2024年版「小規模企業白書」 第2章 環境変化に挑戦する中小企業・小規模事業者等の成長支援 | 中小企業庁

第2章 環境変化に挑戦する中小企業・小規模事業者等の成長支援

第1節 事業再構築の後押し

1.中小企業等事業再構築促進事業【既存基金の活用】

中小企業等の事業再構築を支援する「中小企業等事業再構築促進事業」について、今後執行面等での必要な見直しを行った上で実施する。

2.保証料上乗せにより経営者保証の提供を不要とする信用保証制度【令和5年度補正予算:71億円】

経営者保証は、経営の規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方で、経営者による思い切った事業展開を躊躇させるなどの阻害要因となっていることを踏まえ、保証料上乗せにより経営者保証の提供を選択できる信用保証制度を創設。新制度の活用を促す観点から制度創設後3年間に行った保証承諾案件に限り信用保証料の事業者負担を軽減する措置を実施する。

第2節 生産性向上・技術力の強化

1.中小企業生産性革命推進事業【令和5年度補正予算:2,000億円】

賃上げ、インボイス導入など相次ぐ制度変更等に対応するため、中小企業基盤整備機構が複数年にわたり中小企業の生産性向上を継続的に支援する。具体的には、設備導入、IT導入、販路開拓、事業承継への支援を一体的かつ機動的に実施するとともに、革新的な製品・サービス開発、生産プロセス等の省力化、大胆な賃上げ、インボイスへの対応等を支援する。

先進事例を収集し、各種支援策とともに幅広く情報発信を行うとともに、制度変更に係る相談対応や国内外の事業拡大等に係る専門家支援等のハンズオン支援を行う。

2.成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)【令和6年度当初予算:128.5億円の内数】

中小企業等が行う、特定ものづくり基盤技術及びIoT、AI等の先端技術を活用した高度なサービスに関する研究開発や試作品開発等の取組を支援する。

3.イノベーション・プロデューサーによる活動支援実証事業【令和6年度当初予算:128.5億円の内数】

中小企業のイノベーション創出を促進するため、中小企業に不足しがちなマーケティング視点や産学官金とのネットワークを提供しつつ、新製品・サービスの事業化のために必要なイノベーションの実現を支援する支援プロフェッショナルを「イノベーション・プロデューサ-」と名付け、実証事業として活動を支援する。

4.産業技術総合研究所における中堅・中小企業への橋渡しの取組【令和6年度当初予算:産業技術総合研究所運営費交付金650.0億円の内数】

産業技術総合研究所(以下、「産総研」という。)の技術シーズと中小企業等のニーズを橋渡しする連携担当者が、産総研の成果活用等支援法人である株式会社AIST Solutionsとともに、適切な専門家を紹介し、自社だけでは研究できないテーマに関する受託研究や共同研究などをコーディネートする。

5.医工連携イノベーション推進事業【令和6年度当初予算:18.7億円】

ものづくり中小企業や医療機関等の連携による医療機器開発を促進するため、開発・事業化事業において、医療機器研究開発の採択を行う予定。

また、開発資金支援だけではなく、開発初期段階から事業化に至るまでの切れ目ない支援として、専門家による助言(伴走コンサル)も実施し、事業化を加速させるための取組を行う。

また、地域の特色をいかした独自性のある拠点整備を進めるとともに事業化人材を中心とした企業等への支援を行うため、地域における医療機器開発エコシステムの構築を目的とする地域連携拠点自立化推進事業の中でより医療機器開発に特化した、「医療機器実用化支援タイプ」の採択を行う予定。

6.SBIR制度に基づく支援

指定補助金等ではスタートアップ企業等によるイノベーションの促進に向けて、公募・執行に関する各省庁統一的な運用や、段階的に選抜しながらの連続的支援を実施する。また、新産業の創出につながる新技術開発のための特定新技術補助金等を指定するほか、支出の目標額等の方針の策定により、国の研究開発予算のスタートアップ企業等への提供拡大及び技術開発成果の事業化を図る。

7.中小企業等経営強化法(経営力向上計画)

特定事業者等が、経営力向上のための人材育成や財務管理、設備投資などの取組を記載した経営力向上計画を策定し、認定された事業者に対し、税制面や中小企業者に対する株式会社日本政策金融公庫の融資制度等の金融面の支援を講じる。また、経営力向上計画の電子申請の普及に努める。

8.中小企業経営強化税制【税制】

中小企業等経営強化法に基づき経営力向上計画の認定を受けた中小企業が、その経営力向上計画に基づき経営力向上設備等を取得した場合に、即時償却又は10%の税額控除(資本金3,000万円超の法人の税額控除は7%)ができる措置を引き続き講じる。

9.中小企業投資促進税制【税制】

機械装置等を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(税額控除は資本金3,000万円超の法人を除く)ができる措置を引き続き講じる。

10.先端設備等導入計画に係る固定資産税の特例【税制】

令和5年度に創設した先端設備等導入計画に係る固定資産税の軽減措置を市区町村が適切に執行できるよう関係省庁と引き続き連携していく。

11.研究開発税制(中小企業技術基盤強化税制)【税制】

中小企業の積極的な研究開発を促進する観点から、試験研究費の総額に応じて税額控除を認める「中小企業技術基盤強化税制」において、試験研究費の増加割合に応じた税額控除率(12%~17%)を適用する(大企業は一般型で1%~14%)とともに、試験研究費の額が平均売上金額の10%相当額を超える場合又は試験研究費の増加割合が12%を超える場合に控除上限を上乗せする措置を引き続き講じる。また、スタートアップとの共同研究や高度研究人材等の活用を促進するため、特別試験研究費(大学、国の研究機関、企業等との共同・委託研究等の費用)の額に係る税額控除制度を引き続き講じる。

12.地域の中堅・中核企業の経営力向上支援事業(中堅・中核企業の経営力強化支援事業)【令和6年度当初予算:21.3億円の内数】

地域経済の持続的な成長を実現するため、新事業展開を狙う地域の中堅・中核企業を対象に、専門家や他業種の企業等とのネットワーク構築を支援する。

2024年度においては、地域及び特定のテーマごとのプラットフォームを構築し、ワークショップの実施、専門家の派遣など、支援機関による重点支援を行う。

第3節 グリーン化・デジタル化への対応の促進

1.地域デジタル人材育成・確保推進事業【令和6年度当初予算:21.3億円の内数】

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を支える人材を育成するため、デジタル人材育成プラットフォームにおいて、デジタル人材が備えるべき知識・スキルを見える化したデジタルスキル標準に紐づけて、デジタルスキルの目的・レベルに応じた教育コンテンツを一元的に提示するポータルサイトを構築するとともに、ケーススタディ教育プログラムや、地域企業協働プログラムを実施する。

2.IT活用促進資金【財政投融資】

中小企業・小規模事業者の生産性向上に寄与するIT活用を促進するため、株式会社日本政策金融公庫による融資を引き続き実施する。

3.産業サイバーセキュリティ対策の強化に向けた環境整備事業【令和5年度補正:5.1億円の内数】

中小企業のサイバーセキュリティ対策を強化するため、企業規模等に応じて求められる効果的なセキュリティ対策・手法の提示や中小企業等とセキュリティ人材とのマッチングを促す場を構築する実証を実施する。

4.CASE対応に向けた自動車部品サプライヤー事業転換支援事業【令和6年度当初予算:6.2億円】

自動車の電動化等のCASEの進展で課題を抱える中堅・中小部品サプライヤーの事業転換等の実現に向け、電動車部品の実物を用いた実地研修や専門家の派遣、リスキリングに関する支援等を講じる。

第4節 海外展開支援

1.新規輸出1万者支援プログラム

経済産業省、中小企業庁、日本貿易振興機構(以下「JETRO」という。)及び中小企業基盤整備機構が一体となり、新たに輸出に取り組む事業者の課題に応じた最適な支援策を提案し、輸出の実現に向けて支援する。

2.現地ニーズ等活用促進事業【令和6年度当初予算:27億円の内数】

中小企業の海外展開を促進するため、JETROが海外現地のディストリビューター等からニーズ情報やトレンド情報を入手し、加工・編集した上で情報提供する。

3.中小企業海外ビジネス人材育成塾【令和6年度当初予算:27億円の内数】

中小企業の海外ビジネス担当者を対象に、座学やグループワークを通じた課題解決の実践や商談スキルの習得等ができるプログラムを提供する。

4.技術協力活用型・新興国市場開拓事業【令和6年度当初予算:37.9億円】

我が国企業の新興国市場獲得支援のため、以下の事業を実施する。

〔1〕海外進出先での事業を担う現地人材の育成のため、日本企業による日本国内での受入研修、現地への専門家派遣、海外高等教育機関での寄附講座開設等の取組への補助を行う。

〔2〕海外展開等を目指す日本企業における高度外国人材の活用を進めるため、海外学生等のインターンシップ受入れ機会を提供する。

〔3〕中堅・中小企業等が新興国の企業・大学等と共同で進める現地の社会課題の解決のための製品・サービスの開発や現地事業創出支援等への補助を行う。

5.安全保障貿易管理の支援【令和6年度当初予算:17億円の内数】

外国為替及び外国貿易法に基づく安全保障貿易管理の実効性を向上させるため、企業の大多数を占める中小企業を対象に輸出管理の普及・啓発及び管理体制構築を支援する。中小企業等を対象とした安全保障貿易管理に係る説明会及び相談会を開催し、専門家による輸出管理体制構築支援を行うとともに、企業の輸出管理コンプライアンスプログラム作成のための支援を実施するとともに、2023年度までの間に支援した中小企業等に対してその後の運用状況の確認、アドバイス等のフォローアップ支援を実施する。

また、日本商工会議所及び商工会議所と連携し、東京・名古屋・大阪の各商工会議所に輸出管理の専門相談窓口を設置する。

6.海外サプライチェーン多元化等支援【令和2年度第1次補正予算:235億円、令和2年度第3次補正予算:116.7億円】

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、我が国サプライチェーンの脆弱性が顕在化したことから、生産拠点の集中度が高く、サプライチェーンの途絶によるリスクが大きい重要な製品・部素材等の日本企業による海外生産拠点の多元化や高度化に向けた設備導入等の採択された事業について支援を実施する。

7.新輸出大国コンソーシアム【令和6年度当初予算:262億円の内数】

JETRO、中小企業基盤整備機構、商工会議所、商工会、金融機関等の支援機関を結集するとともに、幅広い分野の専門家を確保し、海外展開を図る中堅・中小企業に対して、事業計画の策定から販路開拓、現地での商談サポートに至るまで、総合的に支援する。

8.越境EC等利活用促進事業【令和6年度当初予算:262億円の内数】

海外の主要ECサイトに「ジャパンモール」を設置し、日本商品の販売促進を実施するとともに、自ら越境ECでの販売を目指す中堅・中小企業を支援する越境EC出品支援事業を拡大する。

9.J-Bridge事業【令和6年度当初予算:262億円の内数】

JETROが運営するビジネスプラットフォーム「Japan Innovation Bridge(J-Bridge)」を通じて、スタートアップを含む外国企業との協業・連携による、ビジネス開発や新規事業創出を目指す日本企業を支援する。具体的には、国内外JETRO事務所とコーディネーターが連携し、有望な海外スタートアップ企業等の協業先発掘や面談アレンジ、専門的助言、各種イベント等を実施する。

10.中堅・中小企業輸出ビジネスモデル実証事業【令和6年度当初予算:2億円】

中堅・中小企業の輸出を支援する民間事業者による新たなビジネスモデルについて、有望な事例を公募し、ECサイト構築費、プロモーション経費、商談会経費等について実証的に支援する。

11.現地進出支援強化事業【令和6年度当初予算:27億円】

中堅・中小企業等に対して、情報提供、相談対応、海外見本市や商談会等を通じた販路拡大支援、現地進出後の事業安定・拡大支援(プラットフォーム事業)、海外ビジネス人材の育成等、段階に応じた支援を提供し、輸出、海外進出、またそれらを発展させるまで一貫して支援する。

12.JICA海外協力隊(連携派遣)の活用【令和6年度当初予算:1,474億円の内数】

JICA海外協力隊(連携派遣)制度を通じて、グローバルな視野や素養を必要とする中小企業/小規模企業の社員を同隊に参加させ、隊員活動で培った交渉力、突破力、実現力、語学を含めたコミュニケーション能力等をいかし、帰国後に親元企業での様々な場面で活躍が期待される。また、本制度を中小企業/小規模企業に周知し、活用を促進することで、帰国した社員を通じて、これら企業の国際化・海外展開等を支援する。

13.中小企業等の海外展開支援(中小企業製品を活用した機材供与)【令和6年度当初予算:1,562億円の内数】

途上国政府の要望や開発ニーズに基づき、日本の中小企業等の製品を供与することを通じ、その途上国の開発を支援するのみならず、中小企業等の製品に対する認知度の向上等を図るもの。

14.中堅・中小企業向け海外安全対策【令和6年度当初予算:0.5億円の内数】

国際的な人の往来が活発化する中、中堅・中小企業関係者に、「ゴルゴ13の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル」、「中堅・中小企業海外安全対策ネットワーク」、デジタル広告、セミナー等を通じ、テロ・誘拐対策を含む海外安全に関する情報提供・啓発を行う。対面式のセミナーや訓練も継続して実施し、より実践的な安全対策を身に付けられるよう支援する。また、LINEやメールマガジンに加え、更に多様な媒体を活用し海外安全情報がより多くの中堅・中小企業関係者の目に直接触れるよう努める。

15.中小企業の貿易保険利用における企業信用調査料の減免措置

中小企業の貿易保険を活用した輸出支援のため、貿易保険を利用する際の格付付与に必要な取引先の信用情報の提供及び、取引先信用調査費用について、日本貿易保険(以下「NEXI」という。)が代わって信用情報を取得し、その費用を負担する等の措置を引き続き講じる。

16.中小企業による貿易保険の利用促進のための普及・広報活動セミナー・相談会等

日本政策金融公庫やJETRO等が全国で主催するセミナーや提携地方銀行等の行員勉強会等にNEXIから講師を派遣し、貿易保険の普及啓発を行う。説明会等では、中小企業向け商品である中小企業・農林水産業輸出代金保険を中心に、分かりやすい紹介動画や漫画冊子を活用し、引き続き貿易保険の一層の理解と普及に努める。

商工組合中央金庫との業務協力に関する覚書締結を通じた中小企業等へのセミナーの共同開催や海外展開支援、貿易保険利用促進。

17.貿易保険へのアクセス改善

中小企業の海外展開を支援するため、NEXIは、2011年12月に「中小企業海外事業支援ネットワーク」を発足。2024年2月時点110金融機関によるネットワークを構築)。2022年12月に日本政策金融公庫および中小企業基盤整備機構と3者で構築した「海外ビジネス支援パッケージ」の推進を開始。引き続きネットワークを通じた海外展開支援の拡大を図る。

日本商工会議所との連携協定締結を通じた中小企業等の海外展開支援、貿易保険利用促進。

商工組合中央金庫との業務協力に関する覚書締結を通じた中小企業等へのセミナーの共同開催や海外展開支援、貿易保険利用促進。

18.民間損保企業との協業による海外投資保険の提供(再保険スキーム)

中堅・中小企業の海外展開を支援するため、貿易保険法の施行令を2019年7月に改正し、NEXIが、民間損保企業から海外投資保険の再保険を引き受けることを可能とした。大手損保企業を中心に、同年8月以降、全国の損保代理店を通じ、海外投資保険を提供。

協業先である民間損保企業と共に、本スキームに関する知名度向上のための情報発信を継続。

19.海外展開・事業再編資金【財政投融資】

株式会社日本政策金融公庫が、海外展開または海外展開事業の再編を行うことが経営上必要な中小企業等の資金繰りを支援する。また、中小企業の海外子会社に対する直接融資の特例(クロスボーダーローン)による必要な融資を実施する。

20.JICA中小企業・SDGsビジネス支援事業

中小企業等が有する優れた技術や製品、アイディアを用いて、途上国が抱える課題解決に資するビジネスづくりを支援し、日本企業の海外展開、ひいては各地の地域活性化も兼ねて実現することを目指すもの。2024年度公示は、2022年度及び2023年度の試行的制度改編の結果を踏まえ、中小企業等にとって、より利用しやすい制度に改編予定である。

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