられる。最後に、小規模事業者に期待される地域の社会課題解決について確認した。地域の社会課題解決に向けて営利事業として取り組んでいる事業者では、業績や集客力が向上している割合が高いことから、地域の社会課題解決を新たなビジネスチャンスとして取り組むことの重要性を示した。