第3節 まとめ
本章では、企業の新たな担い手となる後継者や起業・創業者の取組について分析を行った。
第1節では、事業承継前後における後継者の取組やM&Aで期待した成果を出すための取組について分析した。まず事業承継の動向を概観した後、事業承継実施企業は同業種平均と比較して企業パフォーマンスが高い傾向にあり、事業承継は企業にとって成長の機会であることを示唆した。次に後継者の準備や先代経営者の事業承継後の関与について分析し、先代経営者から経営を任せられるよう、自社の経営資源・財務状況の理解等を通じて、経営者としての意欲や能力を示すことや、先代経営者の事業承継後の役割等を検討しておくことの重要性を指摘した。
また事業承継を契機とした後継者の取組を分析し、後継者が事業承継を機に従業員の自主性を高めることや、事業再構築に新たに挑戦することが企業の成長につながる可能性を示唆した。従業員の自主性の向上に当たっては、従業員に対して経営理念といった経営の方向性を示す取組や権限委譲を進める取組などの有効性を指摘した。また事業再構築を行う際には、先代経営者が後継者へ経営を任せる意識を持つ一方で、後継者は早期の段階から事業再構築の検討に着手しつつ、従業員から信認を得ることや、自社の強みを認識・活用することの重要性を確認した。
さらにM&A成立前後の取組についても分析を行い、M&A成立前の早期の段階からPMIを検討することや、買い手企業と売り手企業双方でM&Aの目的や戦略を明確化することの重要性を指摘した。
事業承継やM&Aは企業の挑戦や成長を促す転換点といえる。事業承継やM&Aを通じて、後継者が新しい挑戦へ果敢に取り組み、企業の更なる成長・発展につなげていくことを期待したい。
第2節では、まず起業・創業を取り巻く環境について概観し、雇用創出という観点では、社齢の若い企業の貢献度は高く、起業の重要性が高いことを確認した。また、起業の際には様々な課題にも直面し得るが、目的ややりがいを持って事業を立ち上げている背景があり、こうした経営者の目的等を達成するために、起業を促進させることは重要であるといえる。
また、起業・創業までに経営者において重要な能力・強み等についても確認した。能力・強みを多く獲得するほど、その後、企業が成長している様子が確認され、同業での就業経験に基づき、知識やノウハウをいかしていくことの重要性を確認した。創業時の人材面での分析については、人材の人数・能力のそれぞれにおいて、創業時の獲得状況が、その後の企業の成長に影響を与えることも確認でき、経営者のつながり等を有効活用することの重要性も確認した。さらに、開業時の資金調達に際しては、開業資金の規模が大きいほど、その後の企業の成長に影響をもたらすことが確認された。外部からの資金調達に際しては、創業計画の記載状況が重要で、自社の強みを明らかにするとともに、競合や市場の把握等を創業時に取り組むことの有効性を確認した。
重要度が高い必要な人材については、企業の成長段階における推移を確認し、経営者自身も、創業以降から現在にかけて身につける能力・強みを増やすことの重要性を確認した。また、事業計画の見直しについても、高い頻度で実施することで、外部環境の変化に対応し得ることを確認した。