第3節 生産性
続いて、生産性の現状について確認する。第1-3-16図は、企業規模別に労働生産性を見たものである。これを見ると、中央値については、小規模事業者と中規模企業のいずれも大企業と大きく差があることが分かる。一方で、中小企業の上位10%の水準(90%タイル)は大企業の中央値を上回っており、企業規模が小さくても労働生産性の高い企業が一定程度存在することが分かる。
第1-3-17図は、企業規模別、業種別に労働生産性の中央値を比較したものである。これを見ると、企業規模は同じでも、業種によって労働生産性が異なっており、「建設業」、「情報通信業」、「製造業」は中規模企業、小規模事業者が比較的高い労働生産性となっていることが分かる。また、業種が同じ場合、企業規模が大きくなるにつれて労働生産性が高くなっているものの、「宿泊業,飲食サービス業」や「生活関連サービス業,娯楽業」では企業規模間での労働生産性の差が小さくなっていることが分かる。
第1-3-18図は、上位10%(90%タイル)と下位10%(10%タイル)の値の差分を用いて、労働生産性のばらつきを業種別に見たものである。これを見ると、いずれの業種においても大企業の労働生産性のばらつきは、中規模企業、小規模事業者に比べて大きくなっている。業種においては、「宿泊業,飲食サービス業」、「生活関連サービス業,娯楽業」はばらつきが小さく、先の第1-3-17図でも生産性の中央値の差が小さかったことを踏まえると、労働生産性の分布が企業規模間で近いものとなっていることが分かる。
第1-3-19図は、総務省「労働力調査(基本集計)」、「人口推計」、内閣府「国民経済計算」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」、及び内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算年次推計」を用いて、就業者数の減少と国際競争に必要な生産性向上についての試算を行ったものである。これを見ると、就業者数は、推計値ベースで減少していくと考えられる。それを前提に、生産性が現状維持されると仮定した場合、一人当たり名目GDPは緩やかに低下していく。今後、就業者数が減少していくことが見込まれる中で、一人当たり名目GDPを増加させるためには、生産性を一層向上させていくことが必要となる。
また、2005年から2022年にかけての一人当たり名目GDP平均成長率は、日本はほかの国々と比べて非常に低い水準となっている。一人当たり名目GDPの成長率を欧米並みとするためには、今後の労働力の供給制約を前提として、生産性を向上させる必要があるものと考えられる。
第1-3-20図は、OECD加盟国の労働生産性を見たものである。これを見ると、日本はOECD加盟国平均よりも、労働生産性が低くなっている。以上の結果から、先の第1-3-19図で示したような労働供給制約や、第1-3-17図で示したような規模間格差を前提とすると、国際競争に必要な水準まで経済成長を進めるためには、中小企業の労働生産性を高めていく必要性がより一層高まっていることが示唆される。