第3節 まとめ

本章では、人材と並んで重要な経営資源となる「資金」について、その主な外部からの調達手法である金融機関借入れと、成長資金の調達手法として注目されるエクイティ・ファイナンスについて、その活用状況や効果などを分析した。

第1節では、金融機関の役割について、資金供給機能と経営支援機能のそれぞれに着目し、その取組状況や効果などについて分析を行った。まず、中小企業の資金調達動向について、感染症の感染拡大以降、中小企業向け貸出残高は増加傾向にある中、自己資本比率は感染症の感染拡大以前の水準であり、著しく財務の安全性が低下したといった傾向は見られないことを確認した。間接金融の主な担い手である金融機関は、中小企業の成長投資における資金供給において大きな役割を担っていることが示された。特に、金融機関が企業の投資計画の策定に関与することで、投資効果を高め得る可能性も示唆された。さらに、金融機関は資金面だけでは解決できない多様な経営課題を解決するため、様々な経営支援に取り組んでいることも分かった。特に、金融機関による経営支援の効果を高めるに当たって、中小企業においては、金融機関と定期的なコミュニケーションを図り、自社の経営状況や課題などを共有することの重要性が示唆された。

第2節では、中小企業の成長投資に向けた資金調達の手段として期待される、エクイティ・ファイナンスについて分析を行った。まず、エクイティ・ファイナンスの活用には「返済不要の資金を確保できる」、「金融機関からの評価が上がる」といった、金融機関からの借入れでは得られないメリットがあることを確認した。また、出資者からは「経営面・財務面における助言」などの様々な経営支援を受け得ることも示され、成長に適した資金調達手段である可能性が示唆された。また、エクイティ・ファイナンスを活用したことがある企業は「戦略的な経営」への取組が進んでいることが示され、エクイティ・ファイナンスの活用は、ガバナンスの構築・強化に寄与している可能性が示された。

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