(1)地震

 東海地震には警戒宣言(地震予知に基づく事前対応)がありますが、その他の地震では突発的に地震が発生することから、突発地震を想定して初動対応を整理しました。また、警戒宣言が発令された場合には、強化地域内では企業活動は原則として停止するため、地震が発生した場合でも被害が減少し、以下に示す初動対応の範囲内で対応することが可能と考えられます。


【ポイント1】発災直後の安全確保

 発災直後は、自分の身の安全の確保が必要です。落下物に気を付けつつ、大きな什器等から離れて机の下等に隠れて様子を見守りましょう。


【ポイント2】津波からの避難

 津波の危険性がある場合には、早急に高台等の指定避難場所に避難することが必要です。特に津波の危険性が指摘されている地域では、大きな揺れを感じたら素早く避難を開始することが求められます。津波は第2波や第3波が最大波高となる場合が多く、一旦津波が引いた場合でも沿岸部や浸水地域には近づかないようにしましょう。


【ポイント3】2つの安全確認

 安全な場所に避難するかどうかは、建物の被災状況と共に、土砂災害や堤防決壊等による影響も踏まえて判断するようにしましょう。


【ポイント4】各自がルールに従い行動すること

 発災直後は混乱していて社長が自ら全ての指示を出すことは困難であり、従業員が自発的に行動できるように、初動の活動や役割を従業員に周知しておきましょう。


【ポイント5】会社以外の場所にいる場合の対応

 地震が発生した場合に必ずしも会社にいるとは限りません。在宅時や通勤中、就業時間内の外出中の場合も考えられます。いずれの場合も会社への連絡は必要ですが、出社すべきかどうか等のそれ以外の事項については、どのような対応をとるべきかを予め決めておくことが必要です。従業員に携帯カードを配布する場合には、携帯カードにいくつかの場合ごとの対応について書いておくとよいでしょう。


【ポイント6】他の地域の状況も確認すること

 自分達が被災しない場合でも、他の地域で大きな被害が発生して取引先が被災した場合には間接的な影響が予想されるため、他の地域の状況も確認しましょう。
 また、地域に対しては要請を待つのではなく、積極的に支援ニーズが無いか確認する姿勢が大切です。そのため、緊急に帰宅する必要性の低い従業員は、地域への支援に積極的に参加することが求められます。


【注意】「揺れの大きさ」「建物の安全確認」
 気象庁の震度階級関連解説表にもあるとおり、主に震度6弱以上で建物被害が発生し震度5強以下では建物被害は軽微と言われています。ただし、昭和56年に改正された建築基準法より以前に建設された古い建物のうち耐震性が低いものについては、重大な被害が発生する可能性もあるので(特に木造建物は耐震性が低い)、震度5強以下の場合でも、危険と思われる場合には建物内部に留まらずに外部に避難することが必要です。
 ※ 震度階級関連解説表 http://www.kishou.go.jp/know/shindo/kaisetsu.html

【参考】
 気象庁(地震情報) http://www.jma.go.jp/jp/quake/
 気象庁(津波情報) http://www.jma.go.jp/jp/tsunami/
 気象庁(東海地震関連情報) http://www.jma.go.jp/jp/quake_tokai/
 防災科学技術研究所(高感度地震観測網) http://www.hinet.bosai.go.jp/


表 地震時の状況イメージ

場所

状況イメージ

オフィス

店舗

・ オフィス家具等が転倒する。ガラスが散乱する。
・ 商品が散乱する。
・ 吊り下げ式の蛍光灯や棚の上の荷物等が落下する。
・ 引き出しや机の上のパソコンや文房具等が落下する。
・ 簡易的なパーティションが転倒する。
・ 壁に掛けられたり軽く固定された時計やホワイトボードが落下する。
・ 揺れが強い場合には、パソコン等が水平方向に飛び出す。
・ 揺れやオフィス家具の転倒等により窓ガラスが割れ散乱する。
・ 出口のドアが変形し開かなくなる。
・ 非常口の近くに重量物が転倒、落下した場合には開かなくなる。
・ ヘルメット等の入った非常用袋等がロッカー等から取り出せなくなる。
・ 転倒物や落下物が避難経路を塞ぎ、避難が困難となる。
・ 停電が発生し、照明器具が使用できなくなる。
・ 給湯室から出火する。ガスが漏洩する場合もある。
・ 火災が発生した場合には煙で視界が悪くなる。呼吸が苦しくなる。
・ 耐震性が低いと建物が変形したり、亀裂が発生する。最悪の場合には倒壊する。

周辺

・ 建物の変形や倒壊等の被害が発生する。
・ 火災が発生する。条件によっては延焼により被害が拡大する。
・ 多くの死傷者が発生する。
・ 電気、ガス、上水道等のライフラインが使用困難となる。
・ 電話が断線等の被害により利用困難となる。回線がつながっている場合でも、輻輳によりかかりにくくなる。
・ 亀裂や液状化等の被害、及び建物や電柱等による道路閉塞により道路幅の小さい道路を中心に通行に支障が生じる。
・ 都市部を中心に建物の窓ガラスや看板等が落下し、道路上に散乱する。また、多くの帰宅困難者が発生し道路の通行に支障が生じる。
・ 山間地を中心に一部の地域で土砂災害が発生する。
・ 津波が発生した場合には、沿岸部に津波が到達し浸水する。


 初動対応フロー(地震)
図 初動対応フロー(地震)

 


4.3 緊急事態の種類ごとの初動対応のポイント     (2) 風水害