付注2-1-1 労働生産性と付加価値向上の取組の相関
第2部第1章及び第2章で行った労働生産性と各種取組(差別化の取組、オープンイノベーションの取組、価格設定)の分析方法について補足する。本分析は、一橋大学大学院経営管理研究科の宮川大介准教授、東京大学公共政策大学院の能勢学特任准教授の協力の下で行った。
1.差別化の取組、オープンイノベーションの取組
分析では以下の回帰モデルを推計した。
ΔlogLPij=α+βTij+γXij+δZj+ki+eij
ここで、
ΔlogLPij :労働生産性の対数値の差分(2013年から2018年)
Tij :各種取組ダミー
Xij :2018年の企業属性(企業年齢、経営者年齢、資本金)
Zj :2018年の市場環境(競合他社の数)
ki :都道府県ダミー
である。分析に当たり、製造業と非製造業のサンプルを分けて推計した。主な差別化の取組やオープンイノベーションの取組が労働生産性の上昇率に与える影響を分析するため、各種取組ダミーの推計値の大きさと統計的有意性を検証した。
推計結果は付図1のとおりである。

2.価格設定
〔1〕分析では、第一に以下の回帰モデルを推計し、価格設定の決定要因を分析した。
pij=α+βTij+γXij+δZj+ki+eij
ここで、
pij :値上げダミー(2013年から2018年にかけ単価を上昇した場合に1を取る変数)、適正な価格設定ダミー(製品・サービスの優位性が価格に反映されている場合に1をとるダミー変数)
Tij :適切な価格設定に向けた3つの取組に関するダミー変数(製品・サービスの優位性を顧客に伝える取組、顧客に受け入れられる価格を把握する取組、個々の製品・サービスごとのコスト把握)
Xij :2018年の企業属性(企業年齢、経営者年齢、資本金)
Zj :2018年の市場環境(競合他社の数、製品・サービスの価格弾力性1)
1 コラム2-2-6においては、「価格競争に参加しない意識」と表記している。
ki :業種ダミー
である。適切な価格設定に向けた各種取組が、製品・サービスの値上げ、適正な価格設定の確率を上昇させたか否かを検証した。(付図2)
〔2〕さらに、以下の回帰モデルを用い、値上げや適正な価格設定の企業パフォーマンスへの影響を分析した。
logyij=α+βpij+γXij+δZj+ki+eij
ここで、
logyi :2018年の労働生産性(対数値)、売上高付加価値率、一人当たり売上高(対数値)
その他の変数は、〔1〕と同様である。製品・サービスの値上げ、適正な価格設定が、労働生産性、売上高付加価値率、一人当たり売上高の水準に与える影響を検証した。(付図3)
各々の推計結果は付図2及び付図3のとおりである。

