トップページ 白書・統計情報 中小企業白書 2024年版 中小企業白書(HTML版) 第2部 環境変化に対応する中小企業 第1章 人への投資と省力化 第2節 多様な人材の活用

第2節 多様な人材の活用

本節では、副業・兼業人材の活用、シニア人材等の活用といった、多様な人材活用の取組状況について確認する。また、中小企業における人材活用においては外国人労働者の活用が有効なケースもあり、その活用状況等についても確認する。

1.副業・兼業人材

「従業員の『副業・兼業』に関するアンケート調査」17を用いて、「副業・兼業」に関する実態を確認する。第2-1-35図は、従業員の社外での副業・兼業の可否について確認したものである。これを見ると、約3割の企業が「『雇用による副業・兼業』を認めている」あるいは「今後『雇用による副業・兼業』を認める予定」と回答しているのに対し、「認める予定はない」は27.7%、「検討していない」は23.9%と、合わせて約半数であった。

17 公益財団法人産業雇用安定センターが2023年6月から7月にかけて実施。調査対象数:7,609社(センター賛助会員企業等)、回答数:1,054件(回答率:13.9%)。なお、回答企業の従業員規模は、100人未満:39.0%、~300人未満:26.0%、~1,000人未満:17.0%、~5,000人未満10.1%、5,000人以上8.0%と、大企業が含まれていると考えられる点に留意。

第2-1-35図 従業員の社外での副業・兼業の可否

第2-1-36図は、同調査を用いて、他社の従業員(常用労働者)を「副業・兼業」で受け入れているかを確認したものである。これを見ると、約7割の企業が「検討していない」、「今後も受入れる予定はない」と回答している。

第2-1-36図 社外からの「副業・兼業」人材の受入れ有無について

ここまで、従業員に副業・兼業の実施を認めているか、また、副業・兼業人材の活用状況について確認した。副業・兼業人材の活用が広がるためには、企業において従業員に副業・兼業を認める取組と、副業・兼業人材を活用していこうとする取組の両方が広がっていく必要があると考えられる。今回の結果からは一概にいえないものの、副業・兼業人材の活用が広がる余地は大きいと考えられる。

2.シニア人材

第2-1-37図は、シニア人材の活用状況を内部のシニア人材、外部のシニア人材に分けて確認したものである。これを見ると、内部のシニア人材の活用が進む一方、外部のシニア人材の活用があまり進んでいない状況が分かる。

第2-1-37図 シニア人材の活用状況

第2-1-38図は、シニア人材を活用している企業における、シニア人材の活用場面について見たものである。これを見ると、内部のシニア人材、外部のシニア人材いずれも「人材育成」、「業務効率化」などのために活用している企業が多いことが見て取れる。「人材育成」については、第2-1-8図及び第2-1-9図において「指導する人材の不足」が人材育成に取り組む上での課題として多く挙げられていることを確認したが、熟練工などのシニア人材が育成の場面で活躍している状況などが考えられる。

第2-1-38図 シニア人材の活用場面

第2-1-39図は、シニア人材を活用していない企業における、シニア人材を活用していない理由について確認したものである。これを見ると、「活用効果が不明」と回答する企業の割合が、内部のシニア人材においては「人手が足りている」に次いで2番目に高く、外部のシニア人材においては最も高い。

第2-1-39図 シニア人材を活用していない理由

ここまで、シニア人材について、中小企業における活用状況及び活用していない理由を確認した。特に、活用していない理由においては「活用効果が不明」、「活用の仕方が分からない」など、シニア人材の具体的な活用イメージ18が湧いていない中小企業も一定数存在することが示唆された。

18 「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」では、シニア人材の活用について「固定観念にとらわれず、長年培った経験・ノウハウが豊富なシニア人材」を活用し、「人材層や働き方の視野を広げ」ることが、人材に関する課題解決につながり得ると説明している。

3.外国人労働者

第2-1-40図は、現在の外国人労働者の活用状況について見たものである。「活用していない」企業が7割超と大半を占めるが、「外国人技能実習生」、「専門的・技術的分野」、「資格外活動を許可された労働者」などの外国人労働者を活用している企業もそれぞれ一定数存在する。第1-3-15図では外国人労働者の採用意向を確認したが、今後更に拡大していく可能性が考えられる。

第2-1-40図 外国人労働者の活用状況

第2-1-41図は、外国人労働者の平均勤続年数別に、育成・技能形成の取組を確認したものである。これを見ると、最も主要な活動は「日常の指導(OJT)による育成」であり、「1年以上~5年未満」と回答した企業は、「1年未満」と回答した企業に比べ、各活動に取り組んでいる企業の割合が高いことが分かる。また、「5年以上」と回答した企業では、「1年以上~5年未満」と回答した企業に比べて、各活動に取り組んでいる企業の割合がおおむね低くなっていることから、一定程度育成・技能形成が済み、育成コストが減少している可能性が示唆される。

第2-1-41図 外国人労働者の育成・技能形成の取組(平均勤続年数別)

ここまで、中小企業における外国人労働者の活用状況について確認した。外国人労働者の受入れに係る制度19を活用し、長期にわたる人材の定着を図りながら、必要な人材を確保していくことが重要といえよう。

19 第1部第3章第2節では、「育成就労」制度について紹介している。