2024年版「小規模企業白書」 第1章 物価高、人手不足等の厳しい経営環境への対応 | 中小企業庁

第1章 物価高、人手不足等の厳しい経営環境への対応

第1節 資金繰り支援

1.日本政策金融公庫等による資金繰り支援【財政投融資】

新型コロナウイルス感染症の影響により業況が悪化している中小企業・小規模事業者への資金繰り支援として、株式会社日本政策金融公庫において、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」及び「新型コロナ対策資本性劣後ローン」等を引き続き実施する。

2.民間金融機関を通じた資金繰り支援(信用保証制度)【令和6年度当初予算:14億円】

信用補完制度により、

〔1〕取引先の倒産、自然災害、取引金融機関の経営合理化等により経営の安定に支障を生じている中小企業者に信用保証協会が通常の保証枠とは別枠を措置、

〔2〕自然災害等の影響により経営の安定に支障を生じた中小企業者に対しセーフティネット保証4号を措置するとともに、引き続き、東日本大震災により被害を受けた中小企業者を対象とした保証制度(東日本大震災復興緊急保証)を措置する。

〔3〕加えて、コロナ禍や物価高等の影響により引き続き厳しい状況にある中小企業者へ、積み上がった債務の返済負担への対応や、事業再構築などの前向きな取組の促進などの資金繰り支援として、金融機関による継続的な伴走支援等を受けることを条件に信用保証料の事業者負担を大幅に引き下げるコロナ借換保証を継続し、

〔4〕併せて、経営サポート会議や認定経営革新等支援機関が経営改善計画策定支援事業によって策定を支援した再生計画等に基づき、中小企業者が経営改善・事業再生を実行するために必要な資金を支援する経営改善サポート保証について、コロナ禍の影響で特に経営状況の苦しい中小企業者に対して、据置期間を5年に延長した上で、信用保証料の事業者負担を大幅に引き下げる措置を継続。

〔5〕信用保証料上乗せにより経営者保証の提供を不要とする新たな信用保証制度に関して、新制度の活用を促す観点から制度創設後3年間に行った保証承諾案件に限り信用保証料の補助を段階的に実施。

〔6〕これらの資金繰り支援に加えて信用保証協会の利用者又は利用を予定している創業(予定)者、経営改善や事業再生、生産性向上に取り組もうとする者に対して、信用保証協会が地域金融機関と連携して、専門家派遣をはじめとした経営支援を実施し、資金繰り支援と一体となった支援を引き続き実施する。

3.LPガス等価格高騰対策(小規模事業者持続化補助金の加点措置)【令和5年度補正予算:2,000億円の内数】

小規模事業者等が経営計画を自ら策定し、商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む販路開拓等の取組を支援する中で、ウクライナ情勢や原油価格の上昇等の影響を受けている小規模事業者等については加点による優先採択を実施。

4.中小企業等事業再構築促進事業【既存基金を活用】

中小企業等の事業再構築を支援する「中小企業等事業再構築促進事業」について、今後執行面等での必要な見直しを行った上で実施する。

第2節 価格転嫁対策

1.中小企業取引対策事業【令和6年度当初予算:28億円】

〔1〕下請等中小企業の取引条件の改善

エネルギー価格・原材料価格の高騰や、我が国の雇用の7割近くを支える中小企業が賃上げできる環境を整備するためにも、価格転嫁対策や取引条件の改善が極めて重要。

このため(1)「価格交渉促進月間」による価格転嫁・価格交渉に関する取組強化、(2)下請Gメンや自主行動計画策定等による取引適正化等を政府全体で強力に進める。

(1)「価格交渉促進月間」による価格転嫁・価格交渉に関する取組強化、(2)下請Gメンや自主行動計画策定等による取引適正化、(3)パートナーシップ構築宣言の拡大・実効性向上など、特に、価格転嫁のしやすい取引環境の整備に向け必要な対策を講じていく。2023年度に実施する具体的な取組内容としては、下記の通り。

(1)「価格交渉促進月間」による価格転嫁・価格交渉に関する取組強化

毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」と設定し、広報や講習会を集中的に実施するとともに、月間終了後には、下請Gメンによる中小企業へのヒアリングやアンケート調査などのフォローアップ調査を実施し、その結果を公表する。また、その結果に基づき、価格転嫁や価格協議の状況について、問題があるおそれがある発注側企業に対して、下請中小企業振興法の「振興基準」に基づく指導・助言を実施する。年2回、「価格交渉促進月間」を実施することで、価格交渉の定着と浸透を図っていく。

(2)下請Gメンや自主行動計画策定等による取引適正化

下請Gメンを2023年1月から300名に増員し、中小企業の取引実態の把握機能と、業種ごとの課題の把握・分析機能を強化。下請Gメンが把握・分析した業種特有の課題については、中小企業庁の審議会等の場で、その業種を所管する省庁や各業界団体に対して直接に指摘・改善依頼。また、業種横断的な課題については、全ての業種に適用される「振興基準」に反映し、それを踏まえて各業界団体へ自主行動計画の策定を依頼する。

〔2〕下請代金支払遅延等防止法(下請代金法)の運用

下請取引適正化、下請事業者の利益保護のため、公正取引委員会と中小企業庁が密接な協力関係の下、下請代金法を執行する。公正取引委員会及び中小企業庁が親事業者等に対して書面調査等を実施するとともに、下請代金法違反に関する情報提供や申告等を受け付けて精査するなど、下請代金法の厳格な運用に努める。

〔3〕下請中小企業振興法(下請振興法)に基づく対応

大企業と中小企業との取引の適正化をはかるため、必要に応じて、下請中小企業振興法の「振興基準」を改正するなど所要の措置講じる。また、年に2回実施する「価格交渉促進月間」のフォローアップ調査結果を踏まえ、価格転嫁や価格協議の状況について、問題があるおそれがある発注側企業に対しては、下請中小企業振興法に基づく「指導・助言」を行う。

〔4〕下請かけこみ寺の運営

全国48か所に設置した「下請かけこみ寺」において、中小企業の取引に関する相談対応や、裁判外紛争解決手続(ADR)にかかる相談などを実施する。

〔5〕講習会・セミナーの開催等

(1)価格交渉促進月間の実施にあわせた、中小企業の担当者を対象とする価格交渉サポートセミナーや、(2)下請法の違反行為を未然に防止するための親事業者の調達担当者等を対象とした下請法や下請ガイドラインに関するセミナーなどを開催する。

2.パートナーシップ構築宣言の推進

サプライチェーン全体の共存共栄や、取引適正化を目指す「パートナーシップ構築宣言」について、宣言企業数拡大に向け、関係省庁・団体や地方自治体等を通じて周知を行うとともに、宣言の実効性向上に向けて、取組状況に関する調査や調査結果のフィードバック等に取り組む。

3.デジタル取引環境整備事情【令和6年度当初予算:5.0億円】

デジタルプラットフォーム(オンラインモール、アプリストア、デジタル広告)を利用する中小事業者等(出店事業者、デベロッパー、広告主、媒体社等)向けに、取引上の悩みや相談に専門の相談員が無料で応じる「デジタルプラットフォーム取引相談窓口」を設置するとともに、各種デジタルプラットフォームを巡る取引環境等を把握するための市場調査等を実施する。

第3節 省力化・賃上げ対策

1.中小企業省力化投資補助事業【令和5年度補正予算:999.9億円】

中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするために、人手不足に悩む中小企業等に対して、省力化投資を支援する。

IoT・ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品を「カタログ」に掲載し、中小企業等が選択して導入できるようにすることで、簡易で即効性がある省力化投資支援を講じていく。

2.中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金【令和5年度補正予算: 1,000億】

中堅・中小企業が、持続的な賃上げを目的に、足下の人手不足に対応するための省力化等による労働生産性の抜本的な向上と事業規模の拡大を図るために行う工場等の拠点新設や大規模な設備投資に対して補助を行う。

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