トップページ 白書・統計情報 中小企業白書 2020年版 中小企業白書(HTML版) 第2部 新たな価値を生み出す中小企業 第1章 付加価値の創出に向けた取組 第6節 外部連携・オープンイノベーションの推進

第2部 新たな価値を生みだす中小企業

第1章 付加価値の創出に向けた取組

第6節 外部連携・オープンイノベーションの推進

第5節では、企業が保有する経営資源のうち、特に無形資産の有効活用に着目したが、特に中小企業にとっては、いかに外部の専門性や人的な資源を活用できるかも併せて重要となってくる。本節では、中小企業における外部連携の取組実態とその労働生産性との関係を分析していく。加えて、外部連携の一活動として、近年にその重要性が高まっている「オープンイノベーション」について、同様にその取組実態と労働生産性との関係性を見ていく。

1 外部連携

〔1〕外部連携37への取組状況

37 ここでは、連携の深さを基準に、三つの類型(「業務委託(アウトソーシング)」、「業務提携(パートナーシップ)」、「資本提携」で分析をしている。

第2-1-96図は、連携をする分野別に、企業の外部連携への取組状況を示したものである。製造業では、「生産」、「物流」分野での業務委託を中心に外部連携に取り組む企業の割合が高い一方、「企画」、「調達」、「販売・サービス」分野で連携する企業の割合が低い。非製造業では、「生産」、「物流」に加えて、「設計・デザイン」、「販売・サービス」の分野での連携も進んでいる一方、「企画」、「研究開発」、「調達」分野で連携する企業の割合は低い。

第2-1-96図 分野別、外部連携の取組状況(2013年以降)

第2-1-97図は、分野別・外部連携の取組状況別に、企業の労働生産性の変化を見たものである。これを見ると、製造業では、特に「研究開発」や「調達」分野で「連携あり」が「連携なし」と比較して労働生産性の上昇幅が大きい。非製造業では、全分野において「連携あり」が「連携なし」と比較して、労働生産性の上昇幅が大きい。中でも「設計・デザイン」、「企画」、「生産」分野で特にその差が大きい。

第2-1-97図 分野別・外部連携の取組状況別、労働生産性の変化

〔2〕外部連携の目的、連携先選択の基準

第2-1-98図は、企業の外部連携の目的を示したものである。これによると、製造業・非製造業共に「外部の専門ノウハウを活用するため(効率化やスピード・品質の向上)」、「自社の中心業務にリソースを集中するため」、「他社と共同して、規模の経済を享受するため」と回答した企業の割合が高い。

第2-1-98図 外部連携を活用する目的として最も重視するもの

一方で、外部連携を活用する目的別に、企業の労働生産性の上昇幅を見ると、製造業では「アイデアや発想の補完をするため」と回答した企業において、非製造業では「その他38」、「他社と共同して、規模の経済を享受するため」と回答した企業において、労働生産性の上昇幅が高い(第2-1-99図)。

38 なお、非製造業で「その他」と回答した企業における外部連携を活用する目的の具体例としては、「納期を重視するため」、「受注量の調整のため」、「自社ではコストが合わないため」、「不足する人員を外部から補填するため」などが挙げられている。

第2-1-99図 外部連携を活用する目的として最も重視するもの別、労働生産性の変化

第2-1-100図は、製造業における外部連携の連携先選択の基準とその労働生産性の変化との関係を見たものである。これを見ると、製造業では、連携先を選択するに当たり、「技術力の高さ・独自性」、「品質の安定性」、「対応スピードの速さ」を重視する企業が多い。

一方、労働生産性の変化との関係を見ると、「価格の低さ」、「専門性の高さ」、「財務の健全性」、「量的な面での対応能力(キャパシティ)」を選択する企業で、労働生産性の上昇幅が大きいことが分かる。

第2-1-100図 外部連携の連携先選択の基準と労働生産性の変化(製造業)

第2-1-101図は、非製造業における外部連携の連携先選択の基準とその労働生産性の変化との関係を見たものである。これを見ると、非製造業では、「技術力の高さ・独自性」、「長年の信頼関係・実績」、「品質の安定性」、「対応スピードの速さ」を重視する企業の割合が高い。

一方、労働生産性の変化との関係を見ると、「対応スピードの速さ」、「技術力の高さ・独自性」に加えて、「地理的な近さ」を選択する企業で労働生産性の上昇幅が大きい傾向にあった。

第2-1-101図 外部連携の連携先選択の基準と労働生産性の変化(非製造業)

事例2-1-16では、開発フェーズに応じて適切に連携先を選択し、独自の技術の確立とその事業化を達成した企業の例を紹介している。

事例2-1-16:株式会社東亜電化

「開発フェーズに応じた外部連携の活用による事業化やライセンス供与による収益化を実現する企業」

岩手県盛岡市の株式会社東亜電化(従業員111名、資本金3,500万円)は、めっき処理及び特殊表面処理を行う企業であり、金属と樹脂を強固かつ均一に接合する表面処理技術「TRI System(トライシステム)」や高離型性(金型などに粘着せず離れやすい性質)を有する薄膜形成技術「TIER(ティア)コート」などのオンリーワン技術で、大手自動車メーカーや大手半導体・電子機器メーカーからも注目を集めている企業である。

同社は1959年に創業以来、装飾や防さびなどの一般的な金属めっき事業を継続的に受注していたが、同社の三浦宏社長は、かねてより、従来のめっき事業に代わるオンリーワンの技術を模索していた。そんな中、1976年に、岩手大学が研究開発を進めていたトリアジンチオール(岩手県の松尾鉱山から採れる硫黄の有効活用を目的に開発された有機化合物)に関する新聞記事を見て、同物質は表面処理に活用できるのではないかと考え、同大学の研究室を訪れた。翌年から同大学との研究開発をスタートし、国や県による各種補助金を受けながら、共同研究を続けた。特に、1990年頃からは価格の安い東南アジアなどの競合企業も台頭する中、同社はオンリーワン技術の確立に向け、従業員の約1割を研究開発部門に当て、三浦社長の強い意志で開発を継続した。長年の努力が実り、2003年にトリアジンチオールを活用した、前述の表面処理技術「TRI System」の開発に成功した。同社では研究開発フェーズごとに提携先を広げ、基礎研究は岩手大学と共同で、応用研究では岩手県工業技術センターと共同で実施した。また、現在は商用化・事業化のステージで、更なる事業拡大に向けて民間企業との研究開発に注力している。

また、同社では、開発した新技術の特許権の取得・活用にも積極的に取り組む。かつて、同社では技術流出を恐れ、めっき技術に関するノウハウを自社内に閉じてブラックボックス化していたが、新技術開発後、大手自動車メーカーから共同開発の誘いがあった際に、同取引先から技術の裏付けとして特許を取得するよう要請を受け、特許出願に踏み切った。その後、同自動車メーカーとの共同開発自体は量産化には至らなかったが、他の取引先に対するライセンス供与につながったことを受けて、積極的に特許を取得・活用するオープン戦略に方針転換をした。その結果、現在では同社のライセンス収益は、利益額の4割を占めるまでに至っている。

今後、同社では電気自動車やロボットなどの普及を見据え、めっき処理に要求されるミクロレベルの技術から、次世代の製品に要求されるナノレベルの表面処理技術を確立していく意向である。「研究開発フェーズに応じて、連携先を上手く使い分けて、事業化につなげていくことが重要である。今後も、研究開発に注力し、自社のオンリーワン技術を磨いていきたい。」と同社の専務取締役の三浦修平氏は語る。

金属と樹脂を接合する同社の技術「TRI System」、同社技術(「TRI System」)の適用例

コラム2-1-5

外部連携の状況別、知的財産戦略の使い分け

ここでは、研究開発分野での外部連携の状況別に各社が採る知的財産戦略の状況を見ていく(コラム2-1-5図)。

製造業では、業務委託(アウトソーシング)を実施する企業は、重要な技術・ノウハウを含めて知的財産権により保護を図る企業の割合が多くなる一方で、業務提携(パートナーシップ)を実施する企業は重要な技術・ノウハウは企業秘密として保護し、一部の技術・ノウハウは知的財産権により保護を図る企業が多い。

非製造業では、業務委託(アウトソーシング)を実施する企業は、重要な技術・ノウハウは企業秘密として保護し、一部の技術・ノウハウは知的財産権により保護を図る企業が多く、業務提携(パートナーシップ)を実施する企業は、原則企業秘密として保護を図る企業の割合が高い。

以上で見たとおり、知的財産権には、技術やノウハウが権利として保護されるメリットがある一方で、外部に技術を模倣されるリスクも存在する。外部の企業との連携の深さや事業の性質に従って、前節の「知的財産権の活用」の項でも言及したとおり、何を秘匿し、何を権利化するのかといった知財のオープンクローズ戦略を採用している企業が一部存在する状況が推察される。

コラム2-1-5図 研究開発分野での外部連携の状況別、知的財産戦略

コラム2-1-6

自動車の開発分野での連携におけるシミュレーション技術(モデルベース開発)活用の重要性

自動車産業は、電動化、自動化などのCASEと呼ばれる百年に一度の大きな変革に直面している。高機能化(電子制御システム及び安全運転システムの導入、ネットワーク化)・複雑化が進む自動車開発の徹底的な効率化が不可欠となっており、開発・性能評価のプロセスをバーチャルシミュレーションで行うMBD(モデルベース開発)の取組の重要性が拡大している。

経済産業省では、2015年より産官学連携の「自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会」を複数回開催し、企業間でモデルを流通させる仕掛け、モデル自体の高度化、自動車会社ごとにばらばらだったモデルの作り方のルールの統一などを議論するとともに、サプライチェーンのグローバル化に対応するため、欧州で同様の活動をしている標準団体とも連携している。

また2017年からは次世代自動車などの開発加速化に係るシミュレーション基盤構築事業として、モデル作成のガイドラインおよびガイドラインに準拠した車両評価性能モデルを構築し、開発プロセス(すりあわせ)の高度化を進めている。

こうした取組により、一部大手の自動車メーカーやサプライヤーを中心にMBDの採用が進んでいる。今後は更に中小企業などにも広がっていくことが期待されるが、設備やソフトウェアの導入負担が大きいことに加え、シミュレーションを活用するための人材の不足などの課題もある。

コラム2-1-6〔1〕図 モデル流通におけるありたい姿と現状のギャップ

こうした課題を乗り越え、中小企業においてMBDを活用した事例として、広島県東広島市の株式会社ヒロテックツーリング(従業員32名、資本金3,000万円)を紹介する。同社はプレス金型の製作リードタイムの短縮とビジネスの拡大を狙いとして、プレス成形シミュレーションを活用する業務プロセスの改善に取り組んでいる。

当初は取引先からの要望に応えるためにシミュレーションを一時期アウトソーシングしていたが、競争力を向上するため、同社においてシミュレーションを内製化することを決めた。

内製化に当たっては、設備(ハード・ソフト)や人材(技術習得)が課題となったが、ひろしまデジタルイノベーションセンター(公益財団法人ひろしま産業機構)にあるプレス成形シミュレーションソフトの安価な共用サービスや広島経済同友会が運営するデジタルものづくり塾(地場企業群が先行企業などのアドバイザーによる支援を受けつつ共同でデジタルツールを学習・実践する場)に積極的に参加することで内製化に成功した。

これによって、シミュレーション結果を社内で評価・検討するというフィードバックのサイクルが回せるようになり、プレス金型のトライ回数が導入前と比べて半減するとともに、板金部品の割れやしわの防止による品質向上も実現できた。今後はシミュレーションノウハウをチェックリスト化し、その活用によりシミュレーション精度を高め不具合の見落とし防止を図ることで、更なるトライ回数の削減を進め、最終的には手戻りゼロを目指す。

また、シミュレーションの内製化によるプレス精度の向上の結果、取引先との関係も変わりつつあり、取引先から同社へ指示するといった一方的なやり取りから、同社からの検証結果のフィードバックや改善提案が可能となってきている。

将来は、金型製作前に成形シミュレーションの結果・モデルを取引先に提出し、取引先がそれを部品設計に反映するという、すりあわせのデジタル化・双方向化を行うことで、同社における最適な生産工程の実現ができるようにするとともに、取引先における最適な部品設計にも貢献したいと考えている。

このように取引先とデジタル技術でも連携できるようになることで、新たな付加価値を生み出す企業に成長し、ビジネス拡大につなげていくことを同社は考えている。

コラム2-1-6〔2〕図 MBDの活用による業務プロセスの改善

今後、自動車だけでなく製造業全体でモデルベース開発の必要性が高まっていく中で、自動車業界がその先駆けとなり、サプライチェーン全体で開発プロセスの効率化が進展していくことが期待される。

2 オープンイノベーション

製品・サービスの高度化・複雑化・モジュール化、製品・サービスのライフサイクルの短期化や新興国プレイヤーも含めた競争の激化から、これまでの自前主義でのイノベーションには限界が来ており、外部の技術やノウハウを活用し、新しい技術開発や新しい製品化・サービス化を実現するオープンイノベーションの重要性が指摘されている39

39 オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「オープンイノベーション白書第二版」

中でも、外部技術を自社内に取り込み連携をする「アウトサイドイン型」や自社の技術・知識を社外に発信することで連携を促す「インサイドアウト型」だけでなく、広く連携先を募り共同開発をしていく「多対多の連携型」へと取組が広がっているといわれている。

ここでは、上記トレンドも踏まえ、中小企業のオープンイノベーションへの取組状況や効果を把握するとともに、取組を促進するためのポイントについて分析していく。

〔1〕オープンイノベーションの取組状況

第2-1-102図は、先に紹介した三つのオープンイノベーションのタイプ別に、取組状況を見たものである。これによると、「アウトサイドイン型」に取り組む企業の割合は製造業、非製造業でそれぞれ19.0%、16.1%存在する一方で、「インサイドアウト型」は12.0%、8.4%、「多対多の連携型」は4.2%、4.5%にとどまる。

第2-1-102図 オープンイノベーションの取組状況(2013年以降)

第2-1-103図は、企業のオープンイノベーションへの今後の取組意向を示したものである。今後、オープンイノベーションに「取り組みたい」と回答した企業の割合は全てのタイプで増加しているが、特に「多対多の連携型」の現状からの伸び率が大きいことが分かる。

第2-1-103図 オープンイノベーションへの今後の取組意向

〔2〕オープンイノベーションの取組効果

第2-1-104図は、オープンイノベーションの取組効果を見たものである。直接的なプロダクトイノベーションの効果(「新規の技術開発や製品・サービス化」)のほかに、「知識・ノウハウの蓄積」、「人材育成」、「新たな顧客ニーズの発見」といった副次的効果を挙げる企業の割合も高いことが分かる。「特段の成果は上がっていない」と回答する企業は、5%未満にとどまり、何らかの成果を得た企業が多いことが分かる。

第2-1-104図 オープンイノベーションの取組効果

第2-1-105図は、オープンイノベーションと労働生産性との関係を示したものである。非製造業の「多対多の連携型」を除いて、全てのタイプでオープンイノベーションに取り組んだ企業が、取り組んでいない企業と比較して、労働生産性の上昇幅が大きい傾向が見られた。

第2-1-105図 オープンイノベーションの取組状況別、労働生産性の変化

また、非製造業の「多対多の連携型」についても、プロダクトイノベーション(新規の技術開発や製品・サービス化)に成功した企業に絞って見ると、取り組んでいない企業と比較して、労働生産性の上昇幅が大きい傾向が確認された40第2-1-106図)。

40 オープンイノベーションの取組を通じたプロダクトイノベーションへの成功が、2013年から2018年にかけての労働生産性の上昇率に与える影響について、回帰モデルを用いた計量分析も行ったところ、非製造業において、それぞれ「アウトサイドイン型」では+41.1%pt、「インサイドアウト型」では+69.5%pt、「多対多の連携型」では+97.8%pt、上昇率の増加へ統計的に有意な影響を与えることが分かった。詳細は付注2-1-1を参照のこと。

第2-1-106図 プロダクトイノベーションに成功した企業における、オープンイノベーションのタイプ別、労働生産性の変化(非製造業)

〔3〕オープンイノベーションの連携先

企業のオープンイノベーションの連携先を見ると、「同業種の国内中小企業」が最も多く、次いで「異業種の国内中小企業」、「同業種の国内大企業」が続く(第2-1-107図)。

第2-1-107図 オープンイノベーションの連携先

一方で、連携先と労働生産性の上昇幅との関係を見ると、「異業種企業」や「大学」と連携する企業は、「同業種企業」と連携する企業と比較して、労働生産性の上昇幅が大きいことが分かる(第2-1-108図)。

第2-1-108図 オープンイノベーションの連携先別、労働生産性の変化

以上で述べたところと関連して、事例2-1-17では、異業種企業や大学と連携することで、新たな製品の共同開発に成功した企業の例を紹介している。

事例2-1-17:北陸テクノ株式会社

「産学官連携を通じて新たな分野に挑戦し、環境に優しい『もみ殻処理炉』の共同開発に成功した企業」

富山県射水市の北陸テクノ株式会社(従業員40名(グループ全体)、資本金3,000万円)は、非鉄金属の溶解炉、熱処理炉の設計・製作などを行う工業炉メーカーである。自動車部品、建材、鉄鋼、電子部品メーカーなどの幅広い顧客との取引実績を有している。

同社が所在する富山県射水市は米作りの盛んな地域で、毎年3,000トンのもみ殻が排出される。しかし、もみ殻の明確な利活用方法が見いだせず、また2000年以降は野焼きが事実上禁止となり、処分に困る農業従事者は最終的に産業廃棄物として処理せざるを得ず、1トン当たり1万円強のコスト負担を強いられている。

こうした背景から、2010年に射水市、JAいみず野、富山県立大学が共同で、もみ殻のリサイクル技術の開発を目的とした「もみ殻循環プロジェクトチーム」を発足。同社は、地理的・技術的な観点で研究開発への対応力を評価され、プロジェクトチームのパートナーとして選出された。その後、同社は複数の外部研究者と共同し、保有する炉の高度な燃焼制御技術を基に、有害物質を排出せずに大量のもみ殻を処理し、かつ、リサイクル可能なもみ殻灰を製造できる、もみ殻処理炉の開発に成功した。2018年5月には同処理炉が導入された、全国初のもみ殻循環施設が建設され、もみ殻の完全リサイクル化に向けた実証が進んでいる。

さらに、同社はもみ殻をリサイクルした製品開発にも取り組む。もみ殻から抽出される非晶質である高可溶シリカ灰に着目し、農業分野のケイ酸肥料開発に取り組んでいたが、プロジェクトチームに参画する外部研究者からのアドバイスを受け、更に工業分野にも進出した。もみ殻灰の特性を利用し、弾性率が従来比1.5倍のゴムマット製品や高強度のコンクリート製品の試作に成功し、現在鳥取県の製造業者と共に製品化を目指している。

同社子会社NSIC株式会社でもみ殻処理炉の事業を統括する木倉崇取締役は、「日本の米の生産量は全世界の数%にすぎない。将来的には、日本だけでなく中国やベトナムなどでも通用するビジネスにしていきたい。」と言う。また、同社の木倉正明社長は、「強みである熱処理炉事業にも注力しながら、もみ殻処理炉の実証を進めるとともに、もみ殻灰を用いた製品の商品化を進めていく。」と語る。

共同開発に成功したもみ殻処理炉、もみ殻をリサイクルして開発した製品

〔4〕オープンイノベーションの促進に向けたポイント

次に、オープンイノベーションの促進に向けてどのようなポイントが重要となるかを見ていく。

第2-1-109図は、企業がオープンイノベーションを成功させるために重要と考えるポイントを示したものである。これによると、「連携企業との事前の信頼関係」、「明確なゴールの設定と共有」、「自社・連携先の意思決定スピードの早さ」が重要であると回答する企業の割合が高い。

第2-1-109図 オープンイノベーションを成功させるために重要と考えるポイント

第2-1-110図は、オープンイノベーションに取り組んでいないと回答した企業にその理由を確認したものである。製造業・非製造業共通で「特になし」、「社内の人員が少ない」、「自社内に他社が活用できる技術やノウハウがない」と回答する企業の割合が高い。一方で、技術やリソース不足以外に、「自社の技術やノウハウ流出の可能性がある」や「外部の連携先・仲介者が見つからない」と回答する企業も製造業を中心に多い。

自社の技術・ノウハウの流出懸念に関しては、(独)工業所有権情報・研修館(INPIT)の知財総合支援窓口(コラム2-1-4)などを活用しながら、オープンイノベーションにおける知財リスクの管理に取り組むことが重要となる。

第2-1-110図 オープンイノベーションに取り組んでいない理由

また、「外部の連携先・仲介者が見つからない」という回答も見られ、連携先のマッチングに向けた取組や仕組みが必要とされる。

現状では、オープンイノベーションに取り組むに当たり、「仲介者からの働きかけがあった」と回答した企業は製造業で17.2%、非製造業で13.9%存在し、「仲介者を介して、連携先に働きかけた」と回答した企業は製造業で7.1%、非製造業で8.0%存在する(第2-1-111図)。

第2-1-111図 オープンイノベーションに取り組んだきっかけ

また、オープンイノベーションの仲介者としては、「同業種の国内中小企業」が34.4%で最も多く、次いで「異業種の国内中小企業」、「同業種の国内大企業」の順となっている(第2-1-112図)。一方で、事例2-1-18事例2-1-19のように、オープンイノベーション促進の担い手として、ビジネスマッチングの支援・仲介サービスを提供する専門事業者や地域金融機関などの役割も重要となる。

第2-1-112図 オープンイノベーションの仲介者

事例2-1-18:Creww株式会社

「事業会社とスタートアップ企業とのマッチング・共創による新規事業創出を支援するオープンイノベーション・プラットフォームを運営する企業」

東京都目黒区のCreww株式会社(従業員50名、資本金4億6,455万円(資本準備金含む))は、2012年に創業した、国内最大級のオープンイノベーション・プラットフォームを運営する企業である。豊富な経営資源を有し、新規事業創出を目指す事業会社と、独自のアイデアやノウハウを有するスタートアップ企業とをマッチングし、両者の共創による新規事業の創出を支援するサービスを提供している。

創業のきっかけは、同社の伊地知天代表取締役が、米国での留学経験から対照的な日米のスタートアップ企業の成長環境に対して抱いていた問題意識であった。米国のスタートアップ企業はエンジェル投資家から、資金提供、事業への助言、人脈形成などの様々な支援を受けることができるが、日本のスタートアップ企業は同様の支援が受けられない。日本にはエンジェル投資家の数が少なく、今からエンジェル投資家を増やすよりも、事業会社が有する経営資源を解放する方が実状に合っているとの発想から、事業会社とスタートアップ企業をマッチングするサービスを立ち上げた。

立ち上げたサービスの一つである、「creww accele(クルーアクセラ)」では、サイト上で、事業会社が実現したい新規事業案(プログラム)を、提供可能な経営資源と共に公開すると、関心を持ったスタートアップ企業が応募し、新規事業の協業アイデアを事業会社に提案する仕組みになっている。プログラムの期間は約8か月で、公募、企業のマッチング、新規事業計画の実証実験までを実施する。オープンイノベーションにおいては、協業する理由や協業のゴールが不明確であると失敗しやすいが、同社では数度のミーティングを繰り返す中で、それらを明確化・言語化していき、プログラムを通してオープンイノベーションを成功に導く支援をしている。

現在では、事業会社約130社とスタートアップ企業約4,500社が同サービスに登録しており、2020年3月現在までに、134のプログラムが公開され、スタートアップ企業から6,047件の応募があり、548件のマッチングが実現している(協議進行中案件を含む)。

例えば、物流大手のセイノーホールディングス株式会社は、自社アセットを活用した新たなビジネスの展開を模索し、農業を始めとした一次産業への参入を検討していた。そんな中、「creww accele(クルーアクセラ)」で、工場野菜に関するノウハウを有する、スタートアップのFARMSHIPに出会った。同社の技術と、セイノーホールディングス株式会社が保有する物流施設などの資産や物流・顧客ネットワークを組み合わせ、生産から物流までを一括管理できる野菜工場事業の立ち上げに成功した。

同社は大手企業向け以外にもサービスを拡大しており、中堅・中小企業も広く対象とし200〜300万円の少額でスタートアップ企業との共創プログラムを開催できるクラウドサービス「Steams(スチームス)」や、個人が本業を続けつつ副業として新しいビジネスの創出に挑戦するプログラム「STARTUP STUDIO(スタートアップスタジオ)by Creww」も運営している。「機動的に動けるのが中小企業の大きな特長。今後新しいイノベーションを生み出していく主体は、法人からプロジェクトレベル、個人レベルにまで分解される。日本に『大挑戦時代』を作っていきたい。」と同社の水野智之取締役は語る。

creww acceleのプログラム例、共創プログラムの開発支援クラウド「Steams」

事例2-1-19:株式会社Doog

「地域活性化ファンドや異分野企業の技術・ネットワークを活用し、『移動ロボット』で世界の人手不足解消を目指す企業」

茨城県つくば市の株式会社Doog(従業員18名、資本金3,300万円)は、2012年に創業・設立し、移動ロボットの企画・設計・製造・販売を行う企業である。同社の大島章社長は、筑波大学大学院を卒業後、大手電機メーカーに就職し移動ロボットの研究を担当していた。大手電機メーカーでは、研究時点では事業化が決まっていないものも多く、「明日から売れるものを作りたい」という思いを抱き、同社を設立した。

大島社長は、人や物の移動が激しい業界に目を付け、そこで移動ロボットの技術を活用することで、人手不足を解消することができると考え、2015年9月に「サウザー」を開発した。「サウザー」は優れたロボット機能と機動力を有する運搬型ロボットで、人や台車に対する自動追従機能や無人での自動ライン走行機能を有する。屋外を含む多様な環境の下、使用可能であり、人手不足が深刻な物流業界を始め、建設現場や空港、農業、介護分野など様々な現場での活躍が期待され、既に国内外で数百箇所の導入実績がある。

「サウザー」は荷台への機器の追加や形状のカスタマイズがしやすいように設計されており、同社では異なる分野との技術連携や販売連携を積極的に図っている。日本電産シンポ株式会社との開発・販売面での協業や、日立物流ソフトウェア株式会社、株式会社千代田組など10社以上の販売パートナーとの連携を通じて、様々な業界への販路拡大に取り組んでいる。

2017年には、筑波銀行と筑波総研株式会社(同行100%子会社)により設立された「つくば地域活性化ファンド」の投資先として選定され、将来性を見据えた投資のほかにも、日頃の相談、連携先の紹介など、様々な支援を受けている。新製品の試作を依頼する企業を探していた際にも、筑波銀行の取引先ネットワークの中から紹介を受けた。

同社は海外での導入実績も多く、スマート国家としてロボットを積極的に導入するシンガポールのチャンギ国際空港で、同社の「サウザー」をベースにした運搬型ロボット「ドリー」が2017年から導入されている。これをきっかけとして現地に子会社を設立し、シンガポールを拠点にASEAN地域、欧州などへの販路拡大を目指している。2019年には同子会社から空港向けの搭乗型ロボット「ガルー」の販売も開始している。

「中小企業が有する資産には限りがあり、自社で何でもやることはできない。他社の事業を理解しながら、一緒に製品の開発や販売に取り組んでくれるパートナーを見つけていくことが重要であると考えている。」と大島社長は語る。

運搬型ロボット「サウザー」(写真上)と搭乗型ロボット「ガルー」(写真下)、つくば地域活性化ファンドのスキーム

コラム2-1-7

新しい仕事を生みだす中小企業を束ねる「コネクター」の機能

近畿経済産業局では、平成29年度から局職員による年間「1000社訪問プロジェクト」を実施し、地域の中堅・中小企業の実態を把握するとともに、ヒアリング結果を基にしたレポート「関西企業フロントラインNEXT」41や「関西おもしろ企業事例集〜兆:KIZASHI〜」42を公表している。本コラムでは、関西企業フロントラインNEXT Vol.16「新しいつながりが仕事を生みだす〜中小企業『コネクター』の機能〜」から、時代の変化に適応する新しいつながりを生み出し、サポート機能を提供する企業「コネクター」の活動を紹介する。詳細は本編を参照いただきたい。

41 「関西企業フロントラインNEXT」
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/report.html外部サイト

42 「関西おもしろ企業事例集〜兆:KIZASHI〜」
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jireitop.html外部サイト

中小企業はリソースの不足を互いに補完するため、従前から様々な形で企業間連携を推進してきたが、近年のグローバル化の進展やIoT技術の劇的な進化に伴い、その「つながり方」が大きく変わろうとしている。こうした時代の変化を的確にとらえ、付加価値創出に資する新しい「つながり」を生み出し、サポートする機能を提供する企業を「コネクター」と定義し、幾つかの取組事例を基にその機能について考察した。

■多品種小ロットの製品ニーズと技術力のある潜在縫製士をつなぐ〜合同会社ヴァレイ(奈良県)の事例〜

合同会社ヴァレイは、多品種小ロットでかつ高品質の製品ニーズを持つアパレル企業などと、縫製の仕事が好きで技術もあるが、育児や親の介護などの理由により自由に働けない潜在縫製士をつなぐため、「MY HOME ATELIER」という仕組みを構築している。

「MY HOME ATELIER」では、縫製士が自宅にいながら能力を最大限発揮できるよう、縫製士の能力や経験などのデータが個別に管理できる独自カルテを作成し、アパレル企業の要望に迅速に対応できる体制を整えている。また、縫製士の技術指導やアドバイスなどのサポートを、IoT技術を活用して実施している。一方、縫製以外の生産管理やデザイナーとの交渉などのサポートや縫製士が自宅では難しい特殊なミシンの作業など必要な作業について同社が代替・提供することで、縫製士は縫製の仕事に専念でき、高い縫製技術能力を遺憾なく発揮することができている。

こうした取組と、同社が掲げる「日本の縫製業を次世代につなぐ」という企業ビジョンは、全国に散らばる縫製士に共感をもたらし、志の高いネットワーク形成につながっている。

コラム2-1-7〔1〕図 合同会社ヴァレイ(奈良県)のビジネスモデル

■埋もれていくアイデアを製品化につなぐ〜株式会社スタッフ(大阪府)の事例〜

株式会社スタッフは、大企業の社内スタートアップなどで埋もれていくアイデアを製品化したいというニーズと、試作品から量産化まで対応できる製造ネットワークをつなぐ「ワンストップトータルソリューションサービス」を展開している。

大企業には多くのアイデアが生まれるが、全てが事業化されるわけではなく、また、市場の反応を見るために少量の製品を出したいといったニーズもある。同社は、こうした大手企業が持つ「自社のリソースを使うには間尺に合わず具現化されなかったもの」に着目し、それらを掘り起こし、共同開発や自社製品として展開するために必要なサービスをワンストップで提供している。

同社は、ものづくりに必要な要素を自社ネットワーク内に全て備え、具体的な試作オーダーはもちろん、製品コンセプトを持ち込めばそれを形にして提供することもできる。試作段階から量産化を見越した設計を行い、その後の量産化もグローバルな製造ネットワークの中で対応できる体制を有している。受託開発での経験を通じて培った企画、デザイン、基板設計から試作、量産までのノウハウを最大限にいかし、アイデア段階の製品企画をいち早く商品化する開発スピードが最大の付加機能である。

大手メーカーとのコラボで製品化した実績は、更なるアライアンスを呼び込み、同社はオープンイノベーションを目指すメーカーなどにとってスタートアップの試作・量産支援になくてはならない存在になりつつある。

コラム2-1-7〔2〕図 株式会社スタッフ(大阪府)のビジネスモデル

このように、「コネクター」は単なる媒介者ではなく、創出するつながりそのものが新たな付加価値を生みだすように、自身が有する資産やノウハウを積極的に提供し、新たな課題解決型ビジネスを実現している。

こうした役割を果たす「コネクター」には、以下の三つの特徴が見られた。

〔1〕共感を生み出す課題解決型のビジネスを指向

業界課題や地域・社会課題に着目する感度が高く、また、ビジョンを明確化し、伝える力にも長けている。さらには、課題解決を実際にビジネス化する力も有しており、こうした能力で共感する仲間を作り出し、課題解決の効果を生んでいる。

〔2〕先進技術を活用し、ビジネスの効率化や新しいビジネスモデルを生みだす

ビジネスを効率化させるため、現場に必要なIoT技術などの先進技術の導入や現場のサポートシステムなどを構築しており、一部にはその技術がビジネス成立に不可欠な要素となっている。

〔3〕現場と同じ目線・知識で業務を補完し、つながり全体の効果を最適化

現場と同じ目線・知識を持つ専門性を有しており、現場とニーズ側の間のギャップを解消し、現場の人的資産不足などにより解決できない課題をサポートすることで、中小企業が現場に集中できる効果を生みだしている。

このように、「コネクター」は、新たな機能を付加することで「つながり」全体を補完し、広い視野に基づき事業を最適化する効果を生み出している。

また、ビジネス全体を効果的に回していくために、新しい技術の活用だけではなく、現場で働く職人の仕事に対する思いや情熱、こだわりを尊重し、「人を主体」とした丁寧な取組をあえて重要視していることもうかがえた。

コラム2-1-7〔3〕図 「コネクター」の有する特徴

今までつながらなかったものをつなぎ、そこに付加価値を付すことで、新たな課題解決型ビジネスに発展させている「コネクター」。

従来型のアプローチでは解決し難い地域課題・社会課題が顕在し早急な対応が求められる中、中小企業にとって最大の資産である「人」の能力をいかしつつ、持続可能な社会経済の発展に資する中小企業の新しいビジネスチャンスを切り開くという観点から、今後の活躍が大いに期待される。