2024年版「小規模企業白書」 第3節 まとめ | 中小企業庁

第3節 まとめ

本章では、地域における小規模事業者の重要性と、地域の新たな担い手を創出するための起業・創業と事業承継の動向や課題について分析した。

第1節では、地域の多様な需要への対応や地域の多様な人材の自己実現の場、伝統やイベント等の地域コミュニティの担い手、地域の商店街や地域資源の活用など、複数の視点から小規模事業者の地域における貢献について確認した。まず、小規模事業者は、人口密度が低い地域になるほど存在感が相対的に大きいことを示し、顧客との信頼関係のもと、地域の需要に応えている重要な存在であることを示唆した。次に、小規模事業者は、特に高齢者や女性の雇用創出に貢献し、柔軟な働き方を提供しているほか、起業を考えている者の自己実現の場として重要であることを示した。さらに、多くの小規模事業者が地域とのつながりを感じていることに加え、地域貢献活動も意欲的であり、地域の祭りやイベントなどを維持するコミュニティ機能や地域資源の担い手としても重要な存在であることを示した。

第2節では、地域の新たな担い手を創出する観点から、起業・創業と事業承継について分析した。起業・創業の動向を確認すると、開業費用の少額化が進み、創業にチャレンジしやすい環境となる中で、29歳以下の起業者数や女性の起業者数が増加傾向にあることが分かった。今後も創業に挑戦する若年層が増えていくことが期待される。また、2016年から2021年にかけて新たに開業した企業は、存続してきた企業と比較して、労働生産性が高い傾向にあり、創業の増加による開業企業の参入は、労働生産性の向上につながる可能性が示唆された。

次に、小規模事業者の事業承継において、後継者の決定状況を確認すると、約8割の小規模事業者は後継者が決定しておらず、60歳代以上の小規模事業者においても過半数が決定していない状況が分かった一方、営業利益の黒字化や将来の事業継続性が見込める小規模事業者は、後継者が比較的決定しやすい傾向にあることを示した。また、後継者が決定している小規模事業者においても、そのほとんどが親族内承継であるが、今後は親族内に後継者がいないことや、後継者候補に引き継ぐ意思がないといった課題から、小規模事業者においても親族以外への事業の引継ぎを検討することも重要である。しかし、事業の譲渡・売却(M&A)に関する情報や知識の不足や、資金の引継ぎ問題から、親族外承継を小規模事業者単独で進めることは難しい。そこで、まずは身近な支援機関に事業承継について相談し、適切な手法を検討することが重要であることを示唆した。

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